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お父さん

莉央ー、起きてる?

今日が始まった

佐伯莉央

起きてるよー

チーン チーン

お母さんの仏壇に手を合わせてから家を出る

ガチャ

佐伯莉央

鍵は?

お父さん

あるある…よし!行こっか

佐伯莉央

…反対方向でしょ?

お父さん

…あ、…はい。気をつけて行くんだよ

佐伯莉央

うん。行ってきます

お父さん

うん

高校生になってもお父さんのことが好きって変だと思われるかもしれないけど

私は違う

教室に行くと、今日も私が一番乗りだった

授業の準備をしていると先生が入ってきた

麻生先生

お、今日も早いんだな

佐伯莉央

早寝早起き、毎日欠かさないようにと父が言っていますから

麻生先生

しっかりしてるなー

佐伯莉央

うっかりもしてます

私が言うと先生が少し笑った

ここで1つ、疑問に思ったことがある

佐伯莉央

先生こそ、どうしてこんなに早い時間にいらっしゃるんですか?

麻生先生

…俺?なんで?

佐伯莉央

小学校の時から先生たちの行動は不順しています

私がこれまで思ってきたことを先生に聞いてみた

佐伯莉央

まず、学校には早く来いと言っておきながら、自分たちは7:50に学校に来る。次に、学校ではお菓子を食べるなと言っておきながら、自分たちはお菓子を食べる。更に、決まった靴下、白・黒・紺で来いと言っておきながら、自分たちは派手な靴下を履く。最後に、寄り道はするなと言っておきながら自分たちは寄り道をする。これについてどうお答えになりますか?

麻生先生

先生が固まった

でもしばらくして大爆笑された

佐伯莉央

なにかおかしなことを言いましたか?

麻生先生

あはは、いや。佐伯ってなんでも質問するんだな

佐伯莉央

気が済まないんです

真剣だった

麻生先生

そんなの、俺が分かるわけないだろ?

佐伯莉央

…確かに。そうですね

麻生先生

先生が私の顔をじっと見つめてきた

佐伯莉央

なんですか?

麻生先生

……いや、なんでもない

それが嫌だ

佐伯莉央

言いたいことがあるならはっきり言ってください

瞬間

教室のドアが思いっきり開けられた

坂口狂

いっちばーん!

昨日の人だった

坂口狂

あれ?莉央ちゃんじゃん!早いねー

八代美奈

先生、おはようございます

坂口狂

はぃざぃまーす

西森葵

おはようございます

麻生先生

おはよう

麻生先生

みんなしっかりしてるねー。誰かさんはさっきからずっといるのに挨拶もしないんだよねー

みんなが私を見た

佐伯莉央

それ、私ですか?

麻生先生

ま、別にいいんだけどね

心の中でちょっとカッとなった

でも私はその気持ちを押し殺した

佐伯莉央

おはようございます

佐伯莉央

これでいいですよね?

麻生先生

おはよう、だけでいいのにー

佐伯莉央

もう一つ質問です

麻生先生

なに?

先生はめんどくさそうに言った

佐伯莉央

どうして生徒だけが敬語を使わなければならないんですか?

麻生先生

…俺に対しては使っても使わなくてもどっちでもいいよー

それに反応したのは坂口くんだった

坂口狂

まじでー?!

でもそれは八代さんにとめられた

八代美奈

いいわけないでしょ?

先生は教室から出ていった

私達も、授業の準備をした

人と関わるには、

その人たちのその人達とのやり取りしやすい環境が必要になる

そんなことをしてでも、仲良くなろうとする

自分にとって何が大事なのか考えようともせずに

思いついた言葉を言っていると、質問だらけになってしまう

人と関わると、 聞きたいことが多くなる

それは疑問に思うことがあるから

答えを知りたくなるんだ

昼休み

私はお父さんが作ってくれたお弁当を屋上で食べていた

瞬間

バンッ

屋上のドアが急に開かれた

坂口狂

やっぱここだよなー

八代美奈

あ、葵ちゃん!一緒に食べない?

佐伯莉央

佐伯莉央

いいです。一人で食べます

八代美奈

そんな事言わないでさー、一緒に食べよ?

坂口狂

そーだぞ?飯は1人で食ったって美味くねー!
みんなで食うからうまいんだよ。ほら、早くこっち来い!

佐伯莉央

本当に大丈夫です

佐伯莉央

1人にしてください

みんなが黙った

その空気に耐えられなくなって、教室に戻ることにした

一人で食べるより、みんなで食べた方が美味しいことなんてわかってる

でも、関わりたくない

麻生先生

佐伯、飯食ってんのか?

佐伯莉央

見ればわかるじゃないですか

先生はデリカシーというものありますか?

佐伯莉央

どうしているんですか?

麻生先生

失礼だなー、ここは俺の教室でもあるんだから、文句言うなよ

麻生先生

それに、お前こそ1人でなんで飯なんて食ってんだよ

佐伯莉央

だめですか?

佐伯莉央

それに、先生こそひとりじゃないですか

麻生先生

なんで1人になるんだ?気にかけてくれるヤツらがいるだろ?

佐伯莉央

そんな人いませんよ

麻生先生

嘘つけ

もう、いいよ

佐伯莉央

先生は、どうして私に話しかけるんですか?

麻生先生

お前は俺の生徒だ。話しかけたらダメな理由がどこにある

佐伯莉央

私にはあります

佐伯莉央

だから、先生まで関わらないでください

自分でも何言ってるんだかわからなくなった

だから、先生に何度も言い返した

麻生先生

生徒の人間関係に関わって何が悪い

佐伯莉央

私には不都合なんです

麻生先生

なんでだよ

麻生先生

昔なんかあったのか?

佐伯莉央

……先生には関係ありません

麻生先生

あるよ

麻生先生

俺はお前の先生だ

麻生先生

何があったのか生徒のことをちゃんと知る義務がある

麻生先生

ただ長年先生やってるわけじゃないんだ

麻生先生

俺にだってプライドってやつがある

先生の目が真剣だった

でも、信じられなかった

佐伯莉央

答える気はありません

麻生先生

……そっか

ご飯を食べたかっただけなのに、

先生に余計なことを話してしまった

人と関わるから

後悔することがある

それがその人にとって1番だと思っても、立ち直れない過去がある

その過去を知っているのは自分だけ

過去は変えられない

誰にも抗えないもの

私から全てを奪ったものは時間だった

帰り道

私は一人で帰っていた

でも、

西森葵

莉央

声をかけられた

振り返ると西森くんがいた

佐伯莉央

なんですか?

西森葵

お前に何があったのか分からないけど、俺たちは信じていいと思うよ

佐伯莉央

西森葵

それだけ、じゃあな

なんでそんなことが言えるの?

佐伯莉央

他人だからですか?

西森くんの背中に質問した

西森葵

俺達が信じたいと思ったから

振り返った西森くんの顔は先生の真剣な顔に似ていた

ガチャ

佐伯莉央

ただいま

お父さん

おかえりー

佐伯莉央

今日、早かったんだね

お父さん

うん。早めに切り上げてきた。部長がうるさくてさー

佐伯莉央

そうなんだ

お父さん

ご飯どうする?

佐伯莉央

カレーがいい。お母さんのカレー

お父さん

…分かった

お父さんは不思議そうに私を見た

佐伯莉央

お風呂入ってくる

お父さん

うん

お風呂は暖かくて、気持ちよかった

お風呂から上がるとお父さんが言った

お父さん

カレーできたよ

お父さん

座って

佐伯莉央

うん

手を合わせて2人で「いただきます」と言う

お父さんが作ったお母さんのカレーは甘くて美味しかった

佐伯莉央

美味しい

お父さん

そっか、よかった

私は無我夢中で食べた

お父さんはその様子を見ていた

佐伯莉央

おかわり!

私が言うとお父さんは「はいはい」と言ってついでくれた。

お父さん

はい

佐伯莉央

ありがとう

お父さん

莉央、学校でなんかあった?

佐伯莉央

え?なんで?

お父さん

カレー食べたいなんて、なんかあった時だけだろ?

佐伯莉央

…こんなこと言ったら、お父さんに怒られちゃうかもだけど

お父さんはいつも黙って私の話を聞いてくれる

佐伯莉央

友達は人を信用するとすぐ裏切るし、利用したりする。だから、人とはあまり関係を持たないようにしたの。でも、入学式で人にぶつかった時に同級生の人達の助けられて、今日の昼休みに一緒にご飯食べようって誘われたけど、信じたらまた裏切られるんじゃないかって思って、食べなかったの

佐伯莉央

で、先生にも聞いたの。どうしてそんなに生徒の事情を聞きたがるのかって。そしたら、俺はお前の先生だからお前似合ったことを知る必要があるって言われた。でも、本当にその通りなんだと思った。

佐伯莉央

今日の帰り道、友達が言ったの。俺たちはお前のことを信じてるから、俺たちのことは信じてもいいと思うよって。でも、裏切られるのが怖い

泣きそうになった

怖かった 見捨てられることが

だからあの時は、答えられなかった

お父さん

莉央

佐伯莉央

ん?

お父さん

父さんは、莉央が産まれてくれて幸せだよ。毎日話してくれる相手がいて、毎日、ご飯を食べてくれる相手がいる。そんなお前を守ってやりたいって思う。

お父さん

その人たちがお前のことを守ってくれたんだったらお礼が言いたいな。

お父さん

それに、人間みんなが悪い人じゃない。戦争だっていい人がいて、政府に立ち向かったりしたから今の平和な時代があるんだ

お父さん

だから、その人たちは信じてもいいと思うよ。それで見捨てられたら、父さんがその人んち行って1発お見舞してくるから

佐伯莉央

暴力はダメ!

お父さん

…はい

お父さんはいつも私を笑顔にしてくれる

佐伯莉央

ありがとう、お父さん

お父さん

うん

お父さん

よし、早く食って部長に資料提出しなきゃなー

お父さん

はぁー、忙しい忙しい

佐伯莉央

私もご飯食べて数学の課題やんなきゃ!!

佐伯莉央

はぁー、忙しい忙しい

話を聞いてくれて嬉しかった

頼れる人がいるから、人間は前を向ける

自分のことを話して、立ち直れる

その時にちゃんと聞いてくれる人が自分にとっての父親だった

信じてみてもいいかもしれない

そう思えたのはお父さんがおかげだった

私は今日も学校に1番早く着いた

佐伯莉央

先生!

麻生先生

びっくりしたー

話そうと思ったから

佐伯莉央

言いたいことがあります

麻生先生

質問じゃないんだな

佐伯莉央

私、中学の時、いじめを受けていたんです

麻生先生

いじめ?お前が?どうして?

佐伯莉央

私が、友達の彼氏に色目を使ったって噂が流れたんです

中学の時

仲が良かった友達に彼氏が出来た

柴崎雫

莉央!一緒に帰ろ!

佐伯莉央

ごめん、今日、先生に呼び出しされてるから先帰っていて

柴崎雫

あー、おけ!

佐伯莉央

ごめんね

柴崎雫

だいじょぶだいじょぶ

ずっと仲がよかったから、見捨てられるなんて思ってもみなかった

雫の彼氏

ねぇ、教えて欲しいとこあるんだけど?

佐伯莉央

そこは、こうすれば解けるよ

雫の彼氏

お、すげー!雫、計算できないから。ありがとな

佐伯莉央

確かに、できないとこも可愛いよね

そこを色目使ってるって思われたみたいで

柴崎雫

そんな人だったんだ。サイテー!

佐伯莉央

誤解だよ!信じてよ

柴崎雫

あんたなんか大っ嫌いだよ!

それから毎日、雫にいじめられた

たまに許したかと期待したけど、そんなものは全部幻だった

佐伯莉央

こういう事です

麻生先生

信じてたやつに誤解をとこうとしたけど無理だったってわけか

麻生先生

で、なんで話す気になったんだ?

麻生先生

答える気無かったんじゃないのか?

佐伯莉央

信じたらダメなんですか?

麻生先生

どっちでもいいよ

佐伯莉央

え?

麻生先生

信じても信じなくても、俺はお前の先生だ。お前のそばにいるよ

佐伯莉央

…先生って変な人ですよね

麻生先生

どーゆー意味だ?

佐伯莉央

今までの先生たちとは違う匂いがします

麻生先生

匂いって、変態か?

佐伯莉央

は?!

変態?私が?

私が?

佐伯莉央

違います!

麻生先生

変態じゃん

佐伯莉央

違います

人と関わることは悪いことじゃない

自分を変えることが出来るのは 自分じゃなくて、気づいてくれる人がいるから

人と関わるといつも驚かされる

人と関わることが楽しくなってきた

昼休み、屋上へ行った

バンッ

思い切ってドアを開けたけど、西森くん達はいなかった

今日は諦めよう

瞬間

バンッ

いきなりドアが開いてびっくりしたけど、ちょっと嬉しかった

坂口狂

あー、やっぱ屋上だよなー

坂口狂

高校背と言ったらやっぱり屋上でしょ?

八代美奈

何言ってんの?

西森葵

お前、乙女か

坂口狂

悪いかよ

八代美奈

誰もそんなこと言ってないでしょー

西森くん達だった

言おうと決めたことは変えられない

だから、自分なりに頑張ってみようと思えた

佐伯莉央

あの!

坂口狂

お、莉央ちゃーん

八代美奈

どうしたの?

佐伯莉央

あの、私!中学の時いじめられてたんです。その時のことがあったので人と関わることから逃げてました。私、父子家庭で、だから心配かけたくて…。でも、西森くん達とは関わりたいって思ったんです。私、こんな気持ちになったの初めてで、なんて言ったらいいかわかんないんですけど…

佐伯莉央

西森くん達と一緒にいてもいいですか?

ちょっと間があった

どうしよう、引いたかな?

坂口くんが言った

坂口狂

なーに言ってんの?

佐伯莉央

え?

坂口狂

もー、友達じゃん!

八代美奈

そーだよ!ね、葵

西森葵

美奈が女の友達欲しがってたから、別にいいんじゃん?

坂口狂

めげないなー、本当は莉央ちゃんが気になってたくせにー

西森葵

なってねーよ

八代美奈

素直じゃないんだからー

西森葵

お前が言うな?

佐伯莉央

皆さん、ありがとうございます!

嬉しかった

みんなといられるってだけでこんなに嬉しいことを知った

私は、1人じゃないんだ

坂口狂

飯食おーぜ!腹減った!

八代美奈

そうだね。そうしよっか

西森葵

うん

佐伯莉央

はい!食べます!

今日も明日も10年先も

私はきっと君たちといたいって思ってる

こんなに気持ちは知らなかった

教えてくれてありがとう

友達になってくれてありがとう

1人を4人にしてくれてありがとう

たくさんのありがとうは

きっといい思い出に繋がる

新しい私の第1歩なんだ

放課後

私たちはみんなで帰った

もうすぐでコンビニなのに坂口くんはわがままを言う

坂口狂

腹減ったー!

坂口くんは食いしん坊

八代美奈

まだでしょ?我慢しなさい

坂口狂

うわーん

八代さんはみんなのお母さん

西森葵

何めそめそしてんだよ

坂口狂

腹減ったんだよ!

坂口狂

あ、そうだ!葵、コンビニまで競走しようぜ?

西森葵

は?やだよ

坂口狂

レディー・GO!

西森葵

おい、狂!

西森くんはどんな人?

2人がコンビニまでダッシュをしているとき、八代さんが耳元で言った

八代美奈

ねぇ、莉央ちゃん父子家庭なんでしょ?

佐伯莉央

はい。母親が自さ…あ、いえ、病死してお父さんと2人です

嘘をついてしまった

八代美奈

そっかー。大変だね。じゃあ、これあげるよ

八代さんがもう片方のバッグから女子の私物を取り出した

佐伯莉央

え?!

八代美奈

私のお母さん、看護師で結構こういうものには厳しいの。だから、こういう時は私を頼ってね

佐伯莉央

あ、ありがとうございます!

八代さんは優しい

八代さんはセンスがいい

坂口くんは足が速い

2人のことはわかるのに、西森くんは分からないことだらけだよ

ピロリロリローン ピロリロリーン

坂口狂

1番のりー!

西森葵

あー、くそっ

坂口狂

お前、肉まん奢れよ?

西森葵

あー、はいはい

坂口狂

素直だ事。ね、莉央ちゃんどっち派?肉まんかピザまん

八代美奈

私肉まん

佐伯莉央

どっちも食べたことがありません

坂口狂

…え?

西森葵

嘘だろ?

八代美奈

どうして?

佐伯莉央

学校帰ったらすぐ家に帰っていたので。友達とは遊んでいましたが、ほとんど家にいたので。コンビニは行く必要がなかったんです。

八代美奈

そうなんだ

みんなが驚いている

どうしてそんなにびっくりするのだろう?

八代美奈

どっちか決めな?
どっちも美味しいけど、オススメは肉まんだよ

坂口狂

葵は?

坂口狂

俺肉まん

西森葵

俺ピザまん

佐伯莉央

先に買っていいですよ

西森葵

分かった

西森くんはテキパキと会計を済ませた

どっちがいいか、匂いで決めよう

佐伯莉央

西森くん

西森葵

ん?

私は袋から肉まんとピザまんをだし、匂いを嗅いだ

佐伯莉央

(クンクンクン)

坂口狂

?!

八代美奈

?!

西森葵

何やってんだ、お前

佐伯莉央

決めました。肉まんにします

西森葵

決め方犬かよ

坂口狂

可愛い

西森葵

は?!

お会計をしようとしたけど、横から西森くんが入ってきた

佐伯莉央

え、お会計は…

西森葵

奢る

佐伯莉央

いいですよ、自分のですから

西森葵

決まったんだよ

佐伯莉央

え?

そう言って肉まんを渡された

西森葵

佐伯莉央

え、あ、ありがとうございます

佐伯莉央

あ、お金

西森葵

要らない

佐伯莉央

……

西森くんは優しい…

かもしれない

イートインスペースで食べたあと、私たちはそれぞれの家に帰った

ガチャ

佐伯莉央

ただいま

今日のことを報告しようと思ったのに、お父さんがいなかった

代わりに机の上に手紙があった

内容は

「莉央へ おかえり お父さん、今日も残業で忙しくなる。ご飯は作れなかった。すまん!オムライスでも作って食べてくれ ちゃんとお風呂はいってから寝るんだぞ 仕事頑張ります! おやすみ」

冷蔵庫の中を見た

卵がなかった…

駅前のスーパーに買いに行くことにした

外は雨が降っていて不気味だった

不良A

おい!

不良A

ねーちゃん。この前はよくも恥かか
せてくれたなー

佐伯莉央

コンビニの?!

後ろから声をかけてきたのはこの前の不良Aだった

佐伯莉央

なんですか?

不良A

そこに車がある

不良A

早く来い!

手を引っ張られた

心臓がドクンと強く動いた

バクバクと心臓の音が聞こえてくる

佐伯莉央

助けて!助けてください!

佐伯莉央

離して!

不良A

早くついてこいよ!

瞬間

いきなり手の力が抜けた

不良Aの腕は、救世主によって掴まれていた

救世主

何してるんですか?こんな夜遅くに、こんなに目立つとおりで

救世主

馬鹿なんですか?

不良A

あ?!

救世主

男が女に手を出していいんですか?

佐伯莉央

西森くん?

不良A

ふっ、お前、この前のガキか?

救世主

は?何を言ってるんですか?

違うの?

救世主はポケットから何を取りだしたがら言った

救世主

まぁ、いっか。大丈夫ですか?あなた。もうすぐて警察来ますよ

不良A

そんな脅しに飲んねーよ。あいにくだな、それはもうリサーチ済みなんだよ。バカはどっちだよ

救世主

これを見てもそんなこと言えますか?

救世主は不良Aにスマホの画面を突きつけた

不良Aは、完全に動揺していた

不良A

くそっ!今度は逃がさねーかんな!

そう言って、夜の街に消えていった

救世主

大丈夫?

佐伯莉央

…は、はい

ガクッ

佐伯莉央

あっ

足の力が抜けて崩れ落ちた

同時に傘ですら落としてしまった

救世主

どうしたの?

佐伯莉央

す、すみません。急に足の力が抜けてっ

救世主が軽く私を抱きしめてくれた

救世主

怖かったね。もう大丈夫だよ

佐伯莉央

う、グスン。う、うん、うわーん、うわーん。あ、ありが、ひくっ、とうごさい、ひくっ、ます

ありがとうの言葉が私の涙を強くした

そのあとは

救世主の家に上がらせてもらうことになった

救世主

上がって

佐伯莉央

え、あ、お邪魔します

タオルを渡された

救世主

風邪ひくでしょ

佐伯莉央

す、すみません、くじゅん!

救世主

早く髪乾かして

私がモタモタしていると、救世主が私からタオルを取り上げた

救世主

座って

佐伯莉央

え、は、はい

椅子に座らされた

救世主はそのまま何も言わずに私の髪を乾かしてくれた

佐伯莉央

すみません

救世主

いいんだよ

ちょっと間があって救世主が言った

救世主

どうして、あんなくらい時間に女の子がひとりで歩いてたの?

佐伯莉央

買い出しです

救世主

こんな時間に?

佐伯莉央

帰ってすぐ気づいたので、遅くなってしまいました

救世主

そっか。偉いね

佐伯莉央

いえ

そしてまた間があった

救世主

君は、葵の友達?

佐伯莉央

え?

救世主

いや、さっき西森くんって

佐伯莉央

あ、

救世主

もしかして、葵にも助けられたりした?

佐伯莉央

…はい。葵は本当にすごいと思います。あんなに怖い相手に立ち向かおうとするから

救世主

俺の教育がよかったんだなー

佐伯莉央

はい?

さっきから、なんだろう?

佐伯莉央

あの、あなたは葵のなんなんですか?

救世主

俺?俺はねー―

瞬間

ガチャ

部屋のドアが開いた

西森葵

兄貴帰ってきたのかって、なんで居んの?

佐伯莉央

西森くん?!どうして?

救世主

あー、こいつ俺の弟なんだよ

佐伯莉央

え?弟?

西森響鬼

で、俺、こいつ子兄貴の西森響鬼

佐伯莉央

響鬼さん…お兄さん?!

西森葵

そんなに驚く?

佐伯莉央

葵くんって、兄弟がいたんですね

西森葵

うん、言ってなかったっけ?

佐伯莉央

言ってないです

西森葵

あ、ごめん

西森葵

で、なんで居んの?

佐伯莉央

あ、響鬼さんに助けて貰ったんです

佐伯莉央

この前はコンビニの人に襲われていたところ響鬼さんが助けてくれて、で、なんで家にいるんでしょう?

自分でも知らなかった理由を聞くと

西森響鬼

え?単純に髪濡れてたし、このままスーパー行っても変だなと思ったから

佐伯莉央

あ、そうだったんですね

西森葵

スーパーって?

佐伯莉央

買い出しに行こうとしていたんです

西森葵

へぇー

西森葵

まぁ、ゆっくりしてってよ

佐伯莉央

はい!ありがとうございます

西森葵

じゃね

佐伯莉央

はい

バタン

男の人と2人っきりは初めてだった

西森響鬼

よしっ

響鬼さんは私が座っていたコロコロイスを自分の方へと向け顔を近づけてきた

佐伯莉央

な、なんですか?

西森響鬼

土曜日、駅の近くのパンケーキ屋さん行かない?

佐伯莉央

え?

西森響鬼

葵のこと知りたいでしょ?

佐伯莉央

は、はい、まあ

西森響鬼

じゃあ、ついてきてよ。話したいことがあるからさ

佐伯莉央

わ、分かりました

これを信じていいのか、分からなかった

ちょっとした事でも

考えたり、落ち込んだりする

つまんなくても大爆笑するのと一緒

人生には何があるのかわからない

占いでも預言者でも

未来は変えられるんだから

だったら、知ってみたい

今ある自分に何が出来るのか

何が必要なのかを

確かめてみる価値はあると思う

一瞬一瞬が

かけがえのないものになってくるんだ

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