昌
ゆかちゃん!

ゆか
あ・・・どうしたんですか!?

昌
急に帰るからマスターも心配してたよ

ゆか
すみません・・色々と聞いてしまって恥ずかしくなってしまって・・・

昌
いや、それはいいけどさ

ゆか
ありがとうございます・・・

昌
駅まで送るよ

ゆか
ありがとうございます

駅まで送る間に会話は全くなく、気まずい雰囲気だった。
長い沈黙が続いてやっと駅についた。これで任務は終わりだと思っていたら
ゆか
あの!

昌
はい?

ゆか
ハッキリ言ってもいいですか!?

昌
・・・何?

ゆか
私、昌さんとよしのさんのこと、マスターから色々聞いてました

昌
・・・うん

ゆか
お2人が出会った頃のことも、全部知ってました

昌
うん

ゆか
でもそれを聞いたのは、昌さんに会うずっと前だったんです

昌
え、マスターか、真田さんが俺たちの話しをしてたの?

ゆか
違うんです。あの・・頭がおかしいと思われるかもしれないんですけど・・去年の冬から幻聴が聞こえて・・

昌
幻聴?どんな?

ゆか
最初は掠れていて、「かわ」とか「きょ」とか「しょ」だったんです

昌
うん

ゆか
それがだんだん聞こえやすくなってきて、2週間くらいして、ハッキリ聞こえたんです

昌
何て?

ゆか
言いづらいんですけど・・・

昌
いまさら。
何て?

ゆか
・・・「あなたかわいい」「きょにゅう」・・・
って・・・

昌
へぇー・・・

ゆか
そしてもう一つ

昌
うん

ゆか
「しょうににあう」

昌
・・・それ、本当・・・?

ゆか
はい。女の人の声でハッキリ!
それで、バーで飲んでいた時に独り言を呟いてしまったんです。しょうって誰だろ・・って

昌
・・・・

ゆか
それをマスターに聞かれちゃって、昌くんを知ってるの?って流れで・・。
その数日後に酔い潰れた昌さんに偶然会ったんです

昌
・・・・

ゆか
ごめんなさい、信じられませんよね・・・

昌
他には何か言ってた?

ゆか
はい、「しょうをみて」とか「しょうをしって」って。
昌さんに近づけようとしている感じで・・・

昌
そうなんだ・・・

ゆか
あと、あの台風の日に怪我をしたあと、ごめんねって聞こえました

昌
・・・・

ゆか
変な話をしてすみませんでした・・・

昌
信じる

ゆか
え?

昌
俺も頭がおかしいと思われるかもだけど

ゆか
信じます。
よしのさんだったんですね

昌
うん、ごめん。俺が堕落した生活してたから

ゆか
いいんです。でも、どうして私だったんでしょうか・・・?

昌
よしのと全然違うタイプで、よしのが自分よりイイ女だと思ったから

ゆか
そうなんですか!?

昌
うん。死ぬずっと前も死ぬ前も、自分よりイイ女と!って言ってたんだ

ゆか
そうだったんですね・・・

よしの
付き合ってとは言わない

ゆか
え?

ゆか
よしのさん?

昌
今はいないよ?

ゆか
います!聞こえました!!

よしの
昌はキレると怖かったけど、もうそんなことはない。仕事に一生懸命な時は冷たく感じるけど、そのあとはすっごく優しいから!

ゆか
そうなんですね!

昌
なんで俺には聞こえないんだよ!?

よしの
少しでもいい、昌に興味があるなら、友達からでいいから昌のそばにいてあげて?

ゆか
マスターからお話を聞いた時から、昌さんに会いたいと思ってました。会って分かりました。
私は昌さんが好きです!

昌
ちょ、何言ってるの!?
何を話してるの!?

ゆか
昌さん、お友達からでいいです。
私ともっと仲良くなってください!

昌
ちょっと待って、2人で何を話したか知らないけど急だよ

よしの
あとは私から話す

ゆか
分かりました!
今日は帰ります。送ってくれてありがとうございました!

昌
え、ちょっと!

昌
よしの!
何を話したの!?

よしの
友達からでいいから、昌のそばにいてほしいって

昌
なんで勝手に!

よしの
昌、私にはもう時間がないの

昌
分かってるけどさ!急だよ!
仕組んでたこともビックリだけど、なんであの子なの?

よしの
昌がよく行くお店をいっぱい周ったよ。色んな子を観察してた。
あの子は私と顔も体型も全然似てない。
胸もデカイ!

昌
胸とかどうでもいいわ!

よしの
言葉使いも丁寧で、お酒も強い!
酒癖もいい!

昌
そんなん他にもいるでしょ!

よしの
何より、私の声が聞こえたのはあの子だけだった

昌
え

よしの
本当だよ。だから仕掛けたんだ

昌
そうなんだ・・でも

よしの
昌?

昌
なに?

よしの
すぐにヤレとか、付き合えなんて言わない。
ただ、私の声が聞こえたってことは、何か通じるものが2人にはあると思うの

昌
そうかもね

よしの
あの子は昌を好きだって言ってくれた。
昌があの子を女として見れなくても、1つの出会いとして大切にしてほしいの

昌
・・・・

よしの
そしたら私は安心して空に行ける

昌
よしの・・・

よしの
私を愛してくれたなら、分かって?

昌
A:今でも愛してる
B:分かった
C:ゆかと付き合ってみる

昌
今でも愛してる!!

よしの
昌・・・

昌
このままでいい!キスもセックスもいらない

よしの
・・・・

昌
こうしてよしのと話せるだけで俺は幸せだよ!

よしの
・・・・

昌
何か言ってよ?

よしの
・・・き

昌
え?

それと同時に冷んやりしていた空気が、真冬のような寒さに変わった。
よしの
うそつき

昌
よしの・・・?

よしの
あんなに約束したのに

昌
痛っ!!!

よしの
あんなにお願いしたのに

寒さは痛みに変わり、氷の中にいるような冷たさを感じた。
よしの
私はもうどっちにも行けない

よしの
お母さんにも会えない

よしの
あんなに約束したのに

昌
よし・・の・・!?

よしの
あんなに約束したのに

よしの
あんなに約束したのに

よしの
あんなに約束したのに

昌
痛い!!!!

焼けるような冷たさの中で、慎が言っていたことを思い出した。
昌
まさ・・か・・・

よしの
大丈夫よ昌

よしの
ずっと一緒にいてあげる

昌
よ・・・し・・

よしの
天国でも地獄でもない場所で

昌
うぁぁぁ・・・

よしの
私だけを見ていればいいよ
