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ミーンミンミン

今日はどこで遊ぶー?

いつもの公園にしよう!!

今日、4時に集合ねー!

うん!

沙羅

…ふふ

かわいいなあ

私も、こんな時期があったっけな。

想像を膨らませながら、いつもの帰路につく。

純粋な心でいたあの頃は

もう戻ってこない

沙羅

…あの頃に、戻ってみたいな

沙羅

なんにも考えずに、悠々と過ごせるんだから…

別に、今の生活に不満があるわけではない

優しい夫や、お転婆な娘

恵まれている筈なのに、分かっているのに

それでも、過去を羨んでしまう

 

なら、戻ってみるかい?

沙羅

…え?

後ろを振り返ると、そこには黒いスーツを着た男が立っていた

 

いや、失礼

 

素敵なお嬢さんが困っているようなのでつい

そう言い男は、私に紙切れを渡す

そこには、『悪魔協会ソロモン セーレ』と書かれている

セーレ

私の名刺のようなものです

セーレ

いきなりで驚かれるでしようが、私は悪魔という存在でして

セーレ

その名刺に書かれている通り、ソロモンという組織に属しています

セーレ

まぁ、人間社会でいう社員のようなものです

沙羅

はぁ…

男は、笑顔を崩さずに言葉を続ける

セーレ

ここで会ったのも何かの縁、一つ私に願いを叶えさせてくれませんか?

沙羅

ちょ、ちょっと待って下さい!

セーレ

どうしました?

沙羅

そんな危険なことできません!

悪魔に願いを叶えてもらうなんて、どんな代償があるか分からない

セーレ

セーレ

ああ、別に命なんてとりませんよ

セーレ

悪魔が命を代償にしていたのは、遥か昔の話です

沙羅

え?

セーレ

信じられないかもしれませんが、現在の悪魔は生き物の『喜び』

セーレ

正の感情を糧としているのです

沙羅

そうなんですか…

にわかには信じがたいが、 男の有無を言わさぬ雰囲気がそれを真実だと認識させた

セーレ

そういうわけで危険は一切ありません

セーレ

私は仕事で貴方を過去へと運び、正の感情を得る

セーレ

貴方は過去へ行き、人生をやり直す

セーレ

どちらにもメリットしかないですよ?

沙羅

………

はっきり言って、かなり怪しい

でも、私は…

沙羅

沙羅

お願い、します

セーレ

OK!契約成立です

セーレ

では、天使の奴らが来ないうちに行いましょう

そう悪魔が言うと、私の足下に魔方陣のようなものが形成される

セーレ

では、良い人生を

意識が薄れていく感覚

視界が朧気になっていき

真っ暗になった

目を開けると、そこは先ほどの帰路ではなく 誰かの部屋のようだった

沙羅

いや、違うここは

沙羅

私の、部屋?

机に飾られているぬいぐるみや、写真立て

それらに覚えた既視感と、何より私の体

机の隣におかれている鏡には、成人したいつもの私ではなく

まだ幼げな、私の記憶違いでなければ 小学3年生ほどの私が映されていた

沙羅

まさか、本当に?

私は急いでポケットに入れていたスマホを手に取ろうとし

沙羅

…ない

すぐにそれがないと気づいた

今の私の服装は、先ほど着ていた服とは真逆のファンシーな服

沙羅

本当に、戻ってきたのね…

ここまできたら、疑いようがない

私は、過去へきたんだと

沙羅

ふふ…

笑いが込み上げてくる

決して気が狂ったわけではない

ただ、奇妙な優越感

一回きりの人生をやり直せるという事実が、私をおかしくさせたのだ

あれから、私は思うがままの人生を歩んだ

小中高での勉強は 、二回目ということもあり余裕だった

その後は大学で学び、中小企業へと入社した

それからは企業を転々とし、最後は自分で会社を設立することにした

会社の売上は右肩上がりで、私はある程度名の知れた人間となった

一回目とは違い、まだ結婚はできていないが

沙羅

私は、一回目での失敗を踏まえて

沙羅

二回目の人生を有意義なものにすることができた

 

本当に?

沙羅

沙羅

え?

そこには、私と悪魔がいた

子供の私と、真剣な顔をした悪魔がいた

沙羅(子供)

本当に貴方は、有意義にできた?

セーレ

満足できていますか?

何を言っているのだろうか

私は満足している

こんな、既視感と違和感が連続した人生でも

沙羅

私は……

沙羅(子供)

もう一度、思い出してみて

セーレ

もう一度思い出して見て下さい

沙羅(子供)

あなたはワタシの何を求めたの?

セーレ

貴方は最初、私に何を思って願ったのか

「「思い出して」」

純粋な心でいたあの頃は

もう戻ってこない

沙羅

…あの頃に、戻ってみたいな

沙羅

なんにも考えずに、悠々と過ごせるんだから…

別に、今の生活に不満があるわけではない

優しい夫や、お転婆な娘

恵まれている筈なのに、分かっているのに

それでも、過去を羨んでしまう

『なんにも考えずに』、悠々と過ごせるんだから

別に、『今の生活に不満があるわけではない』

それでも、『過去を羨んでしまう』

ただ、それだけだったのに

私は一体、何を求めていた?

きっと、何も求めていなかった

気づけばワタシは消えて、悪魔だけがいた

沙羅

あ、あぁ

セーレ

分かりましたか?

セーレ

貴方は、子供の頃の自分を羨んでいただけ

沙羅

ち、ちが…

セーレ

本当に過去に戻りたいなんて思っていなかった

沙羅

私は、本当に

セーレ

ただ、あの時貴方は自身の欲望を正しく認識できていなかった

セーレ

そんな中、過去に戻れる手段である私と出会い

セーレ

自身の『あの頃に戻ってみたい』という言葉を

セーレ

あたかも自分の本心だと誤認した

私はもう、何も言えなかった

沙羅

……

セーレ

こういうのを魔が差すっていうのですかね?

セーレ

まぁ、そうなるように導いたのは私ですが

悪魔は笑っている

セーレ

苦しいですよね?

セーレ

ですが、安心して下さい

セーレ

私が最初に言ったように、今の悪魔の糧は正の感情です

セーレ

しかし私は、まだ正の感情を貴方から手に入れていません

セーレ

では、その感情をいつ手に入れるのか

悪魔は笑みを深め

セーレ

今からですよ

最初のように、私の視界は朧気になっていく

悪魔はそんな私に向かって

セーレ

いいですか

セーレ

これは貴方の人生です

セーレ

貴方の心に潜む天使と悪魔に惑わされず、貴方の気持ちに向き合ってください

セーレ

貴方が貴方自身を肯定してください

悪魔の助言のようなものに耳を傾け

私の視界は真っ暗になった

ミーンミンミン

蝉の鳴き声が聞こえ、私は目を開ける

沙羅

ここは…

夕暮れに照らされている木々

見慣れた道

沙羅

……

自身の服装を確認し、スマホを開く 

電話帳のなかには、夫の名前がある

沙羅

どうやら私は、帰ってきたらしい

沙羅

………

何も喋れず、ただ私は立ち尽くし

嗚咽しながら、胸一杯に広がる喜びを噛み締める

そうして、ようやく私は帰路につく

私の過去と今に感謝しながら

彩月 如唯 @私の話コン開催 様主催 私の話コンテスト 『過去の部』で参加させて頂きました。

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