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佐伯莉央

お父さん!仕事!遅刻するよー

お父さん

あー、すまんすまん!

今日は珍しく、お父さんが寝坊した

佐伯莉央

昨日遅かったの?

お父さん

うーん、ちょっとね

佐伯莉央

……早く行くよ!

お父さん

ちょっと待ってー

お父さんはいつもバタバタしている

チーン チーン

今日もお母さんの仏壇に手を合わせる

佐伯莉央

行ってきます、お母さん

お父さん

行ってきます

ガチャ

佐伯莉央

鍵は?

お父さん

あるある……おけい!

佐伯莉央

じゃあね

お父さん

気をつけてな

佐伯莉央

うん

心配症だけど、私が困っている時は必ず助けてくれる

自慢のお父さんだ

歩いていると、後ろから声をかけられた

坂口狂

莉央ちゃん!おはよう

佐伯莉央

おはようございます、坂口くん

まずおかしいと思ったことがある

佐伯莉央

今日、西森くんは一緒じゃないんですか?

坂口狂

あいつはねー、のんびりなやつなんだよ

坂口狂

今頃焦ってると思うよー

そんなこととは知らず、西森くんは、今でもぐっすり眠っていた

坂口狂

それよりー

坂口狂

話があるんだ

佐伯莉央

なんですか?

坂口狂

莉央ちゃんに協力して貰いたいんだけど

内容はわからなかったけど、協力してあげたいと思った

佐伯莉央

私に出来る事だったら

坂口狂

よかった。あのー俺、実はさ、
美奈のことが好きなんだよね

佐伯莉央

あ、私も好きですよ

佐伯莉央

母親が看護師で女性に関するものを毎日持ち歩いているところや、いつもお姉さんみたいなところや、泣く時はいつもお上品に泣くところなどなど―

坂口狂

そうじゃなくてー、
恋愛対象として

佐伯莉央

れ、れれれれ、れ、恋愛、、た、たい、しょ、う?

坂口狂

そんなに驚くかな?

佐伯莉央

い、いえ、私はあまり、男の人から恋の相談を聞いたことがなかったので

やっぱり、私はダメだ…

坂口狂

誰だって驚くことはあるよ

坂口狂

俺だって最初は驚いたんだから

佐伯莉央

驚くんですか?

坂口狂

うん、友達だと思ってたけど、話してる間に、だんだん違う感情が湧いて。もう、男と話してる時なんか、抑えられなくなるぐらい、あいつのこと、守ってやりたいって思った

ドキドキした

無性に応援したくなった

佐伯莉央

応援します!私、坂口くんと八代さんの恋。だから、絶対叶えましょうね!

坂口狂

莉央ちゃん、ありがとう!

初めて知った

こんなドキドキ、いつぶりだろう?

人と関わっていくうちに生まれてくる感情

いつもとは違う

法則や筆算では出ないその答えは

人と関わるから生まれるもの

恋という文字は、色んな形で現れる

愛にだって、形がない

言葉では簡単だけど

表すことなんてできないものだった

坂口狂

オッはよー!

麻生先生

びっくりしたー

佐伯莉央

おはようございます

麻生先生

なんだよ、2人して挨拶なんて、なんかあったのか?

坂口狂

実はさ―

ガシャン!

いきなり机が飛ばされてきた

坂口狂

危ないじゃねーか!

不良A

…はぁはぁ

佐伯莉央

あなた、この前の?!

麻生先生

何してるんですか?!

不良A

うるせぇーなー、コノヤロー!

麻生先生

ここは学校ですよ?!生徒に被害があったらどう責任取るんですか?!

不良A

あんた、センコーか?調子狂うなー。センコーは黙って寝てろ!

ガシャン!

麻生先生

ヴっ

先生が飛ばされた

その表示に少し気絶した様子だった

佐伯莉央

麻生先生!

坂口狂

先生!

不良A

おい、見たか?

不良A

俺はここまで強くなったんだよ!お前に会うまでに

佐伯莉央

私なにかしましたか?

不良A

るせぇ!俺はな、俺に恥かかせたアンタが憎くて憎くてしょうがねーんだよ!

坂口狂

んな事知るかよ

不良A

あ?!

ボソッと言った坂口くんだったけど、不良Aには聞こえていたようだった

佐伯莉央

暴力は良くないです。自分のことも気づつけることになってしまうんですよ?それでもいいんですか?

不良A

俺には、そんなことなんでもねーよ

佐伯莉央

……そうですか

不良A

あー、ウザイ!お前、友達一人もいねーだろ?いっつもいっつも敬語で成績だけって、チョーシ狂うガリ勉ヤローなんだろ?

坂口狂

おい!莉央ちゃんの事何も知らないくせにエラソーな事言ってんじゃねーよ!

そう言って坂口くんは不良Aにどついた。でも、不良Aはビクともしなかった

不良A

ふっ、こんなガキが

ガシャン!

佐伯莉央

坂口くん!

坂口狂

いっ

不良A

はっはっはっ。弱ー。そんな奴が、人生損するんだよ。ハッハッハ

不良Aはまた、坂口くんに近づこうとしていた

バンッ

教室のドアが開いた

八代美奈

なんの騒ぎ?

西森葵

狂!

不良A

動くんじゃねーよ。動いたらこいつ、どーなるかなー

西森葵

莉央?!

八代美奈

莉央ちゃん!

私は不良Aに首を絞められていた

坂口狂

離せよ!

佐伯莉央

だめ!ダメだよ、いっ、坂口くん、ありがとうっ、ございます。わた、っ私をっ、守ってっくれって。

不良A

あ、こいつ殺したらつまんねーな

不良A

お前、

不良Aが手を離した

そして指を刺された先は坂口くんだった

坂口狂

?!なんだよ!

不良A

吹っ飛ばされてからでも遅くねーだろ?

佐伯莉央

だめ!

私はとっさに坂口くんを抱きしめて守った

佐伯莉央

辞めてください!

不良A

は?

佐伯莉央

初めて、グスン、初めて信じてくれるって言ってくれた友達なんです。グスン、だから、私の友達に手を出したら、あなたどうなるかわかりませんよ?

坂口狂

…莉央ちゃん

八代美奈

莉央ちゃん!

不良A

青春ごっこはあの世で楽しめ!

西森葵

莉央!

ボンッ

目を開けると麻生先生が目の前にいた

麻生先生

俺の生徒に手を出すんじゃないよ

プオーン

外からパトカーの音がした

警察A

動くな!

不良A

なんだよ!なんでサツがいんだよ!

警察C

じたばたするな!

警察C

午前7:15器物損害又は未成年者暴行、不法侵入の容疑で逮捕する

警察B

ご協力感謝します

麻生先生

いえ、犯人が転がしてくれたので逆に良かったですよ

坂口くんが言った

坂口狂

ありがとう

佐伯莉央

グスン、ふぇ、えぇーん、うぇーん

西森葵

?!お前急に泣くなよー

八代美奈

でも、無事でよかったよ

坂口狂

ほんとに可愛いなー

西森葵

何言ってんだよ

佐伯莉央

ありがとう、うぇ、ございました。グスン、うぇーん

麻生先生

おーい、大丈夫か?

八代美奈

先生見ちゃダメですよー

八代美奈

女子の泣き顔は禁句なんです

麻生先生

最近の女子高生はわからん!

警察B

……

佐伯莉央

私、みんなと友達になれて良かったです、ふぇ、うぇーん

私のことを理解してくれる

私のことを受けいれてくれる

私のことを信じてくれる

私のことを助けようとしてくれる

私のことを喜ばそうとしてくれる

私のことを

好きでいてくれる

そんなみんながいるから、

最近の私は学校が土日もあればいいのにって思っている

みんなと一緒にいる時間が少しでも長く続く永遠のものになって欲しい

今朝のことは全体でも話があった

麻生先生

えーっと、今朝、みんなも噂があるように、この学校に不審者が現れた。でも、怪我人もいなく、不審者は捕まったから安心して。それじゃあ、本日の日程は―

そのあとは?

不審者は釈放されてない?

不審者はもう本当に居ない?

肝心なことは何も言ってくれないんだ

昼休み

屋上でお弁当を食べる

坂口狂

それよりー、朝はビビったよなー

佐伯莉央

っ!

西森葵

八代美奈

その話やめ!莉央ちゃん、食べよう

佐伯莉央

八代美奈

莉央ちゃん?

佐伯莉央

あ、はい!食べましょう!

怖かった

確かに、怖くて怖くてたまらなかった

西森葵

莉央

佐伯莉央

?!ん?

西森葵

来て

佐伯莉央

は、はい

葵はみんなより離れた場所に私の腕を引っ張った

そして小声で言った

西森葵

あんま無理すんなよ

佐伯莉央

え?

西森葵

お前、震えてた

西森葵

飛ばされそうになった狂を抱きしめた時、手がちょっとだけ震えてた

西森葵

無理して笑うともっと辛くなる

西森葵

だからやめろ

ちゃんと見ててくれたんだ。西森くん

佐伯莉央

あ、ありがとうございます

西森葵

…そんだけ

佐伯莉央

あ、はい

さり気ない会話の中に、気持ちが伝わってきた

嬉しかった

ガチャ

その時ドアが開いた

麻生先生

佐伯ー。お、いた

佐伯莉央

なんですか?

麻生先生

さえ、お前、どうした?ちょっと顔赤いぞ?熱でもあるのか?

先生はそう言って私のおでこに触った

西森葵

っ!

坂口狂

熱あるの?莉央ちゃん

八代美奈

莉央ちゃん、熱さまシートあるよ。いる?

佐伯莉央

い、いえ、大丈夫です

佐伯莉央

私、結構あるんです

坂口狂

そうなんだー

八代美奈

良かったー

西森葵

…何しに来たんですか?

先生は忘れていたようだった

麻生先生

あ、そうそう、今朝のことなんだけど

また内緒話のようにみんなとの距離を置いて話した

麻生先生

今日の放課後、警察の人が今まであったことについて話を聞きたいそうだぞ。会議室であるんだけど、どうする?お父さんも来るんだけど。お前が安心できる人を連れて行ってもいいんだぞ?

安心できる人…

佐伯莉央

じゃあ、八代さんにお願いしときます

麻生先生

分かった

話が終わったあと先生はみんなのところに行き、

麻生先生

そんじゃー、今の青春をめいいっぱい楽しめ!少年少女たちー

と言って屋上から出ていった

私がみんなのところに戻ると八代さんはすぐに聞いてきた

八代美奈

なんの話しだったの?

佐伯莉央

…八代さん、放課後ちょっとだけ時間貰ってもいいですか?

八代美奈

いいけど、なんで?

佐伯莉央

来たら分かります

八代美奈

…え?

八代美奈

分かった

八代さんが少し怖そうな顔をしたけど

大丈夫そうだったからみんなの話に戻った

でも、この時の私は気づいていなかった

八代さんは大丈夫そうでは片付けられない何かを抱えていたことに

放課後、私たちは会議室に行った

コンコン

佐伯莉央

失礼します

八代美奈

し、失礼します

ガラガラ

会議室の中にはお父さんと女の警察の人がいた

お父さんはまっさきに私に抱きついてきた

お父さん

莉央ー!大丈夫だったか?!心配したぞー。父さん、資料全部ばらまいてきちゃったから、明日になったら仕事クビになってるかも知んないけど、安心したよー

佐伯莉央

安心できないよ

ちょっとだけ面白おかしい話を八代さんは隣でキョトンと聞いていた

八代美奈

時間貰っていいってこの事?

佐伯莉央

…はい。警察の人が今まであったことを聞きたいと先生から聞いたので、八代さんに隣にいて欲しかったんです

八代美奈

そうだったんだ

佐伯莉央

すみません、時間貰っちゃって

八代美奈

ううん、どうせ今日もお母さんの仕事の話ばっかだから

佐伯莉央

すみません、親子水入らずに

八代美奈

いいのいいの

お父さん

君は、

お父さんが八代さんを見て言った

お父さん

莉央の、友達かい?

八代美奈

あ、えっと

佐伯莉央

そうだよ

八代美奈

え?

佐伯莉央

私の友達なの、ね

八代美奈

…はい!そうです!

八代さんがそう言うとお父さんは勢いよく頭を下げた

佐伯莉央

え、お父さん?!

お父さん

莉央の事、よろしくお願いします!

佐伯莉央

お父さん

お父さん

莉央、中学の時に色々あって大変な思いして、人と関わることから避けてたけど、莉央、いい子なんです。だから今後ともどうぞ莉央をよろしくお願いします!

八代美奈

はい!任されました!

2人してちょっと恥ずかしかった

でも

嬉しいが大きかった

ガラガラ

ドアが開いた

麻生先生

遅れてすみません!

お父さん

?!

麻生先生

?!

お父さん

カズ?

麻生先生

イチ?

お父さん

ひさっしぶりー!

麻生先生

久しぶりだなー

はい?

お父さん

いつぶり?

麻生先生

成人式以来だよな?

お父さん

もうそんなかー、変わんないな

麻生先生

イチこそ変わってないぞー

話が進まないようと腕時計をチラチラと見る女警察官をみて私は言った

佐伯莉央

感動の再開中失礼ですが、今ここに集まった理由は、警察の方が今まであったことについてお話したいとおっしゃったからです。それなのに、こんなことをしていたら話しが進みませんよ?

二人は反省したように「すみません」と言って、席に着いた

私と八代さんも席に着いた

警察B

お忙しい時間、このような場を撮って頂きありがとうございます

警察B

まず、莉央ちゃん

佐伯莉央

はい

警察B

最初に不良Aに出会ったのはいつですか?

佐伯莉央

…えっと、今週の火曜日です

警察B

それは、どこでですか?

佐伯莉央

コンビニです

佐伯莉央

マーカーが切れていたことを
思い出して
お会計する時にぶつかってしまって、暴力を振られそうになりました。
でもそれを、同級生の男の子が防いでくれました

八代美奈

その時、私もいました。確かに、私の友達が莉央ちゃんを助けました

警察B

そうですか。その勇気には称えますが、大人の男性は何をするかわかりません。自分ではわかっていても、防げないことだってあります。助けることは決して悪いことではありませんが、自分の身を守ることも大事です。これからは気をつけましょう

八代美奈

はい

八代さんがした訳では無いのに、八代さんが注意されてしまったことにちょっとむっとなってしまった

警察B

他に何かありませんか?

佐伯莉央

…あ、駅前のスーパーに行く途中、車に入れられそうになりました。その時は通りかかった男の人に助けてもらいました

警察B

それはいつの事ですか?

佐伯莉央

今週の木曜日です

お父さん

え?!

いきなりお父さんが立ち上がった

佐伯莉央

どうしたの?

お父さん

俺が残業してる時に、お前はそんな目に遭ってたのか…グスン

佐伯莉央

大丈夫だよ!私今ここに座ってるし

お父さん

その人にお礼しなきゃだな

佐伯莉央

もう私がしたから大丈夫だよ!

お父さん

そうか

麻生先生

親バカだな

お父さん

悪いか?!

麻生先生

怒んなよっ

お父さんが座ったあと、警察の人が続けた

警察B

他にありませんか?

佐伯莉央

あとは、今日あったことだけです

警察B

そうですか。ありがとうございました

佐伯莉央

いえ、ありがとうございます。助けていただいて

警察B

それが仕事ですから

警察の人が私に近づいてきて言った

警察B

もし、あなたの心に深い傷を残してしまったら本当にすみません

佐伯莉央

どうして謝るんですか?

警察B

…警察官は、人を守ることは出来ても、人の心に覆った傷を癒すことは出来ない。だからです。でも、いつか、今まで起きたことが不幸なら、あなたにはいつか、とびきりの幸福が訪れるはずです

お父さん

うふっ、ありがとう、グスン、ございます。うふ、うわーん

佐伯莉央

お父さんがないてどーすんの!

麻生先生

変わってないなー

八代美奈

そっくりな親子

そんな会話が続いた

人と関わることで

意味を知ることが出来る

その人の本当の姿が見たいなら

知ればいい

話す、聞く、見る、考える

そうやって、初めて、友達と呼べるような仲間ができる

今日は変なメンバーで帰ることになった

お父さん

いやー、久々に歩いて帰るなー

お父さんと

麻生先生

いつぶり?

麻生先生と

八代美奈

そんなにですか?もう、帰ったら足パンパですね

八代さんと

佐伯莉央

久しぶりに会えたんだから今日、家きますか?

私で

お父さん

そーだよ!

麻生先生

いやいいよ

お父さん

遠慮すんなってー

八代美奈

じゃあ、莉央ちゃん、うち泊まる?

佐伯莉央

え?!

お父さん

いいぞー、でも、夜更かしするなよー

佐伯莉央

うん!わかった!

八代美奈

お母さんに電話しとくね

佐伯莉央

はい!

こうして、八代さんの家に泊まることになった

明日は土曜日だからだいじょぶだいじょぶだった

お泊まりする道具を取りに家に戻った

佐伯莉央

座って待っててください

八代美奈

うん

お父さん

ちょっとまっててね

八代美奈

はい

麻生先生

結構広いなー

お父さん

これでもギリギリっすよー

麻生先生

ふーん

お父さんたちがそんな会話をしている時、私はすぐに準備をした

歯ブラシ、パジャマ、遊び道具、タオルなど

久しぶりのお泊まりだったから楽しみだった

佐伯莉央

準備終わりました!

八代美奈

よし、行こう

佐伯莉央

はい

お父さん

気をつけていくんだよ

麻生先生

夜更かしするんじゃないぞ

佐伯莉央

お互い様に

佐伯莉央

いってきます

お父さん

いってらっしゃい

ガチャ

バタン

麻生先生

早いなー

麻生先生

あれからもう一年経つのかー

お父さん

大きくなったよな

麻生先生

なあ、イチ

お父さん

麻生先生

俺、お前に話してないことがあるんだ

お父さん

あー、俺もだよ

麻生先生

麻生先生

お前に言ったら、縁切られると思って言えなかったんだけど

お父さん

うん

麻生先生

俺、お前の奥さんと

お父さん

麻生先生

不倫してたんだ

お父さん

…え?

ガチャ

八代美奈

ただいま

八代茂

おかえり

八代さんのお母さんが私を見て言った

八代茂

友達?

佐伯莉央

はい!えっと、佐伯莉央と申します。本日はお泊まりさせて頂きますので―

そう言うと八代さんのお母さんは私の手を握った

八代茂

あなたが、莉央ちゃんねー

佐伯莉央

はい?

八代茂

ずっと気になってたのよー

八代茂

美奈もー、ほらー、ちょっと引いちゃう部分があるからー、心配でー

八代美奈

やめてよお母さん、行こ、莉央ちゃん

佐伯莉央

はい、失礼します

八代茂

ごゆっくりー

八代美奈

ごめん

八代さんの部屋に着いた途端言われた

佐伯莉央

どうして謝るんですか?

八代美奈

うちのお母さん、ちょっと変なとこあるから

佐伯莉央

いえ、いいお母さんだと思います

八代美奈

…お風呂入る?

佐伯莉央

はい

お風呂に入って、上がって

ご飯を食べさせてもらった

寝る時は宿題をほったらかしにし、すぐに寝ながら恋バナを始める

これは、女子のお約束

八代美奈

ねぇ

佐伯莉央

なんですか?

八代美奈

莉央ちゃんのお母さんってどんな人?

佐伯莉央

……どうだったんでしょう

八代美奈

…うちらお母さん同士で色々あるんだね

佐伯莉央

八代さんもあるんですか?

私が聞くと八代さんはしばらく経ってから言った

八代美奈

うち、再婚してるの。お父さん、前にちょっと浮気されちゃって、離婚して、再婚したの。それが今のお母さん。やりにくい訳では無いけど、今は、楽しくやってるよ

佐伯莉央

そうですか

八代美奈

でも時々、話が合わなくなると怖くなる。前のお母さんみたいに私の事捨てるのかなって

佐伯莉央

八代美奈

前に、コンビニで聞いたよね。なんで3人1緒にいるのかって

佐伯莉央

はい

八代美奈

私を見棄てない人達だからだよ。自分勝手みたいだけど、私は、葵達と一緒にいれて本当に幸せ

佐伯莉央

…そうだったんですね

つまり、八代さんは捨てられることが嫌だということだ

やっとできた友達に、悲しい思いをさせたくない

そう思った私は

佐伯莉央

…見捨てませんよ、私も

八代美奈

え?

佐伯莉央

みんな八代さんのことが好きですし、私も

佐伯莉央

八代さんのことが大好きです

八代美奈

う、莉央ちゃん

八代美奈

グスン、うわーん

佐伯莉央

八代さん?!すみません、泣かせるつもり無かったんですけど

バタバタバタ

ガチャ

八代茂

美奈!どうしたの?泣いてるの?ティ、ティッシュ!ティッシュ!

そうして、3人でちょっとだけ笑いあった

人は人を好きになる

好きにさせてくれる

それは恋愛だけじゃなく

友達にも家族にもある感情

好きって言ってくれてありがとう

好きにさせてくれてありがとう

目が覚めた

友達の家に泊まると目覚めが早くなる

誰にでもある事だった

でも今日は、八代さんの方が早かった

八代美奈

莉央ちゃん、おはよう

佐伯莉央

お、おはようございます

佐伯莉央

まだ6時ですよ?

佐伯莉央

こんな早くから起きてるんですか?

八代美奈

ん?女子には色々あるんだよ

佐伯莉央

…そうですか

八代美奈

凄いね、莉央ちゃん

佐伯莉央

何がですか?

八代美奈

何もしないで髪がストレート。女子が羨ましがるキャラだね

佐伯莉央

そうですか?

佐伯莉央

私は嫌いですけど

八代美奈

え?

佐伯莉央

この髪は、お母さんに似てギシギシしてるんです。だから、少し嫌いです

八代美奈

…そうなんだ

ちょっと気まずくなった空気を元に戻したくて言った

佐伯莉央

私は、自分の髪より、八代さんの髪が好きです

八代美奈

え?

佐伯莉央

もう、交換して欲しいぐらいですよ

八代美奈

っ……

八代さんの様子がおかしい

そう思った時部屋のドアが鳴った

コンコンコン

八代茂

入るよー

ガチャ

八代茂

おはようー

佐伯莉央

おはようございます

八代茂

今日午後どうするの?

八代美奈

どうしよっか

佐伯莉央

あ、私、午後は用事が

八代美奈

そっか、じゃあ、ご飯食べよ

八代茂

はーい

ご飯を食べさせてもらい、歯磨きをして顔を洗い、服を着替えた

佐伯莉央

ありがとうございました

八代茂

また遊びにおいでね

佐伯莉央

はい、じゃあ、また

八代美奈

バイバイ…

バタン

ガチャ

佐伯莉央

ただいまー

麻生先生

おかえり

佐伯莉央

?!

佐伯莉央

まだ居たんですか?

麻生先生

教師に向かって失礼だろ?

佐伯莉央

今は教師ではないじゃないですか

麻生先生

…そうだよ

麻生先生

俺は、教師じゃないな

佐伯莉央

麻生先生の様子がちょっとおかしかったから、私は部屋に行き、喫茶店に行く準備をして戻ってきた

玄関で靴を履いていると先生に言われた

麻生先生

おい、佐伯

佐伯莉央

なんですか?

麻生先生

お母さんに似て綺麗になったな

佐伯莉央

…え?

佐伯莉央

先生…もしかして、母のことを知ってるんですか?

麻生先生

麻生先生

同級生なら当たり前だろ?

佐伯莉央

…そうですよね

佐伯莉央

じゃあ、父のことよろしくお願いします

麻生先生

おう

ガチャ

バタン

麻生先生

…はぁー

お父さん

言うんじゃなかったのかよ

麻生先生

言うって決めてたんだけどな

麻生先生

お前といる方が楽しそうだってのに、お前はほんとに莉央が好きだな

お父さん

当たり前だろ!これでも、父親だ。本当は、違うんだろうけど

麻生先生

ああ。莉央の父親は俺だからな

お父さん

…そうだな

喫茶店に行くと、響鬼さんがいた

西森響鬼

莉央ちゃん、こっちこっち

そう言いながら手を振っていた

私は近寄り、席に着いた

店員さん

いらっしゃいませ。ご注文は?

西森響鬼

パンケーキ1つとコーヒー1つとジュースは何がいい?

佐伯莉央

オレンジでお願いします

西森響鬼

じゃあ、オレンジで

店員さん

かしこまりました

注文したものが届くまで、ずっと黙って待っていた

5分ぐらい経ち、注文したものが届いた

店員さん

ごゆっくりどうぞ

西森響鬼

ありがとうございます

パンケーキを1口、2口食べると、はちみつの甘い味が口の中に広がってすごく美味しかった

響鬼さんはその様子を小さな幼い子供を見るような目で見ていた

ちょうど目が合ったから、私は聞いてみた

佐伯莉央

あの、どうして私は今日呼ばれたんでしょうか?

西森響鬼

…なんでだと思う?

佐伯莉央

佐伯莉央

分かりません

西森響鬼

まあ、そりゃそうだね

響鬼さんはコーヒーを一口飲んで私に言った

西森響鬼

葵と一緒にいるってことは、彼女も一緒?

佐伯莉央

…彼女とは、一体誰ですか?

西森響鬼

西森響鬼

八代美奈

西森響鬼

一緒なんだよね?

佐伯莉央

はい、そうですけど

西森響鬼

どういう関係?

佐伯莉央

はい?

西森響鬼

美奈のことどう思ってるの?

西森響鬼

どうして、美奈と一緒にいるの?

佐伯莉央

…響鬼さんは、八代さんのなんなんですか?

西森響鬼

先輩だよ。
俺の質問に答えてくれるかな?

佐伯莉央

佐伯莉央

話すのは長くなるかもしれないですが、よろしいですか?

西森響鬼

うん、いいよ

持っていたナイフとフォークを置いて、考えた

頭の中にたくさんの八代さんが浮かんだ

佐伯莉央

私は、中学の時、いじめにあっていました

西森響鬼

……

佐伯莉央

それがきっかけで人と関わらないように生きていこうと思いました。でも、人間って人と関わらない人生なんてないんだなと思いました

佐伯莉央

そう思うようになったのは、八代さん達と出会ってからです

佐伯莉央

私が今まで経験した人達とは違い、八代さんも西森くんも坂口くんも私のことを信じると言ってくれました

佐伯莉央

だから、今度は私がみんなを信じようと思いました

佐伯莉央

話は別なんですけど

佐伯莉央

私が八代さんと一緒にいたいと思う理由は、

佐伯莉央

まだ何も知らないからです

西森響鬼

…何も?

佐伯莉央

はい、だから、知りたくなるんです

佐伯莉央

人間は変な生き物です。興味を持っていなかったものに興味が湧くのは、人間の特徴的本能だと思います

佐伯莉央

これが私の八代さんをどう思っているかの理由です

西森響鬼

…なるほど。じゃあ、美奈の事、どう思ってる?

佐伯莉央

……

佐伯莉央

よく分かりません

佐伯莉央

でも、これだけは言えます

佐伯莉央

私は、八代さんのことがとっても大好きだということです

西森響鬼

西森響鬼

莉央ちゃん、それは間違いだよ

佐伯莉央

…え?

西森響鬼

君は、美奈を甘く見すぎてる

先輩は立ち上がり、急いで店を出た

響鬼さんが向かった先は、八代さんの家だった

ピンポーン ピンポーン

八代茂

はいはーい

ガチャ

八代茂

あら、莉央ちゃん

西森響鬼

すみません、美奈いませんか?

八代茂

響鬼くん、さっきでてったわよ。なんか、行きたい場所があるって言ってたけど

西森響鬼

分かりました、ありがとうございます!

八代茂

あ、ちょっと―

バタン

人の話を聞かずに出ていくのは少し申し訳なかった

それより、響鬼さんはどこへ行こうとしているのか、未だにわからなかった

響鬼さんが次に向かった先は海辺だった

西森響鬼

美奈ー!美奈!

佐伯莉央

響鬼さん!何してるんですか?!

西森響鬼

美奈探さないと!早く!

西森響鬼

美奈ー!

突然だって

ひょっこりと八代さんは出てきた

八代美奈

なんですか?!先輩!

西森響鬼

美奈…

佐伯莉央

何してるんですか?!八代さん!

八代さんは崖の上の方に座っていた

私が近づこうとすると八代さんは大声を上げた

八代美奈

来ないで!

佐伯莉央

っ!…え?

八代美奈

怖いの…

ちょっと間があってから八代さんが話した

八代美奈

私も中学の時、いじめにあってたの

佐伯莉央

…え?!

八代美奈

すっごく怖かった。買ったばっかりのシューズや買ったばっかりのノート、買ったばっかりのバッグに、買ってもらったばっかりの体操服。全部全部なくなっちゃった

八代美奈

グスン、あたし、、ずっとずっと怖かった

佐伯莉央

…分かります

八代美奈

八代美奈

みんなが私のことを嫌って、菌扱いされて、すっごく気づ付いた

佐伯莉央

……

西森響鬼

美奈、もういいよ、降りよう?

佐伯莉央

辞めてください

西森響鬼

何言ってんだよ、危ねーだろ!

佐伯莉央

私は、八代さんの話が聞きたいんです

私は八代さんの顔を見て言った

佐伯莉央

八代さん、話してください。私は…あなたの味方です

八代美奈

…髪取らない?

佐伯莉央

え?

八代美奈

私のこと嫌いにならない?

佐伯莉央

…なりませんよ。どうしてそう思うんですか?

八代美奈

…私、辛いの。人の言葉を聞くと、全部私のせいなんじゃないか、私のことなんじゃないかって思う

八代美奈

怖いの、人が

佐伯莉央

…じゃあ、どうして私と友達になろうって言ったんですか?

八代さんは呼吸を落ち着かせてから言った

八代美奈

莉央ちゃんと私の思い出が一緒だから

八代美奈

同じ人間がいれば、怖いものがなくなると思ったの

八代美奈

ごめんなさい、私、自分で勝手に一緒だなんて思い込んじゃって。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい

何度も何度も謝られた

謝られすぎた

私は、八代さんを抱きしめた

佐伯莉央

八代さん

八代美奈

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい

佐伯莉央

私は、あなたの味方です

佐伯莉央

あなたがいてくれたから、今の私があるんです。どうしても、あなたが必要なんです

八代美奈

私が?

八代さんの顔を見る

涙が止まり、キョトンとしている

佐伯莉央

中学の時の思い出が私たちをこうして出会わせた

佐伯莉央

過去は変えられない

佐伯莉央

でも、未来は変えられる

佐伯莉央

どんなに辛いことがあってもこれからは、西森くんや坂口くん、私や響鬼さんだっている

佐伯莉央

だから、諦めないでください

佐伯莉央

佐伯莉央

私が、あなたの味方です

八代美奈

グスン、うわーん

八代さんも八代さんで、たくさんの傷があったんだ

そして私たちは、八代さんを家に送った

曲がり角

佐伯莉央

今日は、ありがとうございました

西森響鬼

いいや、疑って悪かったね

佐伯莉央

いえ、大丈夫です

西森響鬼

これからもよろしくね

西森響鬼

可愛い後輩さん

頭を撫でられた

初めて

佐伯莉央

…え?

西森響鬼

今日のお礼

佐伯莉央

え?え?

西森葵

兄貴

声がかかった

振り返ると西森くんがいた

西森葵

何してんだよ

頭を撫でている響鬼さんの手を西森くんが掴んで離した

西森葵

莉央に何ふきかけた?

西森響鬼

何もしてねーよ。今日はね

西森葵

はあー

佐伯莉央

西森くん、どうしたんですか?

西森葵

たまたま通り掛かった

佐伯莉央

そうですか

西森響鬼

じゃあ、あと送ってあげてね。よろしくー

そう言って手を振って帰って行ってしまった

西森葵

行くぞ

佐伯莉央

は、はい

なんだか、気まづい?

西森葵

兄貴と何してたんだ?

佐伯莉央

あ、パンケーキ屋さんに行っていたんです

西森葵

そうか。でも、美奈と約束してなかったか?

佐伯莉央

あ、その前に行っておこうと思って、話があったみたいですし

西森葵

…そうか

沈黙

息苦しい

西森くんといると緊張する

西森葵

お前さ、

プップー

車の音がした

気がつくと近くまで来ていた

西森葵

危ない!

佐伯莉央

わっ

その時、西森くんが私の左手を掴んだ

そしてギリギリ、難を逃れた

でも、さすがにこの状況はまずい

私と西森くんは見つめあっている

西森葵

…っ

佐伯莉央

…っ

この時私はまだ気づいていなかった

物語はもう

既に

始まっているということに

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