森は静寂に包まれていた。
薄暗い枝葉の合間から差し込む光の中、風が草木をわずかに揺らす――。
兄さん
こっちには反応なし……まったく魔物の気配も薄いな

しんぺい神
いや、あるよ。微弱やけど……これは、ただの魔物やない。もっと……“人”の気配

兄さん
生き残りか? この戦場で……ありえるか……

しんぺい神
兄さん、見て。あの倒木の影――

風に揺れる、かすかに光るピンクの髪。誰かが、そこに倒れていた
しんぺい神
っ……人や! 女の子や!

兄さん
おい、意識は!? ……返事しろ!

2人は駆け寄り、少女の体を支える。だが、その姿に兄さんの顔がこわばる
兄さん
……この子……っ

しんぺい神
……まさか……そんな、ことあるわけ……

シャオロン
兄さん! 何か――って……えっ……!?

シャオロン
嘘やろ……この髪、この輪郭……まさか……!

シャオロン
兄さん……これ、“みる”ちゃうんか……?

兄さん
ありえん……あの爆発で……確認は、できなかったが……

しんぺい神
けど、こうしてここに……確かに、生きとるんや……!

ロボロ
うおお!? なんやなんや、なんでみんな止まっと――って……

ロボロ
っ……う、うそやろ……? これ……ほんまに“みる”か……?

ショッピ
……俺、これ夢やと思ってええ……?

ショッピ
だって……だってあの時、俺ら……全部燃えて、何も……

ロボロが布の奥で震え、ショッピはヘルメットを外しかけて立ち尽くす
ロボロ
くそっ……こんなとこで、泣かせんなや……

ショッピ
……もう一回、“おかえり”って言わせてくれや……

シャオロン
なあ、兄さん……どうする? このままここに居るのは危険やろ

兄さん
まずは応急処置だ。体温はある……脈も、かすかに感じる

しんぺい神
大丈夫や。神は、命の鼓動を聴けるんや。……この子、まだ生きとる

トントン
テント張るぞ。もう誰にも奪わせへん。今回は……守り抜く

トントン
今は医療班は俺にやらせてくれや。手を貸してくれ、しんぺい神

しんぺい神
任せてや。みるの命、絶対繋いでみせるで

オスマン
おっ、おっそくなっためぅ!! な、なんやこの空気!? えっ……あっ……

オスマン
これ、ほんまに……“みる”めぅ……!?

鬱先生
夢でも見てるんかと思ったわ……

チーノ
こんな奇跡があるなら……もう一回、信じてもええよな……?

シャオロン
みるの声、もう一回聞かせてくれ。生きてるって、教えてくれよ……

ショッピ
また一緒に戦いたいんや……みるさんの背中が、俺らの希望やったから……

ロボロ
みる……おかえり。ずっとずっと……待ってたんやで

トントン
今度こそ守る。負けへん。絶対に……

兄さん
これは任務でも奇跡でもない……これは、俺たちの戦友が“帰ってきた”現実だ

少女はまだ目覚めない。けれど、その体は確かに温かく、鼓動を刻んでいた――