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新城綾香

"この事件を解き明かす"まで、犯人は私達を解放してくれそうにないわね。

新海拓馬

……………………は?

彼女の口から溢れた音

そのハッキリとした しかし曖昧な

理解不能な音の響きに 私達は困惑した

野嶋隆

………………どういうことです?

新城綾香

野嶋さん。いま私は、犯人の目的について話しているんです。

野嶋隆

もく、てき?

神崎隼也

目的って、俺達を拉致してまで犯人が望んでいること……なんですよね。

新城綾香

ええ、そうよ。

新城綾香

"犯人からの挑戦"ってところかしら。

新城はコーヒーを優雅に飲んだ

その姿は こんな事態においても尚美しいと

間抜けな感想しか出てこなかった

新海拓馬

お、おい。その、新城とか言ったか。分かりやすく説明しろ。

中村雨音

新城さんお願いします。わたしもさっぱりわからなくて……

新城綾香

簡潔に言うとね。犯人の動機は知らないの。何度も出て来た愉快犯説や、何かしらただならない理由を持っている可能性だってあるわ。

新城綾香

でも、あの紙面に書かれた意味はわかったわ。「オマエラノナカニ アノフタリヲコロシタ ハンニンガ イル」だったわよね。これって、きっと挑戦よ。

新海拓馬

何でそうなるんだよ! 僕たちの中に犯人がいたとしても、そんなふざけた挑戦があるわけ……

新城綾香

"私達だからこそ"あり得るんじゃないの?

野嶋隆

あっ……。

そうか そうだった

私達の共通項 それはたった一つに違いない

野嶋隆

……「ミステリ談義会」。私達はミステリをこよなく愛するからこそ、そのような殺人に関する謎解きを提供する犯人がいるということか。

新海拓馬

狂ってる!! ワケアリだ? 笑わせるんじゃない。そんな奴は絶対にイカれてる!! でなきゃ理性がはなからない猿だ!!

新海の絶叫

それはこの場合 新海こそが常識的な反応だった

新城綾香

何度でも言うけれど、猿なんかじゃないわ。ちゃーんと理性を備えた人間よ。

新海拓馬

うるさい!!

野嶋隆

落ち着け。落ち着くんだ。

中村雨音

………その場合、犯人が犯人自身を指名してくれることを願う……自白行為になるんじゃないですか?

新城綾香

さあ。そこに複雑な心理の鎖が絡み付いてるのかもね。ちょうど、この邸宅の玄関の扉みたいに。

 そうだ

私達は逃げられないじゃないか

犯人の……思うままなのか

神崎隼也

……そうだとして、俺たちに何ができますかね。

神崎隼也

いくらミステリ好きだからといって、俺達はただの一般人ですよ。犯人の特定なんかできるものですかね。

新城綾香

できるできないの問題じゃないわ。
私達に選択の余地なんてないの。

野嶋隆

犯人の手の内にある……からか。

新城綾香

そういうことです。

新海拓馬

……クソ。

新海拓馬

こんな不条理なことってあるかよ。

新城綾香

不条理? いいえ、これは合理よ。犯人に審判を握られているのなら、それに従うまで。

新城綾香

さらに、先ほど意見に出たように、犯人は自分の首を絞めることになるだけなの。犯人を特定できれば、他勢でかかって救助が来るまで拘束しておけばいい。

新城綾香

私達の身の安全が確保されるという、最大の利点も含んでいるわけ。

新城綾香

……ね? 何も私達に損はない。

なにかを履き違えている

私達はただ 探偵の真似事をして死体を調べたり

極限状態で犯人の手の内で踊らされたりすることへの不満・違和感・不自然さ

これに耐えられないから 不条理だと思うのではないか

何かが、おかしい

野嶋隆

……おかしい……。随分とヘンテコな状況で、頭もおかしくなりそうだ。

野嶋隆

それでも私達は、事件を解明するしかないようだ。

新海拓馬

は……はは…

新海拓馬

………………そうだな。

中村雨音

それしかないなら……やります。

神崎隼也

やるしか、ないみたいだ。

橘真衣

……。

新城綾香

ふふ。皆さん決心がついたようですわね。食事の後、とりあえず今日眠る部屋を決めておかなくてはなりませんから、相談しましょうか。

中村雨音

あ、そうですね。ぱっと見ですけど綺麗な部屋は多かったので、なんとかなると思いますけど。

野嶋隆

じゃあ食事の後、決める方針でいこうか。

それからすぐに 寝室を決める段取りが始まった

私達はそれぞれに割り当てられた 部屋の中を確認し

 簡単に支度をすると 早速、事件解決への調査に取り掛かった

二体の屍……

それに突き刺さったナイフ

ともにうつ伏せで顔は見えない これを調べなくてはいけないのだ

神崎隼也

……まずは、やっぱり死体から見ますか。

新海拓馬

ふう。もう落ち着いたんだ僕は。
腹は決めた……大丈夫。

中村雨音

やっぱり無理かも……わたし。

野嶋隆

無理はしなくていい。見たくないものは部屋で待機するか、顔を背けるかしていていいぞ。

橘真衣

……。

橘真衣が顔を背けている

いつも冷静……あまりにも冷静で ある意味で異常だった彼女が

いまは普通の少女だ

中村雨音

真衣ちゃんも見るの嫌なんだね。
一緒に、部屋戻ろっか?

橘真衣

…………大丈夫。

中村雨音

そっか……。

私はその様子を尻目に男女の死体を観察した

野嶋隆

素人だからわからないが、死因はやはり刺殺か。

神崎隼也

そのようですね。背面は見た感じ、男の方は複数の刺し傷があります。女の方は……ないですね。

野嶋隆

と言うことは、女性は正面からまともに刺されていて、男性の方は後ろからやられたのか。

神崎隼也

まだ分かりません。正面を見るために……仰向けにさせましょう。

神崎は素手で 2人を仰向けにさせた

神崎隼也

うっ。これで良いですかね。

野嶋隆

……君、すごいな。何か軍手になるようなものでも探し出して、仰向けにさせれば良いだろうに。血まみれになってまで触らなくて良いぞ。

神崎隼也

いえ、良いんです。こうしてる間にも時間は刻一刻と経っています。俺達には、時間が残されていないかもしれないわけなんですから。

野嶋隆

それもそうだが……うっ。

神崎に気を取られていて 死者の面相を初めてそこで見たのだ

女性は目を閉じているが 特に男性は、物凄い形相をしていた

野嶋隆

一体……これは? 化け物でも見たような顔じゃないか。

神崎隼也

化け物を見たんじゃないですかね。

野嶋隆

え?

神崎隼也

いやもちろん、化け物みたいに恐ろしい犯人を、ですよ。

野嶋隆

そんな奴が私達の中にいるとは……。とても考えられんが。

野嶋隆

……おや、男性側は正面に傷がない。と言うことは、推測通り男性の方は背後を、女性は正面から刺されたということか。

神崎隼也

そういうことになりますね。

新城綾香

あら、そこの男性のそばの床を見てください。死体を引きずったような跡がありますわね。

野嶋隆

本当だ。確かにある。

神崎隼也

と言うことは、男性は女性の位置から少し離れていたということになりますね。

新城綾香

ふふ。それって、まさか気付いていなかったなんてことはないでしょうね。当然、男性は女性側が刺された姿を目撃し、部屋の隅に追い込まれながらも逃げようとした。

新城綾香

しかし、そこを犯人に刺し殺されて絶命した。死後、死体を移動させ、女性の遺体の隣へと放置した。

野嶋隆

そう言うことだな。

神崎隼也

そうだ、ポケットの方も調べますね。何か持っているかもしれない。

そう言って 神崎は死体のポケットをまさぐった

神崎隼也

うーん。何もないですね。

野嶋隆

まったく。褒めるべきなのか叱るべきなのか。

新海拓馬

……ん? 何だこれは。

新城綾香

どうしたの? 新海くん。

新海拓馬

これ、花か?

新城綾香

花ね。血で染まっちゃってるけど、これは白ユリね。ということは献花じゃないかしら?

新海拓馬

献花…‥って言ったら、あれか。キリスト教なんかでよくある、死者を弔うための花。

新城綾香

そうね。大体、白色の花がよく使われていて、一輪で供えるのが一般的よ。この場合、白い花に一輪という条件は揃ってるわね。

新海拓馬

待てよ。と言うことは、犯人は切り刻んでおいて死者を弔うつもりだったのか? そうなると、被害者と近しい関係にあった人物が犯人で、本当に何かのっぴきならない事情があったと言うことか。

新城綾香

新海くん、ようやく本領発揮かしら?

新海拓馬

うるさい……て事は、館内を調べて被害者の身元が分かるようなものがあれば、もっと確証が出てくるな。

新海拓馬

神崎、他に何かないのか?

神崎隼也

ないな。ポケット以外に何かを隠し持つところなんか、別にない。身分証明をするためのものを、特別に隠し持つ必要もないだろうし。

新海拓馬

ちっ。僕は館内を探索する。
誰か来ないか?

私は一瞬迷った

……が、 ここを調べていてもこれ以上の収穫はなさそうだと判断し、ついていくことにした

野嶋隆

新海くん。私も行くよ。

神崎隼也

俺も……あ、血がついてるな。仕方がない。一旦、洗って来ます。

神崎は洗面所に駆け込んだようだ

新城綾香

お二人は先に行っていてください。私は神崎くんと見てまわります。

野嶋隆

うん? しかし、別れる必要は……。

新城綾香

時間はないのかもしれないんでしたわね。分担して、効率よく探索しましょう。

新海拓馬

それはそうだ。じいさん、行くぞ。

野嶋隆

あ、ああ。

こうして私達は1階の探索を始めた

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