目に見える者何もかもが疑わしく思えてしまう。
なんでこんな事になったの?
あたしと棚谷と日野出は武器倉庫に来ていた。
武器倉庫は見るのも嫌なくらいに恐怖を感じるから出来れば行きたくない。
でも、棚谷が来いって言うから…
棚谷とは幼い頃からの付き合いだから少しは信頼してる。
ここに居る奴らよりは。
本当は…好意を抱いているけど本人には絶対言えない。
夏雨 切梛
ね、ねぇ、やっぱり行くの止めない?
千賀 棚谷
怖いなら置いてくけど?
夏雨 切梛
それはもっと嫌!
誰か襲ってくるかもしれないじゃない!
千賀 棚谷
いや、それは流石にこの現状ではないだろ。
日野出 結
2人は仲良いんだな。
夏雨 切梛
なっ仲良いとか…
千賀 棚谷
あぁ、幼い頃からの付き合いだからな。
それに切梛は怖がりだしな。
ほっとくと大変な事になる。
日野出 結
大変な事?
夏雨 切梛
余計な事言わないでよ!
千賀 棚谷
これ以上言うと怒られるから止めとくか。
夏雨 切梛
もう既に怒ってるから。
日野出 結
ははは。それより武器倉庫の中を真面目に調べるか。
千賀 棚谷
そうだな。
切梛は無理に見なくていい。
夏雨 切梛
…みっ見るもん。
千賀 棚谷
怖くないのか?
夏雨 切梛
怖いけど…自分の目で見たものは信じられるから…見るしかないじゃない。
日野出 結
君は意外と勇気があるんだな。
目に見える者は信じられる。
事実を知ったらあたしはそれで…
怖くない訳ない。
だって…もし、樹玖代ちゃんを刺した凶器が分かったなら少しは犯人に辿り着けるかもしれないじゃない。
あの子とは本の話で少しだけ仲良くなった。
勿論、信頼してる訳じゃないわ。
犯人が分かったならあの子の無念が少し晴れるかもしれない。
夏雨 切梛
あの子とは…本の趣味が合ってたから。
だから、犯人を知る事が出来たらあの子の無念が少しは晴れるかもって思っただけよ。
千賀 棚谷
本、か。
日野出 結
そう言えば君達はずっと図書館に居たよな。
散策が終わった後も。
夏雨 切梛
ええ、あの子と後は月夜ちゃんと3人で図書館に居たわ。
でも、暫くして月夜ちゃんは音楽室で紗雪と待ち合わせしてるからって言ってどっか行っちゃったけど。
千賀 棚谷
その後切梛達はどうしたんだ?
夏雨 切梛
面白そうな本があったら、紹介し合おうって…最後にこの本見せてくれたの。
私は図書館の中の本を樹玖代ちゃんに勧めてもらったのを思い出してそれをポケットから取り出した。
日野出 結
空の契り?
千賀 棚谷
ファンタジー系か?
夏雨 切梛
ファンタジー系だけどちゃんとした内容よ。
病気の女の子が天使に会う話。
夏雨 切梛
天使がその女の子に恋をするの。
でも、その子は病気のせいでもうすぐ死んでしまう。
日野出 結
悲しい話だな。
夏雨 切梛
いいえ。
そんな事ないわ。
その後天使が空の契りを破ってその女の子と天国で暮らすの。
夏雨 切梛
だから…ハッピーエンドよ。
千賀 棚谷
お前は相変わらず本の話になると饒舌になるよな。
夏雨 切梛
悪いかしら?
千賀 棚谷
いいや。それよりその本を渡した後に秋風はどうしたんだ?
夏雨 切梛
その後はまた図書館行こうねって言って別れたわ。
あたしはその後も図書館に居たのだけど。
日野出 結
じゃあ、その後の秋風の事は分からないって事か。
千賀 棚谷
そうなるな。
なぁ?その後何処かに行くとか聞いてなかったか?
夏雨 切梛
その後?
…自分の部屋に戻るって言ってたわ。
千賀 棚谷
そうなると…恐らく彼女は何者かに呼び出された事になるな。
日野出 結
確かに。
夏雨 切梛
…ちょっと待って!
そしたら、彼女のタブレットにその会話した内容が残ってるんじゃないかしら?
千賀 棚谷
それは有り得るな。
後で調べるか。
日野出 結
残念ながら武器倉庫には証拠は見つからなかったな。
夏雨 切梛
なら、キッチンに行くしかないのね。
嫌な予感しかないわ。
考えるだけで憂鬱になる。
あぁ、もっとあの子と本の話がしたかったな。