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{wrwrd}天国に愛をささぐ

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{wrwrd}天国に愛をささぐ

10 - 天国に愛をささぐ 最終回

♥

3,332

2023年10月08日

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俺は、生まれつき髪が茶色だった

地毛だと言うのに先生たちは 「染めろ」の一点張り

周りからは 「黒に染めればいいのに」という目で見られ

学校という場所が嫌いだった

かと言って、学校をサボると父親がうるさかった

シャオロン

チッ…

高1の頃は学校内では荒れに荒れていたと自分でも思う

学校の外に出たら普通になるけど…

先生

あなた、まだ黒に染めてないの?

シャオロン

…はあ

先生

聞いているの?

先生

明日染め直さなかったら生徒指導と保護者呼び出しですよ!

シャオロン

そこで親が出てくるのはおかしいやろ

シャオロン

生まれつきやって何回言えば気が済むねん

先生

地毛証明書をもらっていません

シャオロン

んなの聞いたことねえよ

シャオロン

じゃあ早くその紙くれや、書くからさ

先生

あなたね…!!

入学してすぐに地震が起こり、本校舎を1部修理するため

別棟の教室で授業を受けていた時期もあった

俺は先生の声にうんざりしながら、立て付けの悪いドアを開けた

ガラガラーーーッ

陽菜乃

わっ!

ドアを開けた瞬間、1人の女子が飛び出してきた

シャオロン

あ、わりぃ…

とっさに動くことが出来ずに、そのままその子は俺とぶつかった

陽菜乃

いったぁ…

陽菜乃

ちゃんと前見てよね!!…って

陽菜乃

茶髪で有名なシャオロンくんじゃーん

シャオロン

……あ?

こいつは、確か…前川?

入学した直後、周りが人で囲まれるような人気者だ

陽菜乃

まぁあたしも悪いか!

陽菜乃

ごめんねーシャオロンくーん!

シャオロン

はぁ?

うっとうしい…

そう思って彼女を見た瞬間

彼女の笑顔に、惹きつけられた

息を忘れるくらい彼女に惹かれた

それから、彼女と関わる場面が多くあった

体育祭の管理委員会

集団宿泊のまとめ役

生徒会の手伝いなど…

2人きりになる時もたくさんあったし、昔の話とか相談とか結構話した

それなりに

仲良くなってた…と思う

陽菜乃

へー

陽菜乃

シャオロンって妹ちゃんいるんだ〜

シャオロン

今中1

陽菜乃

3、4歳差?

陽菜乃

えーちょーかわいい時期じゃーん

シャオロン

かわええよ

陽菜乃

…やっぱちょっとシスコ

シャオロン

妹はみんな可愛いやろーが!

陽菜乃

あっははは!

陽菜乃

まあね〜あたしも弟いるし

陽菜乃

ほーんと…かっわいいよねぇ

シャオロン

今お姉ちゃんって顔してんぞ

陽菜乃

シャオロンもじゃん

先生

シャオロンさん

シャオロン

…うげ

先生

地毛証明書、渡したはずですよ?

先生

提出してください

とつぜん現れた先生は、俺を睨みつけながらそう言った

だが親に言えない

父親はこんな書類に目を通してもくれないだろう

…興味がないから

シャオロン

…それは

先生

まさか親御さんに伝えてないのですか?

先生

それとも親御さんの教育が悪いんでしょうか?

シャオロン

…は?

先生

きっと親御さんは学生時代にきちんとした教育を受けていないんですよ

先生

ですから、あなたの髪も何も注意しないのでしょ

先生

いますよね、今どき!

先生

自分の子供を甘やかしたとて、将来いい大人にはなりませんよ…まったく

その時の教師の言葉が頭にきた

家族…茜や母さん、父さんを侮辱された

てめえみたいな一般公務員が、人の命を救う側の人間に口答えしやがって

シャオロン

舐めてんじゃ…!!!

陽菜乃

うるせえよババア

先生

……はい?

シャオロン

…!

陽菜乃

年金暮らしの将来死ぬことしかできないおばさんがさ

陽菜乃

これからの未来支えていく人間に偉そうに口聞くなよ

陽菜乃

あと今の話、録音してるからね〜

陽菜乃

教育委員会に提出したらどうなるかな〜

シャオロン

まえ、かわ…

先生

…っあなた、教師を脅して…!!

また教師が声を荒らげた時 彼女は俺の手を引っ張った

陽菜乃

逃げちゃえ!

シャオロン

はぁあ?!

陽菜乃

いーい?シャオロン

陽菜乃

あーいうのは聞かなくていいの!

シャオロン

聞かなくていいって…

シャオロン

てか録音ってまじ?

陽菜乃

あんなの嘘に決まってんじゃん

シャオロン

おま…っほ、ほんとにやべえな

陽菜乃

あはは〜

陽菜乃

だから、あたしが言いたいのはね

彼女は夕陽を背に、こう言った

陽菜乃

シャオロンの髪、結構好きだよ

シャオロン

…っ

俺の手を引っ張りながら

だけど笑っているわけではなくて

彼女の目は、澄んでいて真っ直ぐだった

俺はそんな彼女が好きだ

シャオロン

好きだ

陽菜乃

うん、あたしもシャオロンの髪好きだよ

そういうことじゃ…ないんだけど

でもそんな所も大好きだ

次の日

陽菜乃

おっはよ〜!

彼女は髪を茶色に染めて学校に来た

シャオロン

え…っ?

陽菜乃

シャオロンの髪色、マネしちゃった

陽菜乃

どお?似合ってる?

彼女は俺の目の前でくるっと回って、髪を見せた

俺とほぼ同じ、髪の色

シャオロン

ああ、似合っとるよ

昨日のあの先生はいつの間にか学校を辞めてて

先生たちの標的は彼女になった

彼女は俺のために髪を染めたのだと気づいた

その優しさに、俺はまた好きになる

シャオロン

俺、前川のこと結構好きだったんだぜ?

陽菜乃

…うん

陽菜乃

知ってる

シャオロン

ははっ知ってんのか

陽菜乃

あたしもシャオロンのこと好きだよ

シャオロン

シャオロン

でも、それは…違うんやろ

陽菜乃

シャオロン

……

陽菜乃

陽菜乃

あたしさ

陽菜乃

…振られ、ちゃったんだ

シャオロン

…!

陽菜乃

先輩ね、恋愛には興味ないんだって

陽菜乃

今は勉強と部活に集中したいらしくてさ

陽菜乃

でも…あたし…

陽菜乃

あたし、ちゃんと言ったの

陽菜乃

あと少ししか時間がないから、先輩と一緒にいたいって…

ズキン…

…バカか、俺は

彼女がちゃんと言ってるんだ

自分が傷つくのは…お門違いやろ

シャオロン

…うん

陽菜乃

だけど先輩は、先輩は…ね

陽菜乃

あたしには、時間がないんです

陽菜乃

だから…あたしの最後のわがままなんです

陽菜乃

最期は…

陽菜乃

……

陽菜乃

先輩と一緒に、いたいです!

トントン

トントン

ちゃうな

陽菜乃

…え?

トントン

前川は、本当に俺が好きか?

陽菜乃

え、え…す、好きです!

陽菜乃

すごく大好きです!

陽菜乃

勉強頑張るところとか、部活してる姿とか

陽菜乃

本当にすごく…!

トントン

憧れ、やろ

陽菜乃

………

トントン

前川の俺に対する好きっていうのは

トントン

憧れの方だろ?

陽菜乃

ちが…っ

トントン

お前がいるべき場所はここじゃない

陽菜乃

……

トントン

薄々気づいてるんじゃないんか、自分の本当の気持ち

『少しは自分と向き合ってよ、後悔しないためにさ』

陽菜乃

あたしの、気持ち…?

陽菜乃

自分と向き合う…?

あ、えっと陽菜乃、さんの友達…

え、あ、友達…っつーか

君の姉ちゃんが聞いたら悲しむで?

いつもいる人がおらんくなるって、ホンマ寂しいんよ

つらいんよ

おま…!

どこにいたんだよ今まで!

俺だって、できることなら前川の願い叶えてあげてえよ…

好きにならないで欲しいなんて…二度と言うんじゃねえよ

俺はお前が好きだよ

この気持ちは…お前にだけは否定されたくなかった

それはなにに対してのごめん?

…俺の告白に対するごめん?

「なんで信じられへんの?前川はあんた達を信じてるのに!!」

そんなの叶えちまったら…お前消えるじゃんか

…待ってるから

陽菜乃

あたし、行かなきゃ…

トントン

な?

トントン

そうやろ?

陽菜乃

先輩、ありがとうございました!

トントン

あー前川

陽菜乃

…?

トントン

…また会えるとええな

陽菜乃

…ふふ

陽菜乃

はい!そうですね、先輩

陽菜乃

バカだよねぇ、先輩

陽菜乃

こーんな可愛い子逃しちゃうなんてさ

シャオロン

待てよ、今の話が本当だとしたら

前川は…

シャオロン

今、思ってること言っていい?

陽菜乃

……

シャオロン

前川、てさ

シャオロン

俺の事がす

陽菜乃

違うから!!!

陽菜乃

いや、ちがうっ、てゆーか…

そう言いながら椅子から思いっきり立って、俺から顔を背けた

シャオロン

…マジで言ってる?

陽菜乃

しらない

俺に顔を見せようとしない

少しずつ彼女に近づいて

シャオロン

前川

陽菜乃

…なに

シャオロン

顔見せてや

陽菜乃

覗き見ようとしたけど、そっぽを向く

だから俺は彼女のほっぺをつねった

陽菜乃

いひゃい…!

シャオロン

やっと俺の事見たな

陽菜乃

…っ

思ったより、彼女の顔はぐちゃぐちゃだった

顔は赤くなって、涙を流して

恥ずかしいのか泣いてるのか分からないくらいに

そして…

彼女の姿はどんどん薄く消えていく

陽菜乃

これが最後は、やだよぉ…っ

シャオロン

…うん

陽菜乃

シャオ、ロ…

陽菜乃

うぅーもうやだあ

陽菜乃

なぁんであたし死んじゃったのお…

シャオロン

そうだよな

シャオロン

なんで死んじまったんよー…

陽菜乃

ホントだよ…っ

陽菜乃

やっと気づけたのにぃ…!

シャオロン

前川…っ

陽菜乃

やだ、やだ…!

陽菜乃

シャオロン…シャオロンっ!

シャオロン

俺はここにおるから

シャオロン

この街にずっといるから

陽菜乃

…うんっ

シャオロン

陽菜乃…陽菜乃がいたこの街にいるよ

陽菜乃

…っうん!

シャオロン

絶対忘れないから

陽菜乃

あたしも忘れない!

陽菜乃

…忘れないよ

シャオロン

あぁ

陽菜乃は涙で潤う目で俺を見た

これで本当に最後…

シャオロン

陽菜乃

陽菜乃

…なあに?

シャオロン

好きだよ

陽菜乃

……

シャオロン

陽菜乃は?

陽菜乃

…もちろん

陽菜乃は俺の目を見て

へら〜と笑いながら

陽菜乃

きらいだよっ!

そう言った

彼女は最後まで嘘つきだった

最後くらいは正直になればいいのに…

嘘をつく時はへらっと笑い 嘘じゃない時は真剣に人の目をまっすぐと見る

それが嘘つきな彼女の嘘の見分け方だ

……なぜ、彼女と呼ぶかって?

彼女は「前川 陽菜乃」であり 「前川 陽菜乃」は俺の彼女である

だから俺は「彼女」と呼ぶことにしよう

彼女の生きた証を残すため

彼女と俺が想い合えた証は、ここにある

だから大丈夫

安心して天国に行ってこい

俺はいつまでもここで彼女に愛をささげよう

それが彼女のいない世界で見つけた生きる意味だ

この作品はいかがでしたか?

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コメント

21

ユーザー

二週目でぇーす☆((

ユーザー

最高でした

ユーザー

まさか「きらい」と言うとは…もう何から何まで最高でした!!!!泣きました!!!!(´;ω;`)

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