見慣れているはずの笑顔に、
私の何かが大袈裟に反応する。
時が止まったように消えた音が 途端に戻ってきて、
耳鳴りがした。
三毛屋〇〇
( な、なんなの… )
黒尾鉄朗
おーす
三毛屋〇〇
お疲れ
校門で幼馴染二人を待っていると、
制服に着替えたテツが歩いてきた。
三毛屋〇〇
あれ、研磨は?
黒尾鉄朗
新作のゲーム買うかなんかで、
黒尾鉄朗
裏門の方から帰ってったぞ
三毛屋〇〇
あ、そう…
目が合って、思わず逸らす。
さっきの違和感が残ってて、
距離感が掴めない。
必死に平静を装いながら
心の隅でゲーム好きな もう一人の幼馴染を恨んだ。
黒尾鉄朗
なに、研磨に用事?
三毛屋〇〇
ううん、別に
黒尾鉄朗
そ?じゃあ腹も減ったし帰りますか
三毛屋〇〇
うん
ゆったりと歩き始めるテツの隣を
並んで歩く。
私のペースに合わせて 長い足を持て余すのも
いつもの事なのに、
何故か胸がキュッと苦しくなった。
黒尾鉄朗
あ、そうだ
黒尾鉄朗
さっきの俺のスパイクすごかったでしょ?
しばらく無言で歩いてると、
テツから話題を振られた。
寄りにもよって違和感の原因の話。
三毛屋〇〇
まあテツにしては
黒尾鉄朗
厳しいですねー
ううん、すごかった。
普段あんまりスパイクを 打たないからこそ、
本当は心の中で感嘆した。
いつもは言える褒め言葉も、
喉がしゅわりと縮んで 言えなかった。