コメント
2件
ミーンミンミン
今日はどこで遊ぶー?
いつもの公園にしよう!!
今日、4時に集合ねー!
うん!
沙羅
かわいいなあ
私も、こんな時期があったっけな。
想像を膨らませながら、いつもの帰路につく。
純粋な心でいたあの頃は
もう戻ってこない
沙羅
沙羅
別に、今の生活に不満があるわけではない
優しい夫や、お転婆な娘
恵まれている筈なのに、分かっているのに
それでも、過去を羨んでしまう
沙羅
後ろを振り返ると、そこには黒いスーツを着た男が立っていた
そう言い男は、私に紙切れを渡す
そこには、『悪魔協会ソロモン セーレ』と書かれている
セーレ
セーレ
セーレ
セーレ
沙羅
男は、笑顔を崩さずに言葉を続ける
セーレ
沙羅
セーレ
沙羅
悪魔に願いを叶えてもらうなんて、どんな代償があるか分からない
セーレ
セーレ
セーレ
沙羅
セーレ
セーレ
沙羅
にわかには信じがたいが、 男の有無を言わさぬ雰囲気がそれを真実だと認識させた
セーレ
セーレ
セーレ
セーレ
沙羅
はっきり言って、かなり怪しい
でも、私は…
沙羅
沙羅
セーレ
セーレ
そう悪魔が言うと、私の足下に魔方陣のようなものが形成される
セーレ
意識が薄れていく感覚
視界が朧気になっていき
真っ暗になった
目を開けると、そこは先ほどの帰路ではなく 誰かの部屋のようだった
沙羅
沙羅
机に飾られているぬいぐるみや、写真立て
それらに覚えた既視感と、何より私の体
机の隣におかれている鏡には、成人したいつもの私ではなく
まだ幼げな、私の記憶違いでなければ 小学3年生ほどの私が映されていた
沙羅
私は急いでポケットに入れていたスマホを手に取ろうとし
沙羅
すぐにそれがないと気づいた
今の私の服装は、先ほど着ていた服とは真逆のファンシーな服
沙羅
ここまできたら、疑いようがない
私は、過去へきたんだと
沙羅
笑いが込み上げてくる
決して気が狂ったわけではない
ただ、奇妙な優越感
一回きりの人生をやり直せるという事実が、私をおかしくさせたのだ
あれから、私は思うがままの人生を歩んだ
小中高での勉強は 、二回目ということもあり余裕だった
その後は大学で学び、中小企業へと入社した
それからは企業を転々とし、最後は自分で会社を設立することにした
会社の売上は右肩上がりで、私はある程度名の知れた人間となった
一回目とは違い、まだ結婚はできていないが
沙羅
沙羅
沙羅
沙羅
そこには、私と悪魔がいた
子供の私と、真剣な顔をした悪魔がいた
沙羅(子供)
セーレ
何を言っているのだろうか
私は満足している
こんな、既視感と違和感が連続した人生でも
沙羅
沙羅(子供)
セーレ
沙羅(子供)
セーレ
「「思い出して」」
純粋な心でいたあの頃は
もう戻ってこない
沙羅
沙羅
別に、今の生活に不満があるわけではない
優しい夫や、お転婆な娘
恵まれている筈なのに、分かっているのに
それでも、過去を羨んでしまう
『なんにも考えずに』、悠々と過ごせるんだから
別に、『今の生活に不満があるわけではない』
それでも、『過去を羨んでしまう』
ただ、それだけだったのに
私は一体、何を求めていた?
きっと、何も求めていなかった
気づけばワタシは消えて、悪魔だけがいた
沙羅
セーレ
セーレ
沙羅
セーレ
沙羅
セーレ
セーレ
セーレ
セーレ
私はもう、何も言えなかった
沙羅
セーレ
セーレ
悪魔は笑っている
セーレ
セーレ
セーレ
セーレ
セーレ
悪魔は笑みを深め
セーレ
最初のように、私の視界は朧気になっていく
悪魔はそんな私に向かって
セーレ
セーレ
セーレ
セーレ
悪魔の助言のようなものに耳を傾け
私の視界は真っ暗になった
ミーンミンミン
蝉の鳴き声が聞こえ、私は目を開ける
沙羅
夕暮れに照らされている木々
見慣れた道
沙羅
自身の服装を確認し、スマホを開く
電話帳のなかには、夫の名前がある
沙羅
どうやら私は、帰ってきたらしい
沙羅
何も喋れず、ただ私は立ち尽くし
嗚咽しながら、胸一杯に広がる喜びを噛み締める
そうして、ようやく私は帰路につく
私の過去と今に感謝しながら
彩月 如唯 @私の話コン開催 様主催 私の話コンテスト 『過去の部』で参加させて頂きました。