vvt短編集 #2

この世界には珍しい体質の人がいる

いわゆるケーキ、フォークと呼ばれる人たちだ

フォークには自覚症状があり

ケーキ以外に味を感じられないという症状が出る

反対にケーキには自覚症状がない

そのためケーキだと気づかずに

フォークに食い殺されるなんてことが多くなっている

俺はフォークだからそういうニュースを見る度に

ケーキってどれだけ 美味しいのかな

とか不謹慎なことが頭によぎる

いつも食事の時間は憂鬱で

美味しくも不味くもない

味が一切感じられない物を口に詰め込む

バレたらなんて言われるか分からないし

なんて下手な嘘をこぼしていた

ﾋﾞｭｳ…ｯ

今日は随分と肌寒い

風も強いし

smが突然俺の近くに寄ってくると

ブワッと何か甘い匂いが漂った

甘いを感じたことがないんだから

"甘い匂い"なんて分かるわけが無い

なのに……

1度匂いがしたら戻れない

smが美味しそうに見えて仕方がない

ﾄﾞｻｯ

耐えられないよ……

ﾁｭ…ｯ

甘い、美味しい……っ

smの口の中に舌を絡ませて

smの口を俺でいっぱいにする

ﾁｭ…ｸﾁｭﾚﾛｸﾁｭ

苦しそうな喘ぎ声を上げるsmに少し興奮を覚えていた

smが欲しい 俺だけのものにしたい

俺の頭の仲に色々な感情が混ざりあっている

涙目で火照った顔をされるともっとやりたくなってくる

キスだけでこれなんだから

もっと先のことをしたらどうなるんだろうとか

変な好奇心まで湧いてきた

smは感情は表に出さないけど

本当にわかりやすい

そんな所もたまらなく愛おしく感じられる

終始俯いてる彼の耳は真っ赤に染っていた

｢他｣という言葉に反応したのか

少し大袈裟にビクッと体が動いていた

少しだけ表情が明るくなった

俺に"全部"なんて言ったら 付け上がっちゃうよ

ちょっと脅迫紛いのことをやってみる

それでもsmは

少しも怯えることも無くただただ俯いて照れていた

俺から離れるなんて言ったら

無理やりにでも離れないようにするけど