俺の姉は幽霊になって
帰ってきた
久しぶりに姉の部屋に入ると
香奈恵
輝
そこには姉が居た
輝
ね、姉さん?
香奈恵
ただいま、輝
香奈恵
そして
香奈恵
誕生日おめでとう
突然の事に驚きを隠せない俺をよそに
姉はニコニコと笑っていた
輝
なんで姉さんが
香奈恵
ん~
香奈恵
どうしてかな~?
輝
分からねぇのかよ
香奈恵
あ~!!!
香奈恵
その服、高校の?!
輝
そ、そうだけど
香奈恵
輝も私と同い年になったんだね
輝
あぁ
輝
…
輝
そろそろ夕食だから行くよ?
香奈恵
あ、うん
香奈恵
分かった
バタン
母
輝、早く座りなさい
母
ほら、あなたも
父
あぁ
シーン
俺達、家族の食卓はいつも静かだ
姉が俺の誕生日の日
"自殺してから"
香奈恵
ひーかる!
輝
クル
香奈恵
えへへへ
輝
はぁ
母
輝?
母
どうかしたの
輝
…
輝
何でもない
輝
ごちそうさま
ガチャ
香奈恵
お帰り~
輝
なぁ
輝
なんで俺しか姉さんのこと見えないんだ
香奈恵
どうしてかな~
輝
またかよ
香奈恵
あっ、ねぇ
香奈恵
私の服ない?
輝
なんでいきなり
香奈恵
いいから~
香奈恵
不思議な事がおきるの
香奈恵
私の私物はどんなに破いても
香奈恵
燃やしても、元に戻るの
輝
なんでそうなるんだ?
香奈恵
いいから、ためしに私の服を燃やしてみて!
輝
分かったよ
香奈恵
さぁ、いくぞ~
パチ パチ パチ
輝
ほんとにいいのか?
香奈恵
うん、いいよ!
ボオ
輝
戻んなかったらどうすんだよ
香奈恵
まぁまぁ
父
輝?
輝
父さん
父
!
父
何してるんだ!!!
輝
いや、これは
父
言い訳なんかよせ!!!
父
バチン
輝
…
香奈恵
ひかる!
母
あなた、何してるの!
母
…
母
まさか、輝を殴ったの?!
母
そんなんだったら服以外まで燃やされるわよ!
輝
ツ
タタタ
母
輝!
香奈恵
…
輝
…
香奈恵
輝?
香奈恵
…
輝
もう、うんざりなんだよ)ボソ
香奈恵
え?
輝
俺は!
輝
昔から
輝
いや
輝
姉さんが自殺してから
輝
毎日、毎日、生まれてこなければ良かったと思っていた
輝
だって、誕生日すら誰にも祝われないんだぞ?
香奈恵
…
母
あなた!
母
ドアを開けて!
父
…
母
そこまで言うなら私と輝は出ていくわ!
父
!
母
香奈恵が自殺して
母
悲しいかもしれない
母
辛いかもしれない
母
泣きたいかもしれない
母
でも、輝だって私達の子供よ!
母
お願いだから…
母
もうこれ以上、家族が壊れるのは…
輝
嫌なんだ
輝
もう、嫌なんだ
輝
だからさ
輝
後一度でいいから
輝
抱きしめて欲しい
輝
愛していると言って欲しい
香奈恵
…
香奈恵
そっか、そうなんだね
香奈恵
今までよく頑張ったね、
香奈恵
おいで!
香奈恵
抱きしめてあげる
輝
いいよ
香奈恵
ほーら
輝
いいって
輝
…
輝
なぁ、一つ聞きたいことがあるんだ
香奈恵
ん?
輝
何で、俺の誕生日の日に自殺したんだ?
香奈恵
…
香奈恵
分からない
輝
そっか
輝
そろそろ戻ろう
香奈恵
そうだね
母
輝、来てくれる?
輝
あぁ
母
これから話すことは、
あなた達姉弟のことよ
あなた達姉弟のことよ
輝
ビク
母
これを見て
輝
…
輝
ど、どういうことだよこれ
母
そのままの意味よ
輝
ツ
輝
ドタ ドタ ドタ
母
輝!
輝
姉さん!
香奈恵
おぉ
香奈恵
どうしたの?
輝
どういうことだよ
香奈恵
え?
輝
俺と姉さんの血が繋がっていないって!
香奈恵
…
香奈恵
聞いたんだ
輝
これって姉さんが自殺したことと関係あんのか?
香奈恵
分からない
輝
…
輝
毎回、毎回
輝
分からない、分からない
輝
何か答えろよ!
香奈恵
…
香奈恵
好きになんて)ボソ
輝
は?
香奈恵
好きになんてならなければ良かったのよ!
輝
ビク
香奈恵
私はあなたと血が繋がっていないことなんか、とっくに知っていた
香奈恵
それから私は
香奈恵
あなたに、"恋愛感情"を抱くようになった
香奈恵
こんなの姉失格だよね
輝
どういう
香奈恵
でも、どうして自殺したかは分からない
香奈恵
そこだけ記憶が抜けているの
香奈恵
でも今なら分かる気がする
香奈恵
だから最後にこれだけ聞いて
香奈恵
大好きだよ
姉はその場から跡形も無く消えた
そして今気づいた
姉さんは俺に
優しい嘘をついていたんだと