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彼岸 湊の事件簿

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彼岸 湊の事件簿

9 - 絶海の孤島篇4

♥

17

2020年10月16日

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午前11:37 談話室

お爺様、私は…

竜一

湊や、様は要らんと言っているじゃろ。

あ……

じゃ、じゃあ、おじいちゃん…

竜一

うむ。

私は…八重垣家にいても良いのかな…?

竜一

…それを何故わしに問うのじゃ?

え、だって…

竜一

…もう答えは出ておるのじゃろ?

竜一

だったらわしから言うことは何も無い。

竜一

湊、お前が蓮の事を気にしているのなら、それは間違いじゃ。

竜一

わしらは、お前のせいとは思っとらん。

竜一

あれはお前の母親がした事。

竜一

湊とは何にも関係ないわい。

お、おじいちゃん…

竜一

だからの湊、縁を切るなんて悲しいこと言わないでくれ。

竜一

可愛い孫が1人居なくなるのは、この老耄には、少々辛いからのぉ。

拓瑠

お義父さんの言う通りだ。それに君が居なくなったら、慎一も寂しがるしな。

拓瑠

な、慎一?

慎一

うん!

でも…

拓瑠

叶の事は気にするな。こいつもあれが全部本心じゃない。

拓瑠

だろ?

…そうね、少し言い過ぎたわ。

(…少し所じゃないでしょ…!)

僕達だって湊君には残って欲しい。

蓮兄さんの事は君のせいじゃない。

美由紀

そうよ、湊ちゃん。あなたが離れる必要はないわよ。

…うん、そうだね。

私、皆が私の事恨んでるって思ってた。

唯子

はっはっは、そんな訳がないだろう?

唯子

湊君、君はここにいていい存在なんだ。

和真

はぁ、そんな風に思われていたなんて、少し傷付くよ。

ええ。こんっなにも、溺愛してるのに、そんな事を考えていたなんて、ちょっと鈍感過ぎないかな!?

和真

ああ、全くだよ…

ハッ!だから湊はいつも私に冷たい態度だったのね!

和真

!そうか…それは盲点だった…

結弦

(…それは、あんた達が執拗いからだろ…。)

(あはは、相変わらずだね…)

アリス

良かったですね!湊さん!

…うん。

(…良かったな、湊。)

竜一

ほっほ、雨降って地固まるとはこの事じゃのう。

あはは、雨は降ってないと思うけど…

結弦

ま、いいじゃねぇか、湊が残ってくれるって言ってくれたんだしな。

ふふ、そうね!

竜一

そういえば、見ない顔がおるのう。

アリス

今更?

竜一

ほっほっほ、一応問うておこうと思ってな。

竜一

君が八雲アリスちゃんじゃろ?

アリス

は、はいです!

竜一

ほっほ、やはりあの男に似ておるのう。

アリス

竜一

君の父親、八雲 征十郎にじゃよ。

アリス

お、お父さんを知っているのですか!?

竜一

うむ、あやつとは取引関係にあるからのう。

和真

あ、八雲って聞いたことがあると思ったら、八雲グループの…

え!?八雲グループってあの!?

唯子

…驚いた。それじゃあ、君があそこの一人娘か。

…おじいちゃんの会社もだいぶ凄いけど、アリスちゃんも、中々だね。

アリス

?そうなのですか?

うん、おじいちゃんの会社は不動産屋でね、八雲グループとは取引関係にあるんだよ。

八雲グループにいい条件の物件を提供するかわりに、海外の物件や土地を安値で譲ってくれてるの。

アリス

ほわぁ…初耳です!

竜一

あやつとは昔から知り合いでな。よく昔は一緒に酒を飲んだ仲じゃった。

アリス

昔のお父さんはどんな人だったのですか?

竜一

今と大して変わらんよ。仕事ばかりやっとったわ。

アリス

ふふ、あまり変わってないですね!

竜一

うむ。

竜一

悠も久しぶりじゃのう。

お久しぶりです。今年もお世話になります。

竜一

うむ、ゆっくりしていくといい。

はい。

竜一

それじゃ、昼食にするかのう。

竜一

朱音よ。準備をしてくれんかのう。

朱音

お任せ下さい。

竜一

早苗も頼む。皆を食堂に通して置いてくれ。

早苗

かしこまりました。

早苗

皆様、こちらへ。

早苗は皆を連れて、談話室から出た。

ほう、久しぶりに朱音君の料理が食べるのか。楽しみだな。

ねー、朱音さんの手料理美味しいから、毎年それが楽しみで来てる部分もあるよねー。

美由紀

2人とも、それはどういう意味ですか?

あ。

美由紀

その言い草だと、私の料理が不味いみたいな…

そ、そうは言ってないよ!ね、お父さん!?

あ、ああ!もちろんだとも!美由紀の料理が不味いわけないじゃないか!

うん!うん!お母さんの料理も美味しいけど、それぐらい朱音さんの料理が美味しいから楽しみってこと!!

美由紀

なら、良かったです。ふふふ。

(か、顔が笑ってない…)

午前11:48 1階食堂

朱音

どうぞ、お入りください。

やはり、広いな。

アリス

はいなのです!

うーん、やっぱりここまで広いと落ち着かないかな。

だよね。私なんて落ち着かなくて、いつも自室で食事しているわ。

和真

えー、そうかな?僕は毎日ここで食べてるけど、落ち着かないってことはないかな。

そうだね。私は年に1度しかここへは来ないけど、ここの食堂の雰囲気はすき。

結弦

だよな。それに広いし、息苦しくないから、食事がしやすい。

…あんた達意外にずぶといわね。

うん、それに何か悔しい。

結弦

いや別に競ってるわけじゃ…

はぁ、庶民派は寂しいわねぇ…

だね…2対3は卑怯よ…

(…いつから競ってることになってるの。)

和真

(…さぁ?)

結弦

やれやれ…

慎一君はどう?

慎一

ぼ、僕も落ち着かないかな…

お〜!慎一君!君は私達の味方なんだね〜。

へぇ、見所あるわね、慎一!

ご褒美にお姉さんがぎゅってしてあげるよ〜

慎一

へ?わわっ!

慎一は渚に抱きしめられた。

慎一

湊姉ちゃん、そんないきなり…

渚だけずるいわ!私も!

慎一

え!?楓姉ちゃんまで!?

朱音

では私はお食事の準備をしてきます。

朱音

何かあれば隣部屋のキッチンにいますので。

朱音は食堂から出て、右隣のキッチンへと向かった。

早苗

竜一様。そろそろ…

竜一

おお、そうじゃったな。

ん?父さん、どこか行くのかい?

竜一

うむ、ちと用があってのう。

唯子

もしかして、お父さんの病気についてか?

竜一

…そうじゃ、薬を飲む時間じゃからのう。

竜一

一旦部屋へ戻るわい。

唯子

分かった。あまり無理をしないように。

竜一

ほっほ、誰に言っておる。

早苗

では、竜一様。行きましょう。

竜一

うむ。

早苗

お食事は部屋へお持ちしてよろしいでしょうか?

竜一

うむ、それでよい。

そう言うと、竜一と早苗は食堂を出ていった。

…あまり身体の具合が良くないみたいだな。

そう…だね。

結弦

確か…心臓が悪いんだったか?

うん…

和真

大丈夫さ。医者もそんなに悪化していないって言ってたしね。

暫くすると、朱音と早苗が戻ってきた。

朱音

お待たせいたしました。

皆の前に料理が並べられる。

アリス

ほわぁ…美味しそうです!

なるほど、スープか。

朱音

申し訳ございません。夜の食事の準備で忙しく、手軽な物しか準備出来ず…

唯子

気にする事はない。

美由紀

ええ、凄く美味しそうですし。

拓瑠

それに夕食の準備をしているなら仕方ない。

朱音

皆様…心遣い感謝します。

朱音

それと親御様方、和真様、楓様。食事の後、話があると竜一様が…。

父さんが?

唯子

…場所はここでいいのかしら?

朱音

はい、食事の後も引き続きここへ残るよう、竜一様から仰せつかっています。

唯子

…分かった。ここで待っているとお父さんに伝えてくれ。

朱音

承りました。

早苗

それでは私達は、竜一様に呼ばれていますので、これで。

ああ、ありがとう。

2人は軽くお辞儀をして、また食堂を出ていった。

どうしたのかな、おじいちゃん。父さん達に話があるって…

結弦

…きっと大事な話なんだろ。俺達子供を外すって事はさ。

…そうだね!私達が気にしてても、しょうがないよね!

唯子

うむ、それでいい。さ、早くしないとスープが冷めてしまう。

唯子

その前に頂こうとしよう。

そうだね。それじゃあ頂くとするか。

皆は手を合わせ、スープに口をつける。

(…もしかしたらもうおじいちゃんは…)

アリス

湊さん、どうかしたのですか?

…ううん、なんでもない。

午後12:39 1階 食堂

ふぅ!美味しかった!

結弦

ああ、相変わらず絶品だった。

ああ。アリスはどうだったか?

アリス

私も美味しかったです!こんな美味しいスープ飲んだ事がありません!!

結弦

そこまで美味しかったのか…

あはは…

唯子

そうだ、アリス君。君は何処か行きたい所はないのかね?

アリス

え?行きたい所ですか?

唯子

うむ、何処かないのかね?

アリス

なら、登竜門に行きたいです!

唯子

登竜門?

ああ、東の森にある滝のことだよ。

唯子

…あそこか。

確かに興味深々だったよな。

アリス

はい!だから行ってみたいのです!

アリス

駄目ですか?

いや、行ってみようか。

どうせ何もすることはないしな。

いいだろ?湊。

うん、もちろん。

唯子

結弦や渚君も行ってくるといいだろう。

えー、私外暑いし嫌なんだけど。

結弦

まぁ、いいじゃないか。ほら行くぞ。

え!?ちょっと!私行くなんて言ってないって!

ちょっと!待ってって!

渚は結弦に引き摺られて行く。

あ、慎一君も行く?

慎一

う、うん!

慎一

…お父さん、行ってもいい?

拓瑠

ああ、もちろんだ。

拓瑠

すまないが湊、慎一をよろしく頼む。

うん、まかせて拓瑠叔父さん。

よし、それじゃあ行くか。

アリス

はいです!

行こう?慎一君?

慎一

うん!

湊達は玄関へと向かった。

唯子

ふふ、子供達を追い出すのは気が引けるな。

はは、そうだね。

で、父さんはまだなの?

…じき来るだろう。

美由紀

お義父さんの話って何なのでしょうか?

そんなの分かりきってるじゃない。

遺産の話でしょ?

唯子

ねぇ、和真。あの医者の話って嘘なんでしょ?

和真

…うん、そうだよ。

美由紀

え!?

拓瑠

…つまり、もう長くないって事か…

和真

うん。もう1年持つか、持たないかぐらいらしい。

はっ。やっぱりね。

父さんがわざわざあの子達を除いて話がしたいなんて、遺産の話ぐらいしかないでしょ。

竜一

その通りじゃ。

使用人2人を引き連れた竜一が、姿を現した。

と、父さん。

拓瑠

…じゃあ、先が短いって話も…

竜一

うむ、和真が言った通り、わしの身体はもう駄目らしい。

唯子

…治療法もないのか?

竜一

ない。

…なんてことだ…

…それで、遺産の分配はどうするの?

唯子

叶、少しは自重しろ。

だってその為に私達をここに集めたのよね?

早く本題に入ってくれない?

叶…!

だってグダグダ言ってても、父さんの病気は治らないんでしょ?

で、どうするの?父さん。

竜一

うむ、遺産の分配、八重垣家の跡取りはもう決めておる。

へぇ…

竜一

だが、それはまだ言えぬ。

なっ!?

何故!?別に今言ってもいいじゃない!

竜一

いや、今は言えぬ。

竜一

その理由も秘密じゃ。

…父さんには何か考えがあるようだね。

考え?

うん、その内容は……分からないけどね。

和真

(和真?)

和真

(…何となく誰が跡取りになるのか、分かった気がするよ。)

(本当なの?)

和真

(うん、僕の予想が正しければだけどね。)

和真

(…とりあえず後で説明するよ。)

(…分かった。)

それで、話はそれだけなのかな?

竜一

うむ、一応お前達には、わしの寿命が短い事と、跡取りを決めておる事を話しておこうと思ってな。

唯子

…分かった。2人とも、部屋へお父さんを連れて行ってくれ。

朱音

かしこまりました。

早苗

お任せ下さい。

朱音

行きましょう、竜一様。

竜一

うむ、それじゃあ、また晩飯の時にのう。

竜一と使用人は階段へと向かった。

(ちっ…)

唯子

午後12:49 階段

竜一

…2人とも。

竜一は階段を登りながら、朱音と早苗に話しかける。

朱音

…なんでしょうか。

竜一

…わしが死んだらあの子の事頼むのう。

早苗

…やはり竜一様は、あの方を次期当主に…?

竜一

うむ。考えは変わっとらん。

朱音

…ですがそんなことをしたら、他の方達が黙ってないと…

竜一

だからこそのお前達じゃ。

朱音

…分かりました。この酒見 朱音、全力でお守り致します。

早苗

同じく、露川 早苗、その命、必ず果たします。

竜一

うむ、これでわしも、安心して逝けるわい。

朱音

ふふ、縁起でも無いこと仰らないでください。

竜一

ふ、そうじゃの。

午後12:59 登竜島 東の森

ちょっと!離してよ!

結弦

ふぅ、ここまで来たら大丈夫か。

いきなりどうしたのよ!

結弦

分からないのか?

何がよ?

…叔父さん達は私達を食堂から遠ざけようとしてた。

それは、おじいちゃんの話に関係あるんだと思う。

あーおじいちゃんが何か話があるって奴でしょ?それがどうしたの?

結弦

…本当に気付いてないのか?

はぁ…つまり、おじいちゃん達は、私達子供に聞かれたくない話をするつもりなの。

…そりゃ、そうよね。

で、なんの話をするつもりなの?

結弦

…お前…とぼけてるんじゃないんだろうな?

何をとぼける必要があるのよ。

結弦

…はは。

な、何、その態度!?

知ってるなら教えなさいよ!

…遺産の話……だと思う。

遺産?…でもおじいちゃんの病気はそんなに悪くないって……

結弦

多分…嘘だろうな。

嘘?

結弦

ああ、じいちゃんの病気が悪化していないって言う話がだよ。

え、じゃあ…

…おじいちゃんは…

アリス

…あ……

慎一

おじいちゃん…

…でも今すぐって訳じゃない。

だけど…!

結弦

…渚。

あ…

…ごめんね怒鳴っちゃって。

それに今は東の滝へ行く所だったよね。

…早く行こう?

…うん、そうだね。

結弦

そうだな。それに今日は嵐が来るらしいから、早く見に行って屋敷に戻ろう。

え?そうなの?

結弦

うん、この島に着いた時、早苗さんが言っていた。

へぇ、じゃあ尚更早く行かないとね。

そうだな、急ぐか。

アリス

はいです!

アリス

どんな滝なんでしょうか…楽しみなのです!

うーん、あんまり他の滝と変わらないと思うよ。

結弦

確かに、他の滝と変わりないな。

アリス

…そうですか…

こら、アリスちゃんの夢を壊さない。

結弦

や、だってなぁ…

うん、本当に変哲もない滝だし、ね…

まぁ、とりあえず行ってみよう。

滝には数十分で到着した。

はぁ、やっと着いた…

アリス

ほわぁ…綺麗です!

結弦

そうか?

アリス

はい!綺麗な滝です!

どうやら気に入ったみたいだな。

良かった。苦労してきたかいがあったわね。

アリス

連れて来てくださって、ありがとうございます!

結弦

それしても、高い滝だな。

アリス

はい!この滝を登った鯉さんなら、竜になったに違いありません!

ふふ、そうだね。

そこで雨が降ってきた。

雨か…

結弦

降ってきたな。

そうだね…早く戻ろう?

そうだね。

アリス

少ししか見れてないので残念です…

また明日来ればいいよ。

えぇ〜明日も行くの〜?

結弦

ま、今日中に嵐が去ったらの話だな。

アリス

そうですか…

とりあえず、帰りましょう。

午後15:13 1階 ホール

湊達は、道に少し迷ってしまい、来る時よりも帰るのに時間が掛かってしまった。

朱音

おかえりなさいませ。

朱音

遅かったですね。何かあったのですか?

いやぁ、帰る時少し道に迷っちゃって…

早苗

皆様ずぶ濡れですね。今拭くものをお持ちします。

早苗は3階にある、大浴場へと向かった。

…へくちゅ…

ん?何今の?

結弦

へぇ、湊のくしゃみか。レアだな。

…うるさい

身体を冷やしたみたいだな。

アリス

湊さん大丈夫ですか?

悠は湊の額に手を当てる。

ふむ、ちょっと熱っぽいな。

あらら、この雨のせいかな。

結弦

だろうな。

結弦

今日はもう、横になっていた方がいいだろ。

湊、そうするか?

うん、悪いけど、そうさせてもらうね。

分かった。それじゃあ俺は、湊を部屋まで送ってくるから、このことを和真さん達に伝えておいてくれ。

うん、了解。

朱音

後で風邪薬をお持ちします。

朱音

夕食はどうされますか?

ごめん、夕食は大丈夫。

朱音

かしこまりました。

それじゃ、行くか。

…うん……

湊はふらつきながら、2階へと向かった。

アリス

湊さん、大丈夫なのでしょうか…

結弦

ま、ただの風邪だろ。

うん、心配する事ないよ。1晩寝たらすぐに良くなるって!

結弦

お前の場合な。

ちょっと!それどういう意味?

慎一

渚姉ちゃんは元気が有り余ってるって意味じゃないのかな?

あーなるほどそういう事ね!

結弦

(馬鹿だ…)

午後15:36 2階 客室

湊と悠は2階の客室に着いた後、悠は湊をベッドに寝かせた。

本当に風呂に入らなくていいのか?

うん、服も着替えたし、大丈夫。

それに…

湊の顔が赤い。

しんどいのか?

…うん少し。

朱音

湊お嬢様、風邪薬をお持ちしました。

ああ、入ってくれ。

朱音

失礼します。

朱音

ここに置いておきますね。

朱音は水が入ったコップと錠剤の風邪薬を客室にある机の上に置いた。

ああ、ありがとう。

朱音

それでは、失礼します。

朱音

湊お嬢様、どうかお大事に。

朱音は部屋から出ていった。

ほら、風邪薬だ。飲め。

あ、ありがとう…

湊に風邪薬を飲ます。

これで一安心だな。

悠…

どうした?

いつもありがとう、感謝してる…

ふ、今更だな。

もっと頼ってくれてもいいぞ。

…うん、これからも頼りにする。

ああ…

…また様子を見に来る。

…もう行くの?

俺がいると落ち着いて眠れないだろ?

そんなこと、ない。

寧ろ、いてくれた方が安心する。

はは、じゃあ眠るまでいておいてやるよ。

…うん、そうして。

それから少しの間沈黙が生まれた。

(…それにしても強い風だな。)

(嵐が来ると言うのは本当だったか。)

湊。

湊…?

…寝たか。

悠は湊が寝た事を確認して、静かに廊下に出た。

午後23:29 3階廊下

あれから何事も無く、夜の23時になった。

アリスちゃん、いい湯だったね〜。

アリス

はいです!

渚とアリスは3階にある大浴場に行っていた。

今はその帰りだ。

アリス

広いお風呂でしたね!

うん、銭湯みたいだよね〜。

ってあれ?

アリス

渚さん、どうかしたのですか?

あれって拓瑠叔父さんだよね?

拓瑠

拓瑠叔父さーん。

拓瑠

ああ、君達か。

どうかしたの?

拓瑠

いや、叶を探してるんだ。

叶叔母さん?それなら2階の廊下で見掛けたよ?

拓瑠

それはいつ頃だ?

んー、確か私達がお風呂に入る前だから、30分前ぐらいだね。

拓瑠

そうか…

何かあったの?

拓瑠

叶と食堂で待ち合わせをしていたんだが、来てないんだ。

そうなの?

拓瑠

ああ、使用人の早苗から、3階に行くのを見たって聞いて、来てみたんだが…

おお、どうしたんだ皆。こんな廊下で。

あ、お父さん。

叶叔母さん見なかった?

叶なら僕が3階へ行こうとした時に、1階に降りていくのを見たよ。

拓瑠

そうなんですか?

拓瑠

でも3階に行ったって聞いたのですが…

きっと早苗さんの見間違えじゃない?

階段の場所は一緒だから、下と上を見間違えたんだと思うよ。

拓瑠

…そうだな。1階へ行ってみるよ。

拓瑠は階段を降りていった。

ところでお父さんは3階で何してたの?

うん?僕かい?

僕は風呂に入っていたよ。

あ、そうなんだ。

私達もお風呂に入ってたんだ。

そうなのか。僕は男湯だったから気付かなかったよ。

凄いよねここの大浴場。男湯と女湯が別々に作ってあるなんて。旅館みたいだね。

アリス

はいです!それにお屋敷内も広いですしね!

はは、それじゃあ僕は部屋に戻るよ。

うん、お休みお父さん!

ああ、お休み。アリス君も。

アリス

お休みなさいです!

薫も2階へと降りていった。

それじゃ、私達も戻ろっか。

アリス

そうですね!

アリス達も2階へと降りていった。

午前06:30 客室

ふわぁ…

…何時だろう。

湊はスマホを見た。

6時半…

…あれ、圏外になってる…

昨日の嵐で電波塔が、壊れたのかな…

夜は風が強かった。

…とりあえずお風呂に入ろうかな。

昨日入ってないし。

客室にもシャワーが付いてるけど、折角だし大浴場に行こうかな…

湊はそう思い、廊下に出た。

午前06:33 2階廊下

アリス

あ、湊さん!

アリス、おはよう。

アリス

おはようございます!

どうしたの?

アリス

いえ、湊さん昨日お風呂に入ってないって思い出して…それで一緒にお風呂どうですか?

うん、いいよ。

私も今から行こうと思ってたから。

アリス

本当ですか!?

本当。それじゃ行こ?

アリス

はい!

午前06:37 3階廊下

朱音

あら、湊お嬢様、八雲様、おはようございます。

アリス

おはようございます!朱音さん!

おはよう、朱音。

朱音

湊お嬢様、風邪の方はもう大丈夫なのですか?

うん、鼻はまだ詰まってるけど、しんどくはないかな。

朱音

それは良かったです。

朱音

お二人はどうして3階へ?

ちょっとお風呂に入ろうかなって思って。

朱音はおじいちゃんの所?

朱音

はい、ですがその前にお2人が大浴場へ向かうなら、先に大浴場の掃除をさせて頂こうと思っております。

朱音

お2人には、綺麗な大浴場を使って貰いたいと思いまして。

ふふ、ありがとう。

ならその間に、私達がおじいちゃんへの用事を済ましてきてあげる。

朱音

いえ、それは私達の仕事ですので…

どっちにしても、朱音が大浴場の掃除を終えないと入れないし。

だから私達にやらせて?

朱音

…分かりました。ではこちらの鍵をお受け取りください。

朱音

マスターキーです。

ん、ありがとう。

朱音

竜一様に、お薬を飲むよう、伝えてもらってもよろしいでしょうか?

うん、わかった。

それじゃあ行ってくるね。

朱音

はい、ありがとうございます。

午前06:45 3階 竜一書斎

ここね。

えっと…鍵を…?

アリス

湊さん?

…開いてる?

湊は鍵穴に鍵を刺そうとしたが、鍵は開いていた。

閉め忘れたのかな。

湊達は書斎へ入った。

アリス

あれ…なんだか臭いですね…

アリス、失礼。

アリス

あ、いえ!そういう臭いでは無くて…

はぁ…じゃあ換気扇回すね。

アリス

は、はい!

湊は電気のスイッチの横にある、換気扇のスイッチを押した。

アリス

ありがとうございます!

ん。

おじいちゃん、いる?

アリス

どうやら、まだ寝てるみたいですね…

竜一はベッドで横になっていた。

おじいちゃん、起きて。

(あれ…?)

おじいちゃん!

竜一はいくら呼びかけても起きない。

まさか…

湊は、竜一の顔に近づく。

…息してない……

アリス

え?

…脈は……

……

アリス

湊さん?

…死んでる……

アリス

え!?

アリス!朱音を呼んできて!

アリス

は、はいです!

アリスは大浴場へと向かった。

おじいちゃん、もしかして病気で…

…?

…暖炉が暖かい?

この時期に暖炉なんて…

アリス

湊さん!大変なんです!!

どうしたの?

アリスが戻ってきた。

朱音

…湊お嬢様。

朱音…おじいちゃんが……

朱音

…叶様が…

…え?

アリス

叶さんが!亡くなってたんです!

…何処で?

朱音

大浴場です。

朱音

私が、大浴場へ向かった所、叶様が…

その時、2階から大きな悲鳴が聞こえた。

アリス

!今のは…

朱音

…美由紀様の悲鳴?

…行ってくる。

2人はここにいて。

朱音

…かしこまりました。

午前06:57 2階 廊下

確かこっちから…

早苗

あ、湊お嬢様!

どうしたの?何が…

早苗

大変なんです!

早苗

今すぐこっちへ!

…分かった。

湊は案内された場所に着いた。

(…あれここって…)

あ、湊君!

薫叔父さん?

何があったの?

美由紀

み、湊ちゃん…あ、あれ…

え、ここって…

午前07:00 2階 楓自室

薫達が集まっていた場所は、楓の部屋だった。

…姉さんになにかあったの?

湊は恐る恐る部屋に入る。

楓、姉さん…?

そこには、楓が死んでいた

彼岸 湊の事件簿

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