あのピアノの音が聴きたくて、 今日はいつもよりだいぶ早く来てみた。
聴けるとは限らないけど…ね。
たったったっ…
蓮見朱李
教室に入ろうとすると、 どこかに走って行く人が。
確か…3組の有瀬さん。 有瀬海、だったっけ。
ボーイッシュで、 まさに王子様って感じ。 女子にモテモテなんだよね。
だけど…なんでこんな時間に?
階段で待つのは本人と遭遇しそうだし、隣のトイレで曲が流れるのを待つ。
蓮見朱李
薄く聴こえてきたあの音に、 私はトイレを出た。
♫♪〜
相変わらず綺麗な旋律だ。
同じ人が弾いているのだろうか、 音の一つ一つが昨日と変わらない 美しさで。
一瞬でも、一瞬でもいいから 顔が見てみたい。
正体が知りたい。
そう思っているうちに、 足は音楽室に向かっていた。
音楽室のドアについている ガラス窓から、中をこっそり覗く。
蓮見朱李
ピアノを弾いている人物は 有瀬さんで。
私のイメージにあまり合わない 姿に、衝撃を受けた。
朝陽が差しているのもあってか、 音楽室は別世界みたいだ。
すると、
ぴた…
演奏が止まった。
何か難しいところでもあるのかな、 と思っていると。
有瀬海
蓮見朱李
有瀬さんが語りかけているのは、 自分なんだろうか。
もしかしたら他にも………
有瀬海
蓮見朱李
苗字を呼ばれて、確信した。
紛れもなく自分だ。
ガラガラッ
私は音楽室のドアを開けた。
やっちゃった、 絶対やったらダメだよね。
当たり前なのに。 なんでこんなことが 守れなかったんだろ、?
蓮見朱李
気まずくて、怖くて、 目が合わせられない。
有瀬海
有瀬さんはそう言うと、 こっちに歩いてきた。
有瀬海
私に向かって微笑む姿は、 まるで夢のようだった。
蓮見朱李
だけど状況が飲み込めなくて、 私はおろおろしてしまう。
有瀬海
蓮見朱李
嫌な訳ないのに。
なんでこんな時に限って 言葉が詰まってばっかりなんだろう。
蓮見朱李
有瀬海
蓮見朱李
蓮見朱李
有瀬海
有瀬さんは爆笑を続けている。
私の言葉で笑ってくれたのが嬉しくて、心の中で飛び跳ねた。
有瀬海
蓮見朱李
蓮見朱李
有瀬海
ここ座って、と言わんばかりに 有瀬さんは隣の椅子を引く。
そして執事の真似をするみたいに、 椅子に向かって腕を伸ばした。
王子様って言われる理由、 めっちゃ分かった。
蓮見朱李
有瀬海
私が椅子に座ると、 有瀬さんは口を開いた。
有瀬海
実を言うと、ピアノが 好きなんじゃなくて 好きなのは''音楽''だった。
だけど昨日演奏を聴いたのが きっかけで、ピアノに惹かれたんだ。
蓮見朱李
有瀬海
有瀬海
蓮見朱李
有瀬海
顔を赤らめる有瀬さんは… どこか可愛く感じた。
有瀬海
そんな誘いに、私は目を輝かせた。
蓮見朱李
有瀬海
有瀬海
蓮見朱李
ここから私の新しい日々が始まった。
コメント
2件
花凪多さんの書く百合、美しすぎます!ボーイッシュな女の子良いですね!