いつも通りの帰り道
そこであいつと出会った
女
こんにちは
女
突然ですが、望みはありますか?
男
(なんだこいつ……勧誘か?)
女
いえ、勧誘ではありません
男
!?
男
(心を読まれた……?)
女
心を読んでいるというか、なんというか
女
まあ、そのようなことはどうでもいいのです
女
私は、あなたの望みを叶えたいのです
男
(……胡散臭そうだが、聞くだけ聞くか)
女
ありがとうございます
女
私は、望みを叶える力があります
女
その力を使い、あなたの願いを叶えます
女
その代わり、私のお願いを聞いていただきたいのです
男
それは、私にしかできないことか?
男
その力とやらで解決できそうだが
女
できないから、お願いしているのですよ
女
残念ながら、私にはこの力は使えないのです
男
なるほど
男
そのお願いの内容を聞いても?
女
はい
女
お願いは、しばらくこの箱を預かってほしいのです
男
箱?
女
はい
女が取りだした箱は、 何の変哲もないダンボールだった
男
ダンボール箱……?
女
はい、ダンボール箱です
男
これを預かれと?
女
そういうことです
男
(いやどういうことだよ)
男
(持ってみてもなにか入ってる感じもしないし)
女
それはそうですよ
箱ですもの
箱ですもの
男
これをいつまで預かればいい?
女
……
女
私がまた会いに来る時まで、ですかね
男
またあやふやな
女
でも、かさばるものでもないでしょう?
男
たしかにそうだが
男
(怪しすぎるんだよなあ……)
女
とりあえず、決めてください
女
箱を受け取って願いを叶えるか
怪しいと思って断るか
怪しいと思って断るか
男
……
男
……預かる
女
ありがとうございます
そう言って、女は箱を渡す
女
願い事は何にいたしますか?
男
そうだな、俺しか使えない通帳を作ってくれ
男
引き出してもなくならない金も入れてな
女
わかりました
女
こちらがその通帳です
男
(すごくあっさりだな……)
女
逆にどのような叶え方だと思ったんですか?
男
いや……こう、派手な演出でもあるもんだと
女
ファンタジーの見すぎですね
男
(おまえもファンタジーだろ……)
女
知りません
それではまた
それではまた
男
あ、ちょっと待て
女
なんでしょう?
男
この箱って、開けてもいいのか?
男
開けたら犬になるとかないよな?
女
……っぷ
女
どうでしょうね
女
それは自分で開けて試してください
男
あ、ちょ……
男
……消えちまった
男
……このダンボール……ダンボールなんだよな……
男
……帰ろ