ジン
おいハツ、何やってるんだよ?もう結婚式始まるぞ
ハツ
ジン、ごめんなさい。あなたの元にはいけない
ハツ
私、カイとやり直す事にしたの
ジン
はあ?カイってあのカイ先輩か?
ハツ
うん。昨日カイから連絡がきてね、私とやり直して欲しいって
ジン
それで、カイ先輩とやり直す事にしたのか?
ハツ
そう。だから今日の結婚式はいけない、ごめんね。
ジン
ごめんなさいって、式場にはお前の両親も来てるんだぞ?お前の友人だって!
ハツ
ごめん、もう先輩と駆け落ちする事に決めたから。後はよろしくね
ジン
おいハツ、ハツ!
食事会後
カイ
ようジン。今の気分はどうだ?
ジン
カイ先輩。対応に追われて今はあしたのジョーみたく燃え尽きてますよ
カイ
そうだろうなあ……俺がハツと駆け落ちしたんだもんなあ
ジン
何で前日に連絡したんですか?
カイ
そりゃあ一度は好きになった女だからな。他の男と結婚すると知って惜しくなったのさ
ジン
それで、結婚式当日に駆け落ちしたんですか?
カイ
そうだ。お前はいい後輩だったが、それとこれとは別だ。ハツは渡さない
カイ
そうそう、俺今の会社も辞めるからな。後はよろしく。
ジン
辞めるって……先輩が担当している取引先とかの対応はどうするんですか?
カイ
ああ、それはお前に任せる。婚約者のハツをいただく代わりに仕事をやるんだから感謝しろよ
ジン
ちょっと待ってくださいよ!引継ぎとかは……
カイ
それもお前がやっとけよ。そういう訳でじゃあな
ジン
ちょっとカイ先輩?カイ先輩!
食事会後の夜
アイ
久しぶり。私の事覚えてるかな?
ジン
もしかしてアイさんかな?覚えてるよ
アイ
そうだよ。今日は大変だったね……ハツとは連絡も取れないし、まさかとは思ったけど
ジン
ああ、ありがとう。俺の両親と義両親に話して何とか食事会に変更して貰えたよ。
ジン
アイさんにも迷惑をかけたね。むしろ謝らなければならないのは俺の方だ
アイ
ジン君は悪くないよ。まさかよりにもよって結婚式当日にこんな事するなんて……
ジン
本当、俺も驚かされたよ。しかもよりにもよって相手がカイ先輩だったなんて……
アイ
私の方にも今日、カイから別れを告げるLINEが来ていたけど、まさかハツと復縁していたなんて……
ジン
え?アイさんカイ先輩と付き合ってたの?
アイ
うん、大学時代からね。と言ってももう別れるつもりではあったの
ジン
というと?
アイ
あの人、いつも私と元カノを比べていたんです。いつもハツと比較して、もううんざりだった
ジン
なるほどなあ……ハツから聞いたんだが、昨日カイ先輩から連絡が来たらしい
アイ
それなら全てが繋がるね。こっちは別れるつもりだったからいいけど、あなたは結婚だものね……
ジン
まあ、今となってはあんなのと結婚しなくてよかったとは思ってる
ジン
仮に結婚したところで、浮気されていたかもしれないし
アイ
お互い変な恋人に当たってしまっていたのね……でも、あの2人も長くは続かないと思う。
ジン
うん?どういう事?
アイ
それがね……
半年後
ハツ
久しぶり……ジン元気?
ジン
ああ、ハツか。今更なんだよ?
ハツ
いや、元気にしてるかなって
ジン
俺なら元気だよ。お前に心配されるまでもなくな。
ハツ
そんな喧嘩腰にならなくてもいいじゃん。半年ぶりに話すんだからさ
ジン
喧嘩腰?お前俺に何したか忘れた訳じゃないよな?結婚式当日、お前は俺よりカイ先輩を選んだだろ?
ジン
そんな相手に優しく答える義理はないだろ
ハツ
あの時は本当にごめんなさい。謝っても済まない事なのは分かってる。でも私の話も聞いて
ジン
話の内容はある程度察しがついてるよ。でも確認も兼ねて一応聞いてやる
ハツ
ありがとう。単刀直入に言うけど、私とやり直して欲しいの
ジン
はあ?お前どうかしてるんじゃないのか?何で結婚式に元カレを選んだ奴と復縁しなきゃなんだよ
ジン
まあ、知ってたけどな
ハツ
あれからカイと知らない街へ引っ越して、2人で暮らし始めたんだけど……
ハツ
カイ、全然働いてくれないの。毎日パチンコや競馬に行って、ずっとギャンブル三昧なのよ
ジン
ああ、カイ先輩ギャンブル好きだもんなあ……
ハツ
これがせめて働いてくれてるんならまだいいけど、働かないから私の貯金が減る一方だし
ハツ
もうこんな生活限界なの。あなたと付き合っていた頃が凄い幸せだった
ジン
そうか
ハツ
だから、カイとは別れるからあなたとやり直したいの。今までの償いも含めてね
ジン
お前の話は、よく分かった。
ハツ
なら、やり直してくれる?
ジン
だが断る。なぜなら結婚式当日に元カレと駆け落ちするような奴とやり直す気にはなれないからだ
ハツ
どうして?私こんなに困ってるんだよ?あの時は本当に気の迷いで、マリッジブルーになってたの
ジン
いやいくらマリッジブルーでも元カレと復縁するなんて発想にはならないでしょ
ジン
それにそんな気の迷いで行動を起こす奴の言う事なんて信用できないね。それも気の迷いじゃないのか?
ハツ
そんな事ない!一度は婚約した仲でしょ?
ジン
その一度は婚約した仲を壊したのはお前だろ?それに俺は婚約前に再三確認したよな
ジン
本当に俺と婚約していいのかって。考える時間は十分にあったぞ
ハツ
それはそうだけど、それでも人間なんだから間違いだってあるよ!
ジン
そりゃ間違いはあるだろうさ。だけど取り返しのつかない間違いもあるという事は覚えておいた方がいい
ジン
それに……
ジン
俺もうアイさんと付き合ってるんだわ
ハツ
は?アイって私の親友の?
ジン
そう。お前の元親友のアイさんだよ。もう向こうはお前の事親友だなんて思ってないけどな
ジン
という訳で、お前とやり直す気はないんだわ
ハツ
何で……何でよりにもよってアイとなのよ!
ジン
結婚式がダメになった後、アイさんから連絡が来てさ。それで度々会うようになったんだよ
ジン
アイさんから聞いた話じゃ、カイ先輩はアイさんと付き合っていたらしいじゃん。
ジン
お前、俺だけじゃなくて自分の親友の事も裏切ったんだな
ハツ
……酷い
ジン
は?
ハツ
酷い酷い酷い酷い!アイより私の方がずっと綺麗で可愛いのに!
ジン
やっぱりな。それがお前の本心だろ
ジン
アイさんから聞いた通りだな。本人はずっと気づいていたらしいぜ
ハツ
だって、カイとは高校時代に私が付き合っていたんだもの!それが私と別れた後に……
ジン
で、アイさんと付き合っていたと。それなら話が繋がるな
ハツ
しかもアイツ、私が働いてって言ってもずっとアイと比較してばっかり!
ハツ
アイはそんな事言わなかった―とか!
ジン
やれやれ、お前もお前だが、カイ先輩もカイ先輩だな
ジン
アイさんと付き合っている時はお前がよかったと言い、お前と駆け落ちすればアイさんがよかったといい
ハツ
そう!最低でしょ!お願いジン、あいつから私を救い出して!
ジン
何悲劇のヒロイン気取ってるんだよ。先輩を選んだのはお前だろうが
ハツ
それは騙されたの!お願いやり直して!
ジン
だから無理だって言ってるんじゃん。何でアイさんにオレと同じ思いをさせなきゃなんだよ
ハツ
そんな!私たち一度は愛し合った仲じゃん!もう私の事好きじゃないの?
ジン
いや待て待て、駆け落ちしておいてまだ自分の事が好きなはずだって自信はどこからくるんだ?
ジン
悲劇のヒロイン通り越して頭フラワーパラダイスか?
ハツ
酷い!そこまで言わなくたって……
ジン
それにお前、何か忘れてないか?
ハツ
え?
ジン
婚約している段階までいくと、破棄した場合慰謝料が発生するんだぞ。とりあえず100万請求する
ハツ
そんな、慰謝料100万なんて払えない!
ジン
LINE見返せよ。俺は別に払えるか払えないかなんて聞いていない。請求すると言ったんだ
ハツ
だってもう貯金も底をついてるし……今のバイトじゃとても……
ジン
ああ、後ついでに結婚式の費用も請求するからな。お前が駆け落ちしたせいでなしになったんだから
ハツ
そんな、元婚約者に対してあまりにも酷すぎない?
ジン
駆け落ちしたお前はひどくないのかよ?もうブロックするからな。後は弁護士を通じてのやり取りになる
ジン
それじゃ、じゃあな。もう二度と会う事はないだろうが
1時間後
カイ
ようジン、久しぶりだな
ジン
今度は先輩ですか。今更何の用ですか?
カイ
いや、ちょっとお前に頼みがあってな……
ジン
はあ……何ですか?
カイ
アイと連絡を取りたいんだが、お前知らないか?
ジン
何でアイさんと?
カイ
実はさ……ハツと別れようと思ってるんだ。それでアイとやり直す
ジン
先輩、寝言言ってます?今もう朝ですよ
カイ
もちろん、お前に悪い事をしたとは思ってる。その償いはきちんとするからよ
ジン
その償いならいりませんよ。オレ、もうアイさんと付き合ってますし
カイ
はあ?お前先輩の彼女を取ったのか!
ジン
いや、その前に俺の婚約者と駆け落ちしましたよね?それに……
ジン
アイさんから聞きましたけど、先輩ハツと1年前から関係持ってましたよね?
カイ
は、はあ?お前何言って……
ジン
アイさん、気づいていたみたいですよ。証拠のLINEや写真も見せて貰いました
カイ
く、それは……
ジン
という訳で、先輩にも慰謝料請求させてもらいますね。ちなみにアイさんに連絡しても無駄ですよ
カイ
な、何だと
ジン
アイさん、先輩とはもう別れるつもりだったようです。比較されて嫌気がさしていたようですよ
カイ
し、仕方ねえだろ!男はそういうもんなんだよ!童貞のお前には分からないだろうけどな!
ジン
ご安心下さい、分かろうとも思わないので
ジン
後、今後は弁護士を通じて連絡させていただきますので、そこのところよろしくお願いします
カイ
おいジン!待てよ!
ジン
それでは、ブロックしまーす
1時間後
アイ
ようやく、終わったね
ジン
ああ、2人から合わせて200万貰う事ができた。アイさんにも分けるよ
アイ
ううん、いらない。私とカイは付き合っていただけだし
ジン
そう?でもアイの協力があってこそだったし、何かプレゼントするよ
アイ
ありがとう。それならありがたく受け取るわ。
ジン
まさかお互いの恋人が浮気していたなんて……恥ずかしながら全く気付かなかった
アイ
私があの証拠を残していたのは別れるための切り札にするつもりだったからなの
アイ
相手がハツだと分かってからはジンにも教えようと思っていたけど
ジン
本当助かったよ。証拠がなきゃ慰謝料請求もできなかっただろうし
アイ
お役に立ててよかった。それにさ、今だからこそ言えるけど……
ジン
うん?何?
アイ
初めて会った時からさ、本当はジンに惹かれていたの。
アイ
その頃からカイと付き合っていたんだけど、比較されて限界だった事もあってね
アイ
勿論、ジンはその時マナと付き合っていた訳だからアプローチなんてできなかったけど
ジン
そうだったのか……俺もきっとマナの浮気が分かっていたら、すぐ別れていただろうな
アイ
だから正直、結果オーライなところもあるの。今こうして付き合えている訳だし
ジン
もし結婚する事になっても、今度はいなくならないでくれよ?
アイ
いなくなるわけないじゃん。私だってその辛さ味わったんだからさ……
後日談
ジン
その後俺たちは2年ほど付き合った後に結婚した。噂で聞いたところによると、
ジン
カイ先輩とハツは慰謝料の支払いのため、別れようにも別れられなくなっているらしい。
ジン
俺は結婚式の日に駆け落ちされたが、そのお陰でアイと出会う事ができた。
ジン
思えば、アイと結婚するために必要な事だったのかもな……。