テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件

翌日の放課後。
佐野
teacher
担任にプリントを渡される。
山中柔太郎
特に断る理由もないし、そのまま受け取った。
廊下を歩きながら、軽く目を通す。
……思ってたより枚数多いな。
適当に片手で持ちながら、角を曲がった、その瞬間——
ドンッ
山中柔太郎
誰かとぶつかった。
昨日と同じパターン。
ただ、今回は違った。
足がもつれて、そのまま体勢を崩す。
山中柔太郎
バサッ
プリントが一気に床に散らばる。
それと同時に、
グイッ
腕を引かれて、引き寄せられる感覚。
山中柔太郎
気づいた時には、 床に押し倒される形で止まっていた。
佐野勇斗
すぐ上から声が落ちてくる。
山中柔太郎
見上げると、やっぱり佐野勇斗。
昨日と同じ顔。
でも距離は——全然違う。
近い。
普通に近い。
山中柔太郎
佐野勇斗
そう言いながらも、すぐには動かない。
一瞬だけ、間があく。
その間に、
妙に視線が合う。
……
なんか言うわけでもなく、ただ数秒。
先に目を逸らしたのは、また俺だった。
山中柔太郎
わざと軽く言うと、
佐野勇斗
今度はちゃんと体を起こした。
そのまま手を差し出される。
少しだけ迷ってから、
山中柔太郎
短く言って、その手を取る。
引き上げられる感覚。
思ってたより、力が強い。
立ち上がると同時に、床に散らばったプリントが視界に入る。
山中柔太郎
しゃがみ込んで拾い始める。
すると、もう一つの手が同じように動いた。
無言で、同じ作業。
佐野勇斗
ぽつりと勇斗が言う。
山中柔太郎
適当に返す。
会話はそれだけ。
でも、不思議と気まずくはない
その時——
ガチャッ
廊下のドアが開く音。
吉田仁人
入ってきた声が、途中で止まる。
吉田仁人
顔を上げると、そこにいたのは吉田仁人。
そしてその視線が、
床にしゃがんでる俺と勇斗の“距離”で止まる。
吉田仁人
低い声。
別に怒ってるわけじゃないはずなのに、 空気が一気に変わる。
佐野勇斗
勇斗が淡々と答える。
吉田仁人
納得してない顔。
完全に。
吉田仁人
佐野勇斗
会話は普通。
なのに、仁人の視線が明らかに鋭い。
吉田仁人
一瞬だけ、俺に視線が向く。
品定めするみたいな目。
すぐに逸らされたけど、なんとなく分かる。
——面倒なタイプだな。
そう思って、最後の一枚を拾い上げる。
山中柔太郎
さっさとこの場から離れようと立ち上がる。
その瞬間、
吉田仁人
腕を掴まれた。
軽く。
でも、止めるには十分な力。
山中柔太郎
振り返ると、仁人がこっちを見てる。
吉田仁人
山中柔太郎
少しだけ間。
それから、ゆっくり口を開く。
吉田仁人
……ああ、そういう感じね。
山中柔太郎
正直に答える。
仲良くなった覚えはない。
山中柔太郎
それを聞いた瞬間、 ほんの一瞬だけ、仁人の眉が動いた。
吉田仁人
小さく笑う。
でも、全然笑ってない。
その空気を切るみたいに、
佐野勇斗
勇斗が短く言った。
掴まれてた腕が離れる。
吉田仁人
軽い声。
でもさっきより温度が低い。
山中柔太郎
それだけ言って、その場を離れる。
廊下を歩きながら、 さっきの空気を思い出す。
……なんか、めんどくさいことになりそう。
でも——
少しだけ、
ほんの少しだけ。
……
さっき、引き上げられた時の感覚が残ってる。
別に、大したことじゃない。
はずなのに。
#M!LK