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中村雨音は語り始めた

たった10分前に起こった残酷な事実を……

-10分前-

中村雨音

いやあああああ!!

わたしは叫んだ

無駄なことだってわかってる

でも、声は喉から勝手に発せられ

甲高い波長がこだました

中村雨音

これ、これって本当なの?

中村雨音

だとしたら、だとしたら!

神崎隼也

落ち着け中村!

神崎という近い歳の男子が わたしをハッとさせた

そうだ、正気を保たないと

中村雨音

う、ご、ごめん。

神崎隼也

いいか。確かに落ち着いてなんかいられない状況だ。

神崎隼也

でもな、今は冷静になろう。
そうしないと、考えることもできない。

中村雨音

うん。考える。

神崎隼也

よし。深呼吸しよう。

言われた通りやった

幾分と気が落ち着いた

神崎隼也

……大丈夫か?

中村雨音

うん……ありがとう。
大分、落ち着いた。

神崎隼也

まずは、俺達がしなければならないこと。それを考えてみよう。

中村雨音

1階で、2人の夫婦?が殺されてた。
それも、ナイフでずたずたに……。

神崎隼也

あんまり鮮明には思い出すな。
無理すると、またパニックになる。

中村雨音

う、うん。やめとく。

神崎隼也

それからここに来たんだったな。
で、この部屋の机に置かれたこの紙。

神崎隼也

何やら不穏なことが書かれている。

オマエラノナカニ

アノフタリヲコロシタ

ハンニンガ イル

中村雨音

そう。それなんだけど、
本当なのかな?

神崎隼也

分からない。だけど、その可能性は低いと思うんだ。

中村雨音

どうして?

神崎隼也

俺たちの中にいるとして、わざわざ犯人がこんなことを残すか?

中村雨音

でも、サイコパス……みたいな人が犯人だったら!

神崎隼也

サイコパス……か。
それを考慮しても、外部班がミスリードのためにこの紙を残したと考えるのが妥当だと思うんだ。

中村雨音

でもでも、外部犯なんかどこに?

神崎隼也

例えば、隠しカメラがあるとか。

中村雨音

隠しカメラぁ?

神崎隼也

そう。どこかに仕掛けておいて、俺達が困惑して疑い合うのを楽しむために置いてあるのさ。

中村雨音

嫌な人だね。

神崎隼也

そうだな。でも実際、そんな奴が居てもおかしくない。

神崎隼也

後はCに倣って、実証かな。

皮肉っぽく神崎は言うと 棚や小さな収納 終いには天井などを調べ始めた

……が、そのようなものは どこにもないことが実証されてしまった

神崎隼也

……うーん。無いな。

中村雨音

無い、ね……。

神崎隼也

と、いうことは。

神崎隼也

もしや、この館内に外部班が潜んでいるのか。

中村雨音

ええ、嘘!

神崎隼也

その可能性は低いと思ってたんだけどな。

神崎隼也

あの扉……多分、玄関だよな。なら、俺たちが居たのは地下ってことか?そうか、だから少し傾斜があったのかもな。それで今は2階。

中村雨音

神崎くん?

神崎隼也

いや、ごめん。とにかく他の部屋も調べよう。犯人が潜んでるかも。

中村雨音

ちょっと待って。じゃあ、みんなを呼んできた方がいいんじゃ……。

神崎隼也

大丈夫。犯人は俺たちを殺そうとしてるんじゃない。現に俺たちは拘束されてなかったし、何やら意味深なメッセージまで残してる。犯人と出会っても、そう簡単に危害は加えないはずさ。

中村雨音

推測の域を出ないって!やっぱり危険だから、みんなを呼ぼうよ。

神崎隼也

俺は行くよ。2階の部屋中を簡単に見ていく。それで証明して見せるんだ。

そういうと 神崎くんはさっさと行こうとする

中村雨音

あっ!ちょっと!

心配して来てくれたのに 今では好奇心から逃れられないようだ

わたしは ミステリ好きの弊害を目の当たりにしている気がする

それからわたし達は 2階の部屋を見て回った

広い廊下と幾つもの部屋

綺麗な部屋も意外と多くて 電気もやっぱり通ってる

広いだけあって見通しがいい

それだけに 人が隠れてるなんてあり得なかった

どこにも人なんていなかった

中村雨音

どこにも……

中村雨音

いなかったね。犯人。

神崎隼也

ああ。

神崎隼也

それに分かった事は、ここはかなり大きい邸宅ってことだな。

中村雨音

そうだね。

そう 探索しているうちに

施設などではなく ここは大きな家であることがわかった

公共施設顔負けの 様々なサービスが充実しているようだったが

中村雨音

でもね、この家って横に広いけど2階までしかないんだね。

神崎隼也

そう……なんだよな。大雑把だけど、それでも俺達はしっかり全ての部屋を見て回ったはず。

神崎隼也

この事実は……不味い。

中村雨音

不味い?何が不味いの?

神崎隼也

まだ確信はできない。
けど、仮の話として聞いてくれ。

中村雨音

うん。

神崎隼也

2階には犯人らしき人物がいなかった。そして2階の全ての窓が、1階と同様に鉄板が打ち付けられていて、中からは到底、外からも簡単には開けられないほど厳重に封鎖されていた。

神崎隼也

1階はまだ調べられていない部屋も多いけど、2階が全て封鎖されていたのなら、1階もそうなっていたっておかしくはない。むしろ、そっちの方が整合性はある。

中村雨音

そ、そんなのって……。

神崎隼也

これが何を意味するか分かるか?

中村雨音

意味すること?

中村雨音

わたしたちは外に出られないし、救助に来る人たちも簡単に入ってこられないってこと?

神崎隼也

そうだ。その事実を踏まえると、また最悪の展開が考えられないか。

中村雨音

何、それ。

神崎隼也

"外部犯は存在しない"

神崎隼也

ただ監禁が目的なら、身を拘束しているはずだ。監禁ではなく軟禁するという、やけに親切な犯人さんだとして、せめてこの家には居ないとおかしい。

神崎隼也

幾ら厳重に封鎖しているにしても、俺達がここを突破して逃げ出すことはありえる。例えば、一旦別の場所に移るなんてことをするのも、同様の理由で考えられないと思うんだ。それに、ここまで封鎖すると侵入するのも手こずるし、外がどこなのかは知らないが、随分と目立ってしまうだろう。

神崎隼也

犯人の目的は何か分からない。さっき言ったように、疑心暗鬼になる俺たちを見て、楽しんでいるサイコパスなのかもしれない。それとも、ほかに何か理由があっての事なのかもしれない。

神崎隼也

どちらせにせよ、犯人の目的を遂行するためにも、犯人の利害を考慮するにしても。

中村雨音

もし、かして……。

嫌な予感がした

予感ではなく もっと理知的な予測かもしれなかった

わたしの脳細胞が この時だけ 機能しなくなればいいのに

切実にそう願った

神崎隼也

"俺達の中に犯人がいる"

神崎隼也

それが一番確実な推理だと思うんだ。

中村雨音が語り終えた時 場は再び、静寂の時が流れた

野嶋隆

…あ。

 無意味な発声だった

年長者として私は何か言うべきだと 義務的に思った

しかしそれは微かな嗚咽で 言葉になる事はなかった

どれくらいの時間が経っただろうか

 1分程度のことかもしれないし 20分はそうしていた気さえする

静寂を破ったのは 新城だった

新城綾香

よく分かったわ。神崎くんの推理は、理に適っていると言わざるおえないわね。

新城綾香

私達の中に犯人がいる。
じゃあ、その犯人は何を求めているのかなあ。

神崎隼也

それは、分からないです。

新城綾香

そう?私は一つだけあると思うわ。

神崎隼也

え?何ですかそれ。

???

何だそれは。は、犯人は僕たちをどうしたいって言うんだ!

新城綾香

新海拓馬(しんかい たくま)くん。何だと思う?

???

な、な、何で僕の名前を?

野嶋隆

新城さん。どういうことですか。確か、Cくんを除いた私達は最初に本名を教え合ったが…彼、Cくんは何も言わずに先へ行ったでしょう。

新城綾香

彼が項垂れている時に、少し拝借したんです。

そういうと 彼女はシルクのハンカチを差し出した

新海拓馬

あ、ああ!これ僕の!

新海拓馬

な、な、な、何をするんだよ。

新城綾香

最初から私は貴方達を信用しているワケじゃ無いの。それはこんな状況だから、当たり前よね。

新城綾香

だから、何か不審なものを持っていないか全員のポケットを調べさせてもらったわ。残念ながら、犯人に繋がるようなものは何もなかったけどね。

私はポケットを調べた

見ると 大切にしている懐中時計がある

確かに、私は右利きで右ポケットに無意識に入れるのだが、この時は左ポケットに収まっていた

野嶋隆

…….何て隙がないんだ。

神崎隼也

全く、こんな状況でもなければ神経を疑いますよ。

中村雨音

あ、本当だ!わたしの手鏡が左ポケットに入ってる。

新海拓馬

く、くそ。何なんだよ。

新城綾香

この際だから、改めて自己紹介しておけばいいんじゃ無いかしら。新海くん。

新海拓馬

………新海拓馬(しんかい たくま)。高校3年生の18歳。ふん。お前達とは違って、普段からミステリ三昧だ。そういう、"ニワカ"とは違うからね。

神崎隼也

…の割に、落ち着きなさ過ぎんだろ。

新海拓馬

それはお前らがおかしいんだ!
現実で人殺しが起こって、冷静になるやつなんて、どうかしてる!!

中村雨音

そう、だよね……。

 犯人はこの6人の中にいる という先程の話

そうなると 愉快犯なのかワケアリの犯人なのかは 知らないが

新海や中村が同意するのも頷ける

むしろ、なぜ

 なぜ新城は これほどに冷静なのか

神崎隼也

まあ、みんな思うところはあるだろうけどさ、一先ず新城さんの言ってた推理、犯人の目的とは何かを聞きましょうよ。

野嶋隆

それもそうだな。私もそれについては気にかかっているんだ。

新城綾香

いいでしょう。でも、こんなところで落ち着いて話せないでしょう?

新城綾香

雨音ちゃんの話だと、綺麗な部屋もあったみたいなんだし、そこで落ち合いませんか?

中村雨音

うん。それがいいですね。

中村雨音

落ち着きたいし、飲み物とかありそうな食堂はどうですか?

新城綾香

いいわね。そこにしましょう。

野嶋隆

分かりました。じゃあ、みんなそこで新城さんの話を聞こうか。

野嶋隆

しかし、その前に1階の部屋も全て見て回ろう。神崎くんの推理の裏をとるんだ。

神崎隼也

分かりました。どちらにしても、俺たちにショックはありますけどね。

野嶋隆

ああ、そうだな。だが、私達はこの目で確かめなければならない。

野嶋隆

では、行こうか。

そう言ってみんなの顔を見回す

やはり、目が合う

橘真衣

………。

 橘真衣……

彼女は一体……何者だ

私達は食堂へとやって来た

1階の探索は虚しくも 何者も発見することはなかった

こうして神崎の推理は より強固になったということだ

席に着くなり 皆一気に疲れが襲って来たようだった

新城だけが立って 何かを持ってくると厨房へと向かった

慌てて中村も立ち上がったが 新城に制され、結局彼女は座った

中村雨音

……疲れた。

神崎隼也

全くな。

中村雨音

疲れたのに、今日は寝られそうにないね。

神崎隼也

ん?うん。まあそうだね。

中村雨音

だって、今も1階にあの死体が!!

新海拓馬

や、やめろよ。余計に何も喉通らなくなっちまう。

中村雨音

わたしは何も食べないよ…。と言うか、あんなの見ちゃったら食べられないよ。

新海拓馬

それでも栄養は摂らないと、僕たち人間は機能しないぞ。知の枯渇こそ人間の死だ。

新海拓馬

死、なんだよ。

神崎隼也

お前の思想演説はいいんだよ。それに、"死"なんて言葉、今使うなよ。

新海拓馬

べ、別にそういうつもりじゃあ…

神崎隼也

今はデリケートなんだ。みんな気が立ってる。中村も新海も、あんまり気分が悪くなるような事は思い出さなくていい。

野嶋隆

しかし新海くんの言った通り、人は何かを食べないと元気がなくなる。少しは摂っておくのが賢明だぞ、中村くん。

中村雨音

はい……。

橘真衣

……。

疲労はピークに達している

様々な感情を抱くのに それはもやもやと膨らむばかり

皆、言いたいことが上手く言えないようだった

新城綾香

はい、これ。本当に簡単なものしかできなかったのだけれど。

中村雨音

うわー美味しそう!

簡単なサンドウィッチやウィンナー、 ハッシュドポテトなど、朝食のお供が多かった

しかし今はこんな軽食を求めていた

さもなくば、喉を通るまい

中村雨音

……美味しい。とってもおいしい。

新海拓馬

……ふん。

神崎隼也

新城さん。有難うございます。お疲れなのに、俺達の分なんか作ってくれて……

新城綾香

いえ、いいの。それより、ここの食堂にある食品庫なんだけどね、私達なら贅沢しても1ヶ月は持ちそうなほどあるわ。

野嶋隆

1ヶ月、ですか。

野嶋隆

そうなると、救助が来るまでには何とかなりそうですね。

神崎隼也

その前に、俺たちで何とか策を見つけて出られるかもしれません。

新海拓馬

出ら、れる。

新城綾香

可能性は十分にあるわ。
あと、電気はこの通りばっちりだし、水道も通ってるみたいね。

新海拓馬

ちっ。用意周到って感じだな。

新海はそう言うと 私たちを睨み回した

神崎隼也

おい新海。あくまで俺の推測なんだ。間に受けないでくれ。

新海拓馬

推測だろうと何だろうと、そうかもしれないんだろ。だったら、そう簡単に信用なんかしてたまるか。それはそこの女だって言ってたじゃないか。

新海は新城を指さす

新城は平気な顔で サンドウィッチを頬張っている

そして、唐突に彼女は鋭い目で こちらを向き、こう言った

新城綾香

"この事件を解き明かす"まで、犯人は私達を解放してくれそうにないわね。

新海拓馬

………………………は?

この作品はいかがでしたか?

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