奏太
街のネオンも喧騒も届かない静寂。
奏太
寝そべったシートはほんのり温かくて、頭上には満天の星。
奏太
……ロケーションは最高なんだけどなぁ~
結翔
ロケーションは?
俺も居るのに、むしろ何が不満なんだよ
俺も居るのに、むしろ何が不満なんだよ
奏太
いやいや、そこだよそこ~!
結翔
……はぁ?
奏太
何でこんな「ロマンティック~♡」な夏の夜空の下で、男2人で天体観察してるんだよ?!
結翔
そりゃ、来る予定だった天文部女子部員3人が「今日は見逃せないドラマがあるの!」ってドタキャンしたからだろ。
奏太
録画しろ録画!っーか、見逃したって配信アプリでも見れるだろーが!
奏太
何が「リアルタイムの尊さを知れ」だっつーの!
結翔
……まぁ、リアルタイムの良さはわからなくはないけど、せっかくの流星群なのに…とは思う。
奏太
だろーー?!
結翔
あ、流れた。
奏太
何ー!? 見逃したぁぁあッ
結翔
余計なことばっかり考えてるからだろ。
結翔
せっかくの流星群なんだから、ちゃんと星空見とけよ。
奏太
まぁ、流れ星は綺麗だけどさぁ…
…お、流れた!
…お、流れた!
奏太
……けど、ぶっちゃけ俺は、もっとこう…
奏太
…雨の様に星が流れるのを期待してた。
結翔
それはもう流星群と言うより、流星雨か流星嵐だな。
結翔
一生に一度見られたらラッキーなくらい珍しいやつだぞ。
奏太
……えぇ~、お前も見たこと無いの?
結翔
無い。
いつかは見てみたいけどな。
いつかは見てみたいけどな。
結翔
俺達が物心付く頃に一度、流星雨があったらしいけど。
奏太
無理、待てない。
俺は、今見たいんだよ~!
俺は、今見たいんだよ~!
結翔
そんなこと言われてもなぁ…
…あ、流れた。
…あ、流れた。
奏太
おっ、今のやつ2連続だったな。
奏太
そういや聞いたこと無かったけど…
奏太
結翔は、何で星が好きなの?
他の事はあんまり興味ねぇじゃん
他の事はあんまり興味ねぇじゃん
結翔
……何で、って……別に。
理由なんかねぇ
理由なんかねぇ
奏太
はい、嘘~。
奏太
結翔が嘘付く時、耳たぶ触る癖あるの知ってるんだからな!
結翔
……別に、理由なんかねぇよ。
奏太
はい、嘘~。
奏太
指摘されたからって、耳たぶ触らなければ嘘付けると思うなよ~
結翔
……チッ、お前のそーゆーとこが、彼女出来ない理由なんじゃねーの?
奏太
……わぁ~、よりによって幼馴染みの大親友が、俺の心を踏みにじってくるぞ~?
結翔
……ハァ、奏太、星見ないのかよ
奏太
それでー?
結翔
は?何が、それで?
奏太
結翔が、星好きな理由(ワケ)は何なんだよ?
結翔
……まだ生きてたのか、その話。
奏太
当たり前じゃん。
奏太
お前、高校に天文部あるって聞いた途端、中学までやってたサッカー部にも入らずに入部したんだから。
奏太
気にもなるだろ!
結翔
……。
奏太
あ。結翔、今嘘付こうとしただろ。
奏太
手がピクッてなったぞ。
結翔
ほんと、奏太は何でそーゆーとこだけは目敏いんだよ
奏太
ははっ、そりゃ結翔の事だしな。
奏太
何年一緒に居ると思ってるんだよ。
結翔
……切っ掛けなんて大体単純だろ。
結翔
好きな子が好きな物で、興味持ったら思った以上に好きになった、それだけ。
奏太
えっ、ちょ、
奏太
お前の好きな子の話とか聞いたことないんだけどっ?!
結翔
言ったことねぇからな。
奏太
……くそっ、
ムカつくイケメンめ。
ムカつくイケメンめ。
結翔
そりゃどーも。
奏太
褒めてなーい!
奏太
それで……要は
好きな子が星好きだったから、興味持ったらお前もハマったってこと?
好きな子が星好きだったから、興味持ったらお前もハマったってこと?
結翔
そーだな…
結翔
…まぁ「星が好き」の意味を俺が受け取り間違えた、って事でもあったけどな
奏太
……はぁ?何だそれ。
結翔
まぁ、わかんなくていいよ。
奏太は。
奏太は。
帰り道 自転車を押しながら2人で歩く。
奏太
そういや
星で思い出したんだけどさぁ
星で思い出したんだけどさぁ
結翔
……何?
奏太
俺、昔スターウォーズに憧れてさ。
奏太
星柄の服とか物とか
スゲー持ってたなぁ~って。
スゲー持ってたなぁ~って。
結翔
……そーだな。
奏太
結翔に「何で毎日星の物付けてるんだ?」って聞かれて…
奏太
…あれ、俺なんて答えたっけ?
結翔
…それは覚えてるのに、なんで自分の言ったセリフは覚えてねぇんだよ。
結翔
「星が好きだからに決まってんだろ。超綺麗で超カッケーんだぜっ!」だろ
奏太
あ!そうそう、それだよそれ!
奏太
お前もよく覚えてんなぁ~
結翔
……ははっ、本当に、な。







