あやかし奇譚

すると、ためらうような間を置いてから、少女は口を開いた

そう言って、久遠はデジカメで周囲の撮影を始めた

変哲のない路地で、パシャリパシャリと音がする

久遠は呟きながら、スマホの地図アプリを起動した

ヒラサカハイツを目的地に設定し、移動を開始する

久遠は三年前に死んだ祖母のことを思い出した

何度も見舞いに行ったのだが、 認知症が進み、亡くなる前には久遠が誰なのかもわからなくなっていた

老女の「こっちこっち」という声に連れられて、どんどん道を進んで行く

角を曲がり、まっすぐ歩き、また角を曲がる

見覚えのない町を歩き続ける不安。久遠はなんとなくスマホを見た

今、自分は“道”を歩いている

だが、地図アプリのGPSは“ビルの中”を示していた

顔をしかめ、久遠は立ち止まった

そして周囲を眺める

薄い霧が立ち込めるような、嫌な雰囲気が漂っていた

言葉が口から漏れた。そこにあったのは…