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53
#クロスオーバー
紫蘭
4,192
今藤新⭐️
261
数日後。
あの日持ち帰ったドレスのカタログは、まだリビングのテーブルの上に置かれたままだった。
ページをめくっては閉じ、まためくる。 それでもまだ決められない。
松田深緒
ネイビー。 グリーン。 ベージュ。 淡いピンク。 どれも素敵だが決め手がない。
「これだ」と思える一着が見つからなかった。
ソファではハロが気持ち良さそうに丸くなっている。
窓から差し込む午後の日差しが、部屋の中を柔らかく照らしていた。
松田深緒
小さく呟いて、頬杖をつく。
もう一度カタログを開く。
数ページめくったところで、あくびが漏れた。
松田深緒
眠気に負け、深緒はそのまま机に突っ伏すように眠りについた。
ーーーーー
──ガチャ。
玄関の鍵が回る音がした。
ハロ
それを聞いて、ハロが勢いよく玄関へ走っていく。 深緒はその鳴き声でゆっくり目を開けた。
松田深緒
ぼんやりした頭のまま顔を上げる。 玄関の方から足音が近付いてきた。
松田深緒
降谷零
目が合う。
深緒は寝起きの頭で数秒止まったあと、小さく答えた。
松田深緒
寝起きの掠れた声だった。 降谷はリビングへ入りながら苦笑する。
降谷零
松田深緒
ハロは嬉しそうに尻尾を振りながら降谷の周りをぐるぐる回っている。
降谷はしゃがみ込み、その頭を優しく撫でた。
降谷零
その様子をぼんやり眺めていた深緒は、ふとテーブルのスマートフォンへ目を向ける。
画面には通知が2件。 送り主は降谷だった。
『今日は少し早く帰れそうです。』 『ケーキを買って帰ります。いちごとチーズ、どちらがいいですか?』
送信されたのは、30分ほど前。
松田深緒
松田深緒
降谷零
松田深緒
降谷は一瞬だけスマートフォンを見て、それから手に持っていた箱を少し持ち上げた。
降谷零
降谷零
松田深緒
深緒は思わず目を丸くした。
降谷が。
あまりにも穏やかに笑うから。
降谷零
降谷は2つのケーキを取り出し、テーブルへ並べる。
1つはいちごのショートケーキ。 もう1つはベイクドチーズケーキ。
松田深緒
降谷零
時刻は、15時半を指していた。 深緒は顎に手を当て考える。
そして降谷を見上げた。
松田深緒
降谷は思わず笑う。
降谷零
松田深緒
少しだけ不満そうに眉を寄せる。
そして、ふっと思いついたように目を見開いた。
松田深緒
降谷零
降谷零
降谷が吹き出す。
降谷零
ーーーーー
降谷零
深緒はショートケーキを半分に切り、降谷はチーズケーキを半分に切った。
それぞれ交換する。
松田深緒
降谷零
穏やかな時間だった。
ふと、降谷の視線がテーブルいっぱいに広げられたカタログへ向く。 何気なく1冊を手に取った。
降谷零
松田深緒
松田深緒
深緒も視線を向ける。
降谷零
松田深緒
松田深緒
降谷はページをめくる。
色とりどりのドレスが並ぶページ。 落ち着いたものから華やかなものまで、実に様々だった。
降谷零
松田深緒
深緒は苦笑しながら肩をすくめる。
降谷が小さく笑った。
松田深緒
不意にそう聞かれ、降谷はページへ目を落とす。
降谷零
しばらく見比べてから、静かに口を開いた。
降谷零
松田深緒
深緒はきょとんとする。
松田深緒
降谷零
深緒はもう一度カタログへ目を落とす。
降谷零
松田深緒
深緒は少し目を丸くした。
降谷零
松田深緒
カタログを閉じる。
松田深緒
ハロ
ハロが深緒の膝に飛び乗る。
松田深緒
松田深緒
降谷はちらりと時計を見た。
降谷零
松田深緒
松田深緒
降谷零
降谷零
ーーーーー
夕方のスーパーは、仕事帰りの客で賑わっていた。
降谷零
松田深緒
松田深緒
降谷零
しばらく考えてから答える。
降谷零
松田深緒
松田深緒
深緒は呆れたように笑う。
降谷零
松田深緒
降谷零
松田深緒
一瞬だけ。言葉に詰まる。
深緒は視線を逸らしながら小さく咳払いをした。
松田深緒
降谷零
松田深緒
降谷は少し目を丸くし、それから肩を揺らした。
降谷零
松田深緒
松田深緒
少し拗ねたような顔で歩き出す。
その時だった。
松田深緒
水産コーナーで足を止める。
降谷零
松田深緒
降谷零
松田深緒
指差した先には、大きなゆでダコがあった。
松田深緒
降谷零
松田深緒
降谷零
降谷はふっと笑った。
降谷零
松田深緒
深緒はタコを手に取る。 口元がほんの少しだけ緩んでいた。
2人は粉や紅しょうが、天かすをかごへ入れていく。
その途中。 降谷が何気ない調子で口を開いた。
降谷零
松田深緒
降谷零
松田深緒
松田深緒
何気ない会話。
深緒も、特に気にした様子もなく答えた。
けれど。
降谷零
松田深緒
松田深緒
降谷零
降谷の手が、一瞬だけ止まる。
ほんの一瞬。
深緒は棚の商品を見ていて、その一瞬を見逃した。
松田深緒
降谷零
静かな返事だった。 すぐに表情はいつもの穏やかなものへ戻る。
降谷零
そう言って笑う。
ちょうどハロ用のおやつ売り場の前だった。
松田深緒
松田深緒
深緒は棚の前へしゃがみ込んだ。 いくつか見比べながら手に取る。
降谷も隣へしゃがんだ。
降谷零
松田深緒
深緒はなぜか悔しそうな顔をして答える。
松田深緒
降谷零
深緒はハロのことになると妙に真剣だ。
降谷零
そのまま声に出た。
松田深緒
降谷零
深緒は、何気なく発した一言だった。 降谷はその言葉を静かに繰り返す。
降谷零
松田深緒
迷いのない返事。
降谷は小さく笑い、まっすぐ深緒を見た。
降谷零
松田深緒
深緒はきょとんと降谷を見る。
降谷さんが拾ってきたのだから、そりゃそうだろう。 そう思っただけだった。
松田深緒
降谷零
降谷はそれ以上何も言わなかった。 深緒はもうハロ用のおやつを選び始めている。
その横顔を見つめて、降谷は小さく笑った。
だが。
ポケットで震えるスマホが、降谷を現実に引き戻した。
コメント
3件
深緒鈍感だなぁもどかしいよぉ🥹事件とかやだなぁ絶対やだせっかく平和なのに😭この平和を壊さないでたこ焼きパーティーさせてやっとホットプレートの出番なんだから😭なんで赤いドレスはだめなんだろうまぁ確かにイメージしづらくはあるけど…🤔 投稿ありがとうございます🙏今回も最高でした🥰続きも楽しみに待ってます👍
みぅです🤍🥀 第84話、読ませていただきました…! 2人の穏やかな日常がとても温かくて、読んでいて自然とほっこりしました。特に「赤以外で」って言った降谷さんのあの一言、すごく気になります…何か過去にあったのかな、って想像しちゃいますね。深緒さんが「家族ですから」って自然に言えたのも、2人の距離がちゃんと縮まってる証拠でじんわりきました。 最後のスマホの♡♡♡…また何か起きる予感がして、次が気になります🌙