シャークん
わざわざ口に出す事でもないくせに
スマホを見つめる彼は声を漏らした。
らっだぁ
全てを理解しているくせに
尋ねる俺もどうかしている。
シャークん
シャークん
スマホの電源を切り無造作に放り投げるその動作も
少し掠れた声も
伏し目がちな視線も
全部が全部、態とらしい。
らっだぁ
そんな彼の手首を掴んで
シーツに押さえつける。
こんな事をしなくても
逃げる気なんて微塵も無いくせに
彼はこうされることを望んでいるのだ。
らっだぁ
シャークん
らっだぁ
シャークん
顔を近づければ彼は横を向く。
まるでそうしろと教え込まれたロボットみたいに。
らっだぁ
シャークん
最初から知っている。
でも悩んで悩んで
漸く言い当てた名前に
やっぱり彼は態とらしい反応を見せるのだ。
らっだぁ
シャークん
ただ唇が首に触れただけ。
女性でも吐息なんて漏らさないだろうに。
こうなったのは
誰のせい?
らっだぁ
シャークん
シャークん
腹を撫でるついでに服を捲れば
腰に残る赤い爪痕が顔を出す。
あいつからのメッセージ。
らっだぁ
シャークん
らっだぁ
シャークん
ほら
これが言いたいだけなんだ。
らっだぁ
囚われているのは
俺の方だというのに。
告白したのは五年前。
Broooock
シャークん
デートをして
キスをして
愛し合って。
Broooock
シャークん
Broooock
シャークん
普通の恋人達と何ら変わらないお付き合いをしていたはずなのに
気づけば背中に知らない痕。
あの人からのメッセージ。
Broooock
シャークん
Broooock
シャークん
いくら激しく吸い付いても息ひとつ漏らさないくせに
頬だけは赤くなる君。
こうなったのは
誰のせい?
Broooock
シャークん
都合の良い時だけ鳴いて
僕に縋るふりをする。
僕が気づいていることくらい知っているだろうに
バレていないことにして
僕が喜ぶ言葉を口にするのだ。
シャークん
Broooock
赤い背中に舌を這わせ
簡単に開く蕾に己を埋めて
強く強く
突き刺すように揺さぶる。
シャークん
それだけ?
こんなに激しく愛を注いでいるのに
それだけなの?
Broooock
シャークん
Broooock
シャークん
感じているふりをしているけれど
その伏せた目が答えでしょ。
Broooock
シャークん
Broooock
Broooock
何度も言いかけた言葉は
結局喉に詰まったまま。
シャークん
少し擦っただけでこの反応。
俺達は一体いつまでこんな事を続けるのだろう。
狂ってしまった。
あの日から
彼は変わってしまった。
あの日
最終電車の中で
見知らぬ男に口を押えられて
体を弄られていた彼を見つけてしまったあの時から。
助け出した所までは良かったんだ。
最悪だったのは彼を助けたのが俺であったことと
薬を飲まされていたこと。
シャークん
ただ友達を助けるためだった。
適当なホテルに入って
薬を抜く為だけの行為をして
それなのに。
あの日以降彼は
何処で手に入れたのか薬を握り締めて
俺の前に現れるようになった。
シャークん
らっだぁ
中毒性のある薬だったのか。
それともただ彼が気に入ってしまっただけなのか。
シャークん
自分で飲んでおいて
効果が切れないのは刺激が足りないからだと言い訳をして
強い快感を求める。
もしあの日
薬の効果が切れるまで涼しい公園のベンチに座っていたら
どれ程良かっただろうか。
もしあの日
俺ではなくBroooockが彼を見つけていたら
どれ程良かっただろうか。
シャークん
白く汚れる彼は
いつも愛しい恋人の名前を叫んで
力尽きる。
シャークん
どんなに擦っても薄い反応。
僕は一体いつまでこんな不安を抱かなければならないのだろう。
後悔している。
あの日から
君は変わってしまった。
あの日
遅くまで引き止めてしまった。
また明日ねと言って
最終電車に乗る君に手を振ったあの時から。
シャークん
君からの誘いに
素直に喜ぶことが出来なかった。
何度か会ったことのある
友人の香り。
シャークん
Broooock
あの電車の中で一体何があったのだろう。
僕の知らない所で一体何が起きているのだろう。
シャークん
僕はこんなに不安なのに
君は安心感を求めて
僕からの愛を強請る。
もしあの日
もう一本前の電車に乗せていたら
何か変わっただろうか。
もしあの日
遅いから泊まっていきなと帰さなければ
何か変わっただろうか。
シャークん
愛に包まれた君は
いつも謝罪の言葉を残して
眠りにつく。
シャークん
シャークん
恋人に嫌われまいと苦しむ彼は。
シャークん
シャークん
友達であろうと努める君は。
シャークん
誰に対して謝っているの?
何に対して謝っているの?
他の男と寝ていることを知りつつ、黙って帰りを待ち続けるあいつに対して?
いけない事だと理解しているくせに、あの人を共犯者にしたことに対して?
他に解決策があったにも関わらず、手を出した俺を責めなかった自分に対して?
愛していると言いながらも、他の男の元へ行く君を引き止めようともしない僕を責められない自分に対して?
シャークん
やめて
シャークん
やめて
こうなったのは
誰のせい?
END
コメント
3件
大好きです、ありがとうございます…!