その日は懐かしい夢を見た
まだ小さい頃の時の記憶
稲荷山神社で…
千世
大丈夫?
?
え…
千世
なんで泣いてるの?
?
僕…泣いてるの?
千世
うん、すごく辛そうな顔してる
千世
それに顔も体も傷だらけだよ?
?
…
千世
何があったの?
?
なんで…
千世
?
?
なんで話しかけるの?
?
君は人間でしょ?
?
僕は妖怪なんだよ?
?
怖くないの…?
千世
妖怪でも人間でも関係ないよ!
千世
私の家族はね悪い妖怪倒してる人達だけど
千世
妖怪にも何か辛いことがあって悪いことしてるんじゃないかって思ってるんだ
?
⁈
千世
だからね大きくなったら人間と妖怪が仲良く暮らす世界を作りたいんだー
千世
それが私の将来の夢!
?
そっか…
?
素敵な夢だね
千世
それよりも傷痛い?
?
血は止まったけどまだ少し痛いかな
千世
そっか
千世
それじゃあ痛みをなくしてあげる!
?
え…
千世
目を瞑ってて
千世
深呼吸して
?
分かった
?
(あれ…?なんだろう)
?
(すごく安心する匂いがする…)
?
(なんて心地いいんだろう)
千世
はい!終わり!
千世
もう目開けて大丈夫だよ
?
ん…
千世
どう?痛い?
?
痛みが消えてる…
千世
よかったー
?
さっきの香りは一体…
千世
私が作り出した香りだよ
千世
私はね能力を持って生まれる家の娘なの
?
能力?
千世
そう!お父さんとかお兄ちゃんは敵と戦うのに便利な能力なんだ
千世
けど私は人間も妖怪も殺すことが出来ないし
千世
そもそも能力もあまり戦闘向けじゃないからって
千世
お父さんに「役立たず」って言われてるよ
?
役立たず…
千世
「お前じゃ誰も救えない」とか「考えが甘い」とか毎日怒られてる
?
君は役立たずなんかじゃないよ
千世
え?
?
だって僕を救ってくれたじゃん
?
それは君の心が優しい証拠だよ
?
普通なら妖怪って分かっただけで逃げていくから
?
…
千世
グスッ…
?
え⁈なんで泣いてるの?
?
僕なんか悪いこと言った?
千世
違うの…
千世
私にも救えるんだって思って嬉しいんだ…
千世
ありがとう…
?
(すごく優しい笑顔だな)
千世
ねぇ君の名前は?
?
僕は…
ザザッ…ザ…
千世
⁈…夢か…
千世
結局あの子の名前思い出せないな…
千世
またいつか会えたらいいんだけど…
コンコン
千世
はい
母上
朝の支度をしたらお父さんのところへ来なさい
母上
話があるわ
千世
分かりました
和室
千世
お待たせしました
父上
そこに座りなさい
千世
はい
駿兄さん
それで話とは何ですか?
父上
お前たちはいい年頃になった
父上
だから我々の敵のことを話しておこう
千世
私たちの敵…
父上
我々の敵は黒鬼組という鬼の集団だ
父上
名前に黒鬼とついているからと言って黒い鬼だけの集団ではない
父上
容姿は人間に角や牙をつけたようなものと言えば分かりやすいだろう
父上
ただ人間と違いとても身体能力が高い
千世
鬼たちは何を目的として人を襲っているのですか?
父上
何かを探しているみたいだがそれはまだ分かっていない
父上
そこでだ
千世
?
駿兄さん
?
父上
千世に黒鬼組に潜入してほしい
千世
え⁈
駿兄さん
⁈
父上
色々探ってきてもらう
駿兄さん
待ってください父上!そんなの危険すぎます!
駿兄さん
それは黒鬼組に宣戦しているのと同じではないですか!
父上
分かっている
父上
今のうちに決着をつけたいのだ
父上
千世
千世
はい
父上
お前は昨日鬼と会っていただろう?
父上
そいつを使えば簡単に潜入できる
千世
鬼って誰ですか?
父上
稲荷山神社で会っていた男子だ
千世
凪のこと⁈
父上
せいぜい私の役に立て
千世
…分かりました