静さんの努力の甲斐もあって
かすみさんに避妊具の存在がバレることはなかった
かすみさんは一向に妊娠をしないあすみさんに対し
井川かすみ
井川かすみ
そう吐き捨てるのみで
その事で彼女を攻めることはなかった
この頃になると悟志さんはあの部屋を嫌い
あすみさんの姿を一瞬でも目にすると
傷だらけの彼女を睨み
井川悟志
井川悟志
暴言を吐くようになった
静さんが注意しようとすると
井川悟志
静さんの心に悟志さんの言葉が容赦なく突き刺さり
静さんは一人、寝室で涙を流した
静さんにとってあすみさんはもう
ただの妹ではなくなっていた
これまで大切な妹を守りたい一心で
母の暴挙に荷担し虐待を続けていた
彼女を傷つける以外に彼女を守る方法がない
井川静(じん)
自分にそう言い聞かせて事に及ぶ
静さんが自分の気持ちに気づいたのは
偽りの契りを交わしてからわりとすぐだった
ただ"妹"としての好きではない感情が
心の中にあるのを静さんは感じた
もっと触れたい
傷だらけの彼女の身体に
自分だけの特別な何かを刻み付けたい
そんな感情が静さんの心に芽生えていた
でも二人は血の繋がった兄妹
静さんがどんな感情を抱いても
それは報われることなどない禁忌を冒す行為なのだ
心の中で何度も葛藤を繰り返し
それでも答えを出せぬまま
母の命令に従うしかなかった
それからしばらくして
あすみさんは時々、学校を休むようになった
度重なる虐待の傷により
発熱の症状が出るようになったからだった
静さんはあすみさんを救うために
なんとかあすみさんを登校させようとした
熱のある状態で学校へ行けば必ず保健室に行くことになる
そうすれば先生が彼女の傷の存在に気づき
かすみさんの暴挙も止まるはずだと思ったのだ
だがかすみさんは慎重だった
井川かすみ
井川静(じん)
井川かすみ
井川かすみ
井川かすみ
井川かすみ
井川静(じん)
井川静(じん)
井川かすみ
かすみさんの言葉に静さんは焦った
静さんはあすみさんのためにこっそり避妊具を使用していた
だから検査をしてもDNAなんて検出されない
仮に検出されたとしてもかなり微量
このままでは避妊具の存在が露見し
あすみさんがもっと酷い目に遭うかもしれない
その思いから静さんは
井川静(じん)
かすみさんの言葉に従う道を選んだ
沢田マリカ
沢田マリカ
井川静(じん)
どれ程、辛かったことだろう
自らの手で愛する人を傷つける
それしか彼女の命を救う方法はなかった
心の底から愛してしまった妹を
母親の魔の手から救うためとは言え傷つけてしまった
その懺悔の気持ちが涙となって流れ出ている
隠した避妊具はせめてもの抵抗の証だったのかもしれない
井川静(じん)
井川静(じん)
そんな時、あすみさんが突然いなくなった
優真さんに拉致されたのだ
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