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彼岸 湊の事件簿

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彼岸 湊の事件簿

10 - 絶海の孤島篇5

♥

8

2020年10月27日

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午前07:02 2階 楓自室

姉…さん?

楓は部屋の床に頭から血を流し、倒れていた。

湊は楓へと近づくていく。

…やっぱり…死んでる…

…湊君…

第一発見者は誰?

…悲しくないのかい?

悲しいわけ…ない。

でも姉さんの為にも私は犯人を見つける。

美由紀

犯人?

うん。

これは間違いなく他殺。

それで、第一発見者は?

…私だよ。

なんで薫叔父さんはここに来たの?

昨日の夜に、楓君に『朝になったら部屋に来て』と言われたんだ。

美由紀叔母さんは?

美由紀は僕が部屋から出ていく時に起こしてしまってね。

こんな朝に僕みたいなおじさんが1人で、女の子の部屋に行くのはどうかと思って、一緒に来てもらったんだ。

そうなの?

美由紀

ええ。薫さんと一緒にこの部屋の前に来たのよ。

だが、ノックしても楓君の返事が無かったから、扉を開けようとしたんだが、鍵が閉まっていてな。

それで、急いで美由紀に早苗君を呼んできてもらったんだ。

ん?したのかい?

ううん、それで早苗がマスターキーで扉を開けたの?

早苗

あ、いえ、薫様に鍵を渡したので、開けたのは薫様がです。

…そう。

ありがとう。

湊は楓の死体を調べる。

(…やっぱり撲殺。)

(凶器は…傍に倒れてる椅子かな…)

(血も付着しているし…)

(死亡時刻は、深夜の1時位か…)

湊君、何かわかったかい?

うん。死後硬直から見て姉さんが殺されたのは、深夜の12時か1時辺り。

なるほど…

薫叔父さん。

昨日の夜に姉さんと会ったのは何時位だった?

確か、僕が風呂から帰ってきた時だったから…11時半頃だったと思う。

(…それじゃあ、その後すぐに殺されたのね…)

楓のポケットからは、この部屋の鍵が出てきた。

(この部屋の鍵は…ある。)

(という事は、密室殺人…)

それ、この部屋の鍵じゃないか。

美由紀

え?じゃあ…密室殺人って事なの?

…いや、この鍵が無くても、外から施錠する方法はある。

美由紀

方法?

マスターキーね。

うむ。

美由紀

じ、じゃあ…

美由紀は早苗の方を見る。

早苗

いえ、私ではないです。

早苗

楓様がお亡くなりになられた時間帯は、1階の食堂で拓瑠様と一緒に居りました。

拓瑠

…これは……

そこに拓瑠がやってきた。

拓瑠

…何があったんだ?

ナイスタイミングだね。

拓瑠

早苗は拓瑠に事情を説明した。

拓瑠

そうか…そんな事が…

それで拓瑠叔父さん。早苗と一緒に居たっていうのは本当なの?

拓瑠

ああ、本当だ。

拓瑠

昨日の12時回る頃から、ずっと食堂にいた。

拓瑠

朱音さんも一緒だった。

ああ、昨日3階で叶を探していたな。

見つかったのかい?

拓瑠

いえ…一応朝まで食堂に居たのですが…

朝までかい?

拓瑠

はい。早苗さん達と話し込んでいたら、いつの間にか朝で…

拓瑠

そうしたら、美由紀さんが早苗さんを呼びに来て、戻りが遅かったから気になって見に来たんです。

そうだったのか…

…拓瑠叔父さん。

拓瑠

ん?

叶叔母さんは多分…大浴場に居ると思う。

拓瑠

大浴場?

うん。

拓瑠

…分かった。行ってみるよ。

拓瑠は部屋から出ていった。

早苗、他の皆を食堂に集めてくれない?

早苗

かしこまりました。

ありがとう。

早苗

湊お嬢様はどうされますか?

私も大浴場に用があるから、行ってくるね。

じゃあお願いね。

早苗

はい。お任せ下さい。

湊は部屋から出ていった。

午前7:27 3階 大浴場

拓瑠は叶の死体の傍にいた。

拓瑠

拓瑠…叔父さん。

拓瑠

…叶は本当に死んでるのか?

うん、多分もう…

拓瑠

っ…!

叶の死体は、女湯の脱衣場に眠るように静かに死んでいた。

拓瑠

…誰が…こんな事を…!

湊も死体に近づいて行く。

(…外傷はなし…)

(首に爪痕がある…)

(という事は絞殺…?)

…拓瑠叔父さん。

その…調べても…?

拓瑠

…ああ。

拓瑠

…犯人を見つけてくれ…

うん、絶対に見つける。

湊は死体を調べる。

…死亡時刻は昨日の11時前後ね。

拓瑠

それじゃあやっぱり、叶は3階に来ていたのか…

やっぱり?

拓瑠は昨日の事を話した。

そうだったのね…

…でもそうなると……

拓瑠

…あの二人が殺した…?

あの二人がここに居たなら…そういうことになるね…

(けど…薫叔父さんと早苗の証言の食い違いが引っかかる…)

拓瑠

…とりあえずこの事は皆に伝えた方がいいな……。

そうだね…悪いけど皆に伝えといてもらえるかな?

拓瑠

それはいいが…君はどうするんだ?

もう1個行く所があるの。

拓瑠

…何処に行く気だ?

…おじいちゃんの書斎。

その…おじいちゃんも…

拓瑠

…!亡くなられたのか!?

うん…

このことも伝えといてもらえる?

拓瑠

…ああ。

拓瑠

…君が行くってことは、他殺なのか?

うん。そう私は思ってる。

拓瑠

…分かった。気をつけてな。

湊は頷く。

それじゃ、後で。

拓瑠

ああ。

午前7:46 3階 書斎

アリス

湊さん!

書斎にはアリスと朱音がいた。

ごめん、遅くなった。

朱音

いえ、それで2階では…

…うん、今から説明する。

湊は2階での事を説明した。

アリス

そんな…楓さんが…

朱音

ねぇ、アリス。

アリス

はい?

昨日の11時頃、渚と大浴場にいたって本当なの?

アリス

え…はいです。

何時頃から居たの?

アリス

確か…10時半から、11時半頃ですね。

…そう。

…ここを調べてもいい?

朱音

はい、もちろんです。

湊は暖炉へと向かった。

ねぇ、ここの暖炉って今も使われてるの?

朱音

いえ、この暖炉は使われてないです。

朱音

5年前くらいに、お屋敷をリフォームしてから、煙突も取り払われましたし。

朱音

この暖炉は、当主様が気に入られてらしたので、取り壊さず、残しておられました。

…そう。

(…そういうことなのね。)

湊は竜一の死体へと向かう。

(…死亡時刻は12時半頃か…)

(でも、この殺害に関しては死亡時刻は関係ないね…)

(…後は動機だけど…なんで姉さんを…)

湊は窓際にある竜一の机へと向かう。

机の引き出しを開けていく。

…あれ、この机だけ鍵が…

朱音

湊お嬢様。これを。

え?

朱音は1本の鍵を差し出す。

朱音

そこの引き出しの鍵です。

湊は無言で鍵を受け取り、引き出しを開ける。

…開いた……

これって…遺言書?

朱音

はい。遺産の分配…それと次期当主の名が書いてあります。

…読んでも?

朱音

はい。

…え?

その遺言書にはこう書いてあった。

『八重垣家次期当主は、彼岸 湊とする。』

…私…?

朱音

はい。

アリス

湊さんが次期当主ですか!?

そう…みたい……

でもなんで…

朱音

元は楓様か和真様に継がせるおつもりだったのです。

朱音

しかし、楓様と和真様が湊お嬢様を当主にと、仰られ…

…でもなんで私なの?

姉さん達が断ったなら、普通…

朱音

はい、普通なら唯子様になるでしょう。

朱音

ですが、唯子様は既に断っていたのです。

朱音

だから楓様達に次期当主ので、話がいったのです。

そう…なの……

朱音

湊お嬢様、これだけは覚えておいてください。

朱音

竜一様は決して、嫌々湊お嬢様を選んだ訳ではありません。

朱音

竜一様は貴方が当主相応しいと思い、次期当主に選んだのです。

私が…相応しい…?

朱音

はい。竜一様が言っていました。

朱音

「この家を任せられる人間は限られている」と。

…なるほどね……

朱音

はい。なので竜一様は湊お嬢様を選ばれました。

…それって裏を返したら、唯子叔母さんや、楓姉さん達以外は信用出来ないってことだよね?

朱音

……はい。

朱音

湊お嬢様の思っている通りです。

…分かった。

私がこの家を継ぐ。

朱音

はい。これからは湊お嬢様が当主でございます。

うん、ありがとう。

朱音

私達使用人は、竜一様が亡くなられた際には、湊お嬢様に仕えるように命じられています。

分かった。

これからよろしくね。

朱音

こちらこそよろしくお願い致します。

湊は無言頷き、引き出しを閉じようとする。

…?

朱音、これって…?

湊は黒いファイルを取り出す。

朱音

それは竜一様が個人的に調べていたことです。

見てもいい?

朱音

はい。

誰かのデータみたいだけど…

朱音

…もう1つ伝えなければならないことがあります。

なに?

朱音

湊お嬢様には…血の繋がったきょうだいがおります。

え?

アリス

湊さんに!?

朱音

それはその方について調べたデータです。

…名前は?

朱音

いえ、名前も性別も分かりません。

朱音

ですが歳は、湊お嬢様の1つ下と聞いております。

…そうなの……

……このファイル持っていっても?

朱音

どうぞ。それはもう貴方の物です。

うん。

…それじゃ、食堂に行こうかな。

アリス

食堂?

うん、食堂に皆を集めてるから。

朱音

…事件の真相が分かったのですね?

アリス

え!?もうですか?

そう。だから今からこの事件を解き明かす。

午前8:12 1階 食堂

早苗

湊お嬢様!

早苗、皆は集まってる?

早苗

はい。

湊、大丈夫なのか?

…うん。

…本当なの?おじいちゃんと楓ねぇが死んだって…

本当。

慎一

お、お母さんも?

…うん……

和真

…!

結弦

…なんてこった……

唯子

…警察は呼んだのか?

それが昨日の嵐のせいで、電波塔が故障したらしくて、電話が繋がらないんだ。

唯子

なら、助けが来るまで犯人がいる中で過ごさないと行けないのか……

美由紀

犯人は誰なの!?

…分からない。

だが今は…

朱音

…皆様聞いてください。

朱音

…湊お嬢様が事件の真相に気付いたと。

拓瑠

……!本当なのか!?

うん、今からその真相を話す。

もう分かったのか?

うん。

拓瑠

なら早く話してくれ!

拓瑠

叶を殺したのは誰なんだ!?

…まずは事件概要について話すね。

知らない人もいるだろうし。

拓瑠

…分かった。

まずはおじいちゃんの事件から。

おじいちゃんは書斎のベッドで亡くなっていた。

外傷はなし。

第一発見者は私とアリス。2人で大浴場へ向かう時に、書斎に用事がある朱音の代わりに、私達が書斎へと向かった所、鍵が空いており、おじいちゃんがベッドで亡くなっていた。

時刻時刻は、夜12時半頃。

次に、朱音が大浴場で叶叔母さんの絞殺死体を発見。発見場所は…女湯の脱衣場だよね?

朱音

はい、大浴場にうつ伏せで倒れていました。

死亡時刻はおよそ昨日の夜11時前後。

その直後、薫叔父さん達が姉さんの死体を発見。

鍵が掛かっており、美由紀叔母さんがマスターキーを持つ使用人を呼びに行った。

そして呼んできた早苗から、薫叔父さんはマスターキーを受け取り、鍵を開けて撲殺された姉さんの死体を発見。

死亡時刻は夜1時頃。

部屋の鍵は姉さん自身が持っており、外から施錠する方法はマスターキーのみ。

所謂、密室殺人。

事件の概要はこれくらいだね。

拓瑠

昨日の夜、3階にいた2人に聞きたい。

…私たちのことだよね?

拓瑠

ああ…単刀直入に聞く。お前達が叶を殺したんじゃないか?

アリス

え!?

拓瑠

あの時、お前達は髪が濡れていた。つまり大浴場から帰る途中だった。

拓瑠

そしてその時間は、叶の死亡時刻と一致している。

…やっぱりそう言われるよね…

拓瑠

どうなんだ?

アリス

わ、私達は殺ってません!

拓瑠

だが、叶の死体は女湯の脱衣場にあった。

拓瑠

これが決定的証拠だ。

…ううん、2人は殺してないよ。

拓瑠

なぜそう言いきれる。

拓瑠

動機もある。

拓瑠

昨日の談話室での出来事だ。

あんな事で人を殺すわけないじゃん!

アリス

そ、そうですよ!

拓瑠

どうだかな。

アリス

み、湊さん!

うん、分かってる。

犯人は2人じゃない。

拓瑠

だからなぜそう言える!?

拓瑠

現に死体は……!

…アリス達が出て行った後に運び込まれたんじゃないか?

拓瑠

え?

うん、私もそうだと思う。

わざわざ、疑われる場所に死体を放置しないと思う。

2人が犯人なら、他の場所に移動させて、隠した方が疑われる可能性は減る。

拓瑠

…確かに……

拓瑠

だか、気が動転してそれが思いつかなかっただけかもしれない。

犯人が2人居て、思い付かないって事は無いんじゃないかな?

それに犯人なら廊下で会った時に、堂々と大浴場に行ってきたって答えないと思う。

拓瑠

…そう…だな……

拓瑠

…すまない、2人共。

ううん、私達が疑われるのは当然だから。

…私の考えはこう。

アリス達が大浴場にいる頃に、他の場所…3階のどこかの部屋で叶叔母さんを殺し、アリス達が大浴場を出たのを見計らって、脱衣場へと運び込んだ。

うん、筋が通っているな。

和真

運び込んだ理由は、2人に疑いを向けるためだね。

うん。

次はおじいちゃんの殺害。

アリス、部屋に入った時に、なんか臭うって言ってたよね?

アリス

は、はいです。

どんな臭いだった?

アリス

えーと…

アリス

なんだか焦げ臭いというか…

…やっぱり。

アリス

おじいちゃんの死因だけ分からなかったの。

でもこれではっきりした。

おじいちゃんは二酸化炭素中毒で死んだの。

結弦

二酸化炭素中毒?

朱音

…あの暖炉ですか?

唯子

暖炉…ああ、お父さんが残していた、あれか。

和真

確か煙突だけを取り払ったやつか。

うん、犯人は暖炉で薪を燃やして、換気扇を回さずに扉を閉じ、密封空間を作った。

当然溜まった二酸化炭素は、部屋に充満してする。

普通は煙突から出るんだけど、煙突が無いから…

唯子

…死んだと言うことか。

うん。

…最後だね。

姉さんの密室殺人。

密室…

まぁ、厳密には密室じゃないんだけどね。

和真

密室じゃない?

アリス

え!?

美由紀

どういうこと?

…そういう事か。

アリス

悠さん、分かったのですか?

ああ。

あんた、現場を見てないのによく分かるね。

まぁ、予想だけどな。

…叶叔母さんを殺して、3階から戻ってきた犯人は自室に戻り、しばらくしてから姉さんの部屋に行った。

そこで姉さんを撲殺し、再び自室へと戻った。

これが犯行の流れ。

ん?密室の謎は?

それはこれから話す。

…でもその前に、美由紀叔母さん。

美由紀

何かしら?

薫叔父さん達が、姉さんの部屋の前で、姉さんを呼び掛け続けた時間ってどれくらい?

美由紀

えーと、確か1分くらいだったかしら?

呼び掛けて1分後に、早苗を呼びに行ったってこと?

美由紀

え、ええそうよ。

美由紀

それがどうかしたの?

うん、ちょっとね。

美由紀

それで、密室の方法に戻るんだけど。

…そもそも鍵なんて掛かってなかったんだ。

美由紀

え!?

鍵をあたかもかかってるように、そう演技をした。

美由紀叔母さんの前でね。

美由紀

ちょ、ちょっと待って!

美由紀

それじゃあ犯人って……

うん。

薫叔父さん。あなたが犯人だよね?

ふ、なんのことかさっぱりだよ。

大体なんで鍵が掛かってなかったって言いきれるんだい?

だってあの部屋で密室を作るのは、これしか方法がないんだ。

窓も施錠されていたし、ましてや外は嵐だったから、2階から降りるなんてことは不可能。

抜け道があるんじゃいのか?

和真

抜け道なんて無いよ。

和真

この屋敷は、そんなからくり屋敷じゃない。

それに鍵が掛かっていたって証言して、実際にドアノブを触ったのは薫叔父さんだけ。

密室だっていう証拠は、そんな叔父さんの証言だけなの。

だからって、僕が犯人なんて…

それに。

それに1分間しか待ってないのに、マスターキーを使おうと思うはずがない。

薫叔父さん達が行った時間は、早朝。姉さんが寝ている可能性もある。

早苗

た、確かに…

本当はもう、死んでいるって知っていたんじゃないの?

…!うるさい!

大体!そんなの楓君の事件だけじゃないか!

他の事件はどうなんだ!?

…ねぇ拓瑠叔父さん。

拓瑠

ん?

昨日廊下で会ったのって、本当に2人だけ?

拓瑠

…あ………

…そういえば、あの時お父さんも居たよね?

アリス

あ、確かに!

拓瑠

…あの時、薫さんは叶が1階に行ったって行っていましたけど、あれは本当は嘘だったんじゃないですか?

………

早苗

え?1階?

早苗

1階には、叶様は来ていませんでしたよ。

早苗

それに私は、叶様が3階に行く所を見ましたし。

朱音

はい。私達は1階にいましたが、叶様は来ておりません。

お、お父さん……

美由紀

ほ、本当に、あなたなの?

っ…!

…最後に事件を順を追って説明するね。

叶叔母さんを呼び出して、3階の部屋で殺した。

その後、偶然か狙ったかは分からないけど、アリス達を疑わせる為に女湯の脱衣場に死体を運んだ。

その後2階へ降り、自室に戻った後に姉さんの部屋に行き、姉さんを殺した。

その後自室に戻って朝まで待ち、再び姉さんの部屋に行った。

この密室トリックは犯人が第一発見者にならないと成立しないからね。

呼び出されたって言うのも嘘なんでしょ?

…そして、そこからは美由紀叔母さんが知っての通り。

拓瑠

待ってくれ。

拓瑠

お義父さんの殺人が抜けている。

あれは…正直どっちが殺害したのか分からないの。

和真

薫叔父さん、あれはどっちが殺したの?

叶だよ。

…元は父さんに話をしに行くために、叶を呼び出したんだ。

美由紀

話?

ああ…次期当主についてだよ。

だけど、そこで聞かされた話は、僕達には納得の行かない内容だった。

…次期当主はお前達じゃない……

っ!

そう言われたの?

…ああ。

言葉は全然違うが、内容はそうだったよ。

だから叶はお父さんが眠ったのを確認して、暖炉火をつけた。

…姉さんを殺したのは次期当主を教えてくれなかったから?

いや、教えてくれたさ。

君なんだろ?

拓瑠

なっ!?

うん。

…楓君は……僕が君を殺そうとすると思ったのか、力ずくで止めようとしてきたよ。

僕には、そんな気は全然なかったんだけどね。

ただあまりにもしつこくて、つい、ね?

和真

っ!つい!?

和真

ふざけるな!

和真は薫の胸倉を掴む。

和真

そんな理由で…そんな理由で楓を!

兄さん。

和真

…っ!

湊に止められ、和真は手を離す。

…叶叔母さんも殺したのはなんで?

ふ、それも単に邪魔だったからさ。

叶が死んだら、遺産が多く貰えるだろう?

拓瑠

…なんだと?

拓瑠

そんな身勝手な…

お父さん。

ん?

…なんでそんなにへらへらしていられるの?

ふ、たかが2人殺しただけだろう?

…っ!

ふざけないで!

渚だって、叶のことは嫌いだったろう?

死んで、喜んでるんじゃない…

そんな訳ないでしょ!!!!

確かに…叶叔母さんは苦手だった…

けど、死んでいいなんて思ったことない!!

そんな理不尽な理由で殺されたなんて…

だ、だか、あいつは父さんを殺したんだぞ!

死んで当然だろ!

唯子

…君が言える事ではないな。

うん。お父さんは下らない理由で2人も殺した。

その内1人は本当に無関係な楓ねぇを!

だ、大体、この血の繋がってないやつがいるから………!

美由紀

っ!

美由紀は薫の顔を叩く。

美由紀

薫さん。

な、なんだね!?

美由紀

…見損ないました。

美由紀

…私が好きだった人は……もう居ないのですね…

な、何故だ!私は2人を幸せにするために、当主に…!

美由紀

…私の欲しい幸せは、そんなのじゃないです。

うん。

美由紀

薫さんが当主じゃなくても…ただ平凡に生きて居ればそれで良かったんです……

…あ………

…別に裕福じゃなくても…お父さんが私のことを大切に思ってくれていたならそれでよかったの。

渚……

それに、今も充分裕福だしね!

……

私は…間違っていたのか……

美由紀

薫さん。

美由紀

罪を償って、戻ってきてください。

こ、こんな私を…待っていてくれるって…言うのか……?

うん!だから、ね?

……

…すまない……

(…これで…終わりだね……)

湊、お疲れ。

悠。

アリス

湊さん!凄かったのです!

…少し疲れたけどね……

それにしても驚いたぞ。お前が次期当主なんて。

うん、私も驚いた。

和真

湊…継いだんだな……

うん…姉さんも喜んでるかな……

和真

きっと喜んでるさ。

和真

なんせあの楓姉だからね。

…そうだね……

こうして孤島の事件は幕を閉じた。

1日後、助けが来て、湊達は無事本土へと戻った。

薫は逮捕され、他の皆も事情聴取に追われたのだった。

数日後 湊自室。

早苗

湊お嬢様。お風呂は如何ですか?

朱音

先に夕食に致しますか?

…なんで2人共ついてきてるの。

早苗

だって、今の雇い主は湊お嬢様ですから♪

朱音

和真様も一人暮らしを始め、大学の近くに引っ越したので、お屋敷にいる理由は無くなりましたので。

だったら、使用人を辞めればいいじゃない。

早苗

いえ、もう竜一様から湊お嬢様に一生仕える分のお給料は貰っていますし。

朱音

はい。なので辞めることは出来ないのです。

はぁ…

早苗

これからよろしくお願い致しますね、湊お嬢様♪

朱音

なんでもご所望下さい。

…なんだか騒がしくなりそう……

そう言いつつも満更でもない、湊であった

絶海の孤島篇 END

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