そう言いながらコンタクトを目に入れようとする

コンタクトを入れるのを諦め、荷物を手に取って慌てて打ち合わせに向かった

ガチャッ

部屋に入ると俺以外皆揃っていて、各々が雑談をしたりスマホを見たりしていた

うっ、幸い声で誰かわかるけど...眼鏡も忘れたせいでこの距離でも全然顔見えん

嘘…ではない。本当はTOP4メンバーでご飯を食べに行ってから一緒に打ち合わせに行く予定だったのだが、俺だけ寝過ごしてしまったのだ

予想外の言葉が耳に入ってきて思考が止まる

キヨくんが結婚？

そもそも恋人がいたなんて知らない

席に座って打ち合わせが始まるのを待つ

うっしーとガッチさんは話し込んでるのかこっちに全く気づかない

キヨくんが？

ほんとに？

スタッフさんの話をずっと考えていたら見慣れた姿が視界に入った

不満そうな声でひそひそ話す

さり気なくキヨくんの薬指を見る

キヨくんの薬指にはさっきスタッフさんの言っていた指輪がついていた

"結婚指輪？キヨくん結婚したの？"

別に今聞くことじゃないし

打ち合わせ後

結局打ち合わせ中もキヨくんのことが気になって全然集中できなかった

終わってから確認しようと思ったのにあいつすぐどっか行ったし

ガチャン

椅子にダラーっと座りながらキヨくんを待つ

ガチャッ

そう言いながら壁沿いに置いた荷物をゴソゴソ漁っている

指輪の着いた手を嬉しそうに俺に向けてくる

本当にキヨくん結婚してたんだ

おめでとうって言わんと

スタッフさんの嘘だったら良かったのに

無意識のうちに涙がポロポロ落ちていた

荷物を漁る手を止めて俺の方へ駆け寄ってきた

俺が泣いてるせいでキヨくんはあたふたしている

いつもと違う優しい声で話しかけてくる

伸ばされたキヨくんの手を振り払う

なんで俺こんなに泣いてるんやろ

…あれ、俺今

顔がサーっと青くなっていくのがわかる

ドスッ

椅子から立って逃げようとした瞬間キヨくんに押し戻された

椅子の背もたれの部分に両手を置かれてキヨくんに覆われる形になる

あ、キヨくん困った顔してる

最悪、なんであんなこと言っちゃったんやろ

コンタクト……？なんで今その話になるんだ？

目の前に指輪を近づけてくる

そう思ってまじまじと見ると明らかにプラスチックの指輪だった

スタッフさんの言葉を思い出す

キヨくんの声のトーンがガラッと変わった

猫みたいに目をそらさずじっと見つめてくる

キヨくんは1番仲良い友達で、実況仲間で、それで…

それで…？

頭が追いつかない。俺がキヨくんに告白してて、キヨくんはなんかめっちゃ喜んでて

手をぎゅっと握られる

耳まで真っ赤にしてキヨくんはそう言った

そのままキヨくんはへにゃへにゃっとしゃがみこんでしまった

キヨくんの指に着いてた指輪が俺の薬指にはめられる

また赤くなりそうなのを必死に抑えて平気なフリをする

○ヶ月後

ガチャッ

スッ

ニヤニヤして俺の顔を覗き込んでくる

俺の手を引っ張ってスタッフさんの元へ駆け寄る

スタッフさんの方へ2人で左手を向けた

おわり