平行世界の館

気まずい空気が漂う

こうなったのも全ては涙華の発言のせいだ

部屋を探検している最中に 急に涙華が言い出す

眉間にシワを寄せながら問う

そいつはニヤリと笑う

ケラケラと笑いながら言う涙華

そんな険悪な雰囲気を打破する出来事が 起きる

ダダダダダダダダ…

暗闇から走ってくる人物は…

ドカッ、！

奥から走ってきた稲荷は犬神にぶつかった

その光景を見て涙華はケラケラと笑う

ドアを開けては閉め、開けては閉め、

どこを探しても誰の姿も見えない。

埃っぽいのは変わりがない

ここに来るまでに何回蜘蛛の巣に引っかかっただろうか

気持ちの悪いあいつの足音がしてくる

また急いでクローゼットに入ればいいだろう

僕たちはそんな考えをリンクさせ、クローゼットの中へと入る

ギィーと言う音と共に、あいつの気持ち悪い移動音がしてくる

その音は僕たちのいるクローゼットの前で止まった

頬を伝う汗が服にポタッと滴り落ちる

大きな叫び声がしたと思うと、クローゼットの扉が吹っ飛ぶ

奴との距離は1mあるかないか

ギョロギョロとした目玉が全てこちらを見た時、心臓が異常な速さで鼓動する

真神の声にハッとし、鉛のように重くなった足を必死に動かし走り出す

クローゼットから出る際に奴に触れた腕は黒い液体が付着しており、ジクジクと痛む

だが、そんな事気にしている余裕はない

僕たちは一心不乱で走る

走る音と共に、後ろからも音がする

あれからどれだけ走っただろうか

いくら学生と言えど、限度がある

横腹はちぎれそうな程痛く、

喉奥からは血の味がしてくる

おまけにさっき化け物に触れた腕は膿が出ていて、すごく痛い

僕は生きるか死ぬか

走るのを辞めてしまった

止まった足は鉛のように重く、そのまま床にへたり込む

息はずっと上がっていて、もう走れない

真神はそのまま走り去る

目の前には、化け物が沢山の目で僕を射止める