魔王
(勢い余ってそれっぽいこと言って戦闘を始めちゃったけど…)
魔王
(これって我勝ち目なくない?)
魔王
(まず彼の分身体と地下牢で我は1回会っててその時我何も出来なかったんやで?)
魔王
(そんな奴がモノホンと戦うとか無理ゲーすぎるでしょ…)
魔王
(我のコンディションがバッチリな時にやり合えばもしかしたかもしれんけど…)
魔王
(ノルン戦の後で体力もかなり削られてる上に武器もない…)
魔王
(幾つも持ってきたあの武器たちはまぁ…あいつには効かないよな)
魔王
(今この場にいるのは我とノルンそしてあいつの3人で)
魔王
(我とノルンが共闘して勝てるかと言われればそれもまた難しい話である)
魔王
(ノルンも我と同様にかなり体力を消耗している)
魔王
(その上彼女は戦士と言うよりかは剣士に近いだろう)
魔王
(言い方はあまり良くないが剣が使えない剣士など一般人と何ら変わりはない)
魔王
(その辺にある武器を使えと言ってもアイツには効かないし)
魔王
(そもそもノルンの技量にその剣が耐えれるわけが無いんだよなぁ)
魔王
(現に我もノルンも相手の攻撃を避けるので精一杯という所だ)
魔王
(まだ相手は手を抜いてるがそれでも今の我らからすればその一撃で最悪死ぬ可能性すらあるんだからな…)
魔王
(前の我ならコイツの悩みも全て解決出来たというのに…)
魔王
(過去の栄光にずっとしがみつき続ける…)
魔王
(我とてつもなくダサいけど今はそう思っても仕方ないってことよ)
魔王
(だって転生前ならあいつの両親達も生き返らすことも可能だし)
魔王
(勇者がいなければ世界征服してあやつの願いも叶えることができたというのに…)
魔王
(うーむ…無い物ねだりはよくないよな…)
魔王
(今ここにジョニーさえいればまだ何とかなったかもしれんのだがな……)
ナルク
どうしましたか?
ナルク
先程の言葉とは裏腹に貴女は逃げてばかりでないですか!
魔王
まぁこれもひとつの作戦ってことよ
ナルク
なに!?
ナルク
そんな強がりはよせ!
魔王
強がりねぇ…
魔王
(実際そうなんだけど…)
魔王
(なんなら時間稼ぎだよなコレ)
ナルク
なら貴様を狙うのをやめて
ナルク
そこにいる女を先に殺らせてもらう!
魔王
しまった!
ジョニー
お待ちくださいナルク様!
ナルクの手刀がノルンの首を刈り取る直後どこからかジョニーの声が聞こえた
ナルク
何故止めたジョニー?
ジョニー
今ナルク様はその女を殺そうとしましたよね?
ナルク
それの何が?
ジョニー
魔導書を探していた時のことです
ジョニー
たまたま見かけた本に勇者について書いてあるものを見かけました
ジョニー
そこには勇者の本当の力は危機になる時…又は大切なものが無くなる時発揮される、と…
ナルク
それがどうしたというのだ?
ジョニー
その女が勇者にとって大切なものだとしたら勇者はその場で新たな力に目覚めたでしょう
ジョニー
そしてその力によってあなた様は魔導書を使うことなくその命を散らします
ナルク
……
ナルク
要は遊ぶのをやめて今すぐにこれを使えと?
ジョニー
左様でございます
ナルク
…………
ナルク
いいだろう…
ナルク
確かに自我ある今のままでは完全にその女を殺すことは難しいだろう
魔王
(いや、意外と容易いと思われるのだが…)
ナルク
ならばすぐにでもこの力使っておかねばな
そう言うと何処からか魔導書を取り出しその魔導書から力を吸い取っている
魔王
ん?あの魔導書は……
ある程度吸い取るとその魔導書の文字を唱えナルクの体は光に包まれていった
ナルク
クックック……
ナルク
ウルターニャと言ったな!
ナルク
私はもう戻ることは出来ない!
ナルク
私の願いを止めたくばこの私を殺すしか道は無いのだよ!!
ナルク
ハッハッハッハッハッ!!!
そう言い終えるとその光はさらに強くなりようやく収まるかと思うと彼の面影はもうどこにも無かった
魔王
なるほど…
魔王
こいつはほんとに我死ぬな……
ノルン
ど、どうするんですか!?
魔王
まずはジョニーと話すことにする
ノルン
でもジョニーさんって敵ですよ!?
魔王
何言っているんだ?
魔王
ジョニーは最初から味方だ
ノルン
え?
ジョニー
これでようやくお話が出来ますね
魔王
まぁそんなに流暢に話してられないけどな
ノルン
ど、どういうことでしょうか?
ノルン
そのジョニーさんって敵では……
魔王
フリをしてたんだ
ジョニー
ここに連れ去られた時に私とヴィゲル、ゼルは別の牢屋に入れられたのですが
ジョニー
私だけ何故か入れられなくてナルクの元に連れていかれて洗脳されてたんですよ
ジョニー
まぁそんな低レベルな催眠では私を洗脳とかできませんけど
ジョニー
ここは洗脳されたという事にしておけばあとが楽ということを考えしてね
ノルン
ほ、ほぇ〜…
魔王
私がそれに気づいたのは単独行動をしていた時の事だ
魔王
前から気になってた別の場所にあるホントの牢屋を調べててな
魔王
その最中恐らくヴィゲルが焼いたと思われる鉄格子を見つけたのだが
魔王
その牢からはジョニーの魔力を微塵も感じることが出来なかった
魔王
その時点でジョニーは別行動をしてると分かったわけだ
ノルン
凄いですねお二人共…
ジョニー
接触のチャンスはここだけでした
ジョニー
ナルクに魔導書を使うよう誘導しそれを使ってくれればこちらの作戦勝ちです
ジョニー
あの魔導書は偽物ですが確かにかなりの力を得られます
ノルン
あれ偽物なの?
魔王
まぁ厳密に言えば違うんだけどな
ジョニー
彼に与えたのは起源の泉という魔導書です
ジョニー
その魔導書は確かに素晴らしい力を授かることができます
ジョニー
その代償として自我を失いますけど…
ジョニー
ですが実はこの魔導書その起源の泉自体には大した力なんてないんですよ
魔王
なんならゼロに等しいな
ノルン
どゆことですか?
魔王
あいつが得た力はその魔導書を作るのに必要となった魔力を吸収したに過ぎない
ジョニー
起源の泉の力は彼の死後に発動するのです
魔王
起源の泉は名の通り世界で初めての泉ということだ
魔王
それはつまり言い換えると世界で初めての水とも言うことが出来る
魔王
じつはこの起源の泉は自然現象を魔法により1部だけ切り取りそれを魔導書に閉じ込めたものなのだよ
ジョニー
それに必要な魔力が大量だったわけで…
ノルン
なんのためにその魔導書作られたのよ!?
魔王
恐らくだが初代魔王様は未来水が枯渇する地域が出ると予測していたのだろう
魔王
その事態に対応できるようにしてたんじゃないかと…
ノルン
え?
ノルン
初代魔王様めっちゃいい人(?)じゃないですか!
ジョニー
だが、勇者によって殺されてしまった
ジョニー
その時魔王様は何か念を残したのだろう
ジョニー
その念がたまたまこの魔導書に注ぎ込まれてしまい
ジョニー
その魔導書からは禍々しい雰囲気を感じるようになって
ジョニー
いつしか絶大的な力を得られるが自我を失うなんて噂ができたのだろう
魔王
それを形にすることも魔導書というものは意外と簡単にできるのだよ
ノルン
そうなんですか……
ノルン
まぁ…
ノルン
今それどころじゃないですけどね!?
ナルク
ウゥ……
ナルク
コワス……セカイヲ…
ナルク
ヒトヲ……マモノヲ………
ナルク
スベテコワス!!
魔王
破壊という感情だけが取り残されてるなあれ
ジョニー
アレをどうにかするにもまずはおふたりの装備を整える必要があるのですが
魔王
私らの荷物は?
ジョニー
その辺をヴィゲル達に頼んだのですが…
ジョニー
妙ですね…いくらなんでも遅すぎます
魔王
てことはあっちもなにかあったということだ
ジョニー
仕方ありません…
ジョニー
今は私達でどうにかしましょうか
そしてナルクの使った魔導書は初代魔王の願いが込められた希望の魔導書であった
ナルクはその力を望み彼の姿を異形の物に姿を変えてしまった…