2018年7月18日(水)
知内です。
ただし
徳尾忠
何?
知内です。
トレバー・コイルの話
徳尾忠
怖い話だな
知内です。
そう。
徳尾忠
聞きたい
知内です。
場所はイギリスのリヴァプール
知内です。
時代は18世紀半ば
知内です。
彼は蒸気機関車の機関助士だった。
知内です。
その仕事は、先頭車両にある機関室の中で、石炭を火室の中に放り込んだり、ボイラーに水を送り込んだりする、つまり、機関車の動力をつくることだった。
知内です。
彼の横には機関士のウィリアムズがいた。
知内です。
彼は機関車の動力を制御したり、ブレーキを使ったり、つまり、機関車を運転するのだった。
知内です。
ウィリアムズは無口だった。
知内です。
トレバーの仕事も自然と寡黙だった。
知内です。
彼らは二人とも仕事は長年していたから、そこまで会話をする必要はなかった。
知内です。
二人きりの個室には、ザックザック、ゴー、シューと、作業音と機関車の唸り声だけが響いていた。
知内です。
ある年の夏
知内です。
二人の乗った蒸気機関車は事故にあった。
知内です。
原因はトレバーの注意散漫だった。
知内です。
彼は姪っ子が今度結婚するという喜ばしい便りをもらい、頭がその事でいっぱいだった。
知内です。
彼はボイラーに水を送り込む作業を忘れ、代わりにスコップでザックザックと石炭を火室に放り込んでいた。
知内です。
空焚き状態になった機関車は、リヴァプールから数キロの上り勾配のある所で爆発した。
知内です。
乗客は大勢死んだ。
知内です。
トレバーもウィリアムズも死んだと思われた。
知内です。
しかし、大破した機関車の中からは二人の遺体が見つかることはなかった。
知内です。
それだけならただの事故で終わったはずだったが、ここから奇妙なことが起こった。
知内です。
次の年、また事故があった。
知内です。
原因は機関助士の注意散漫だった。
知内です。
彼は翌日ある女性と結婚をすることになっていた。
知内です。
その次の年も事故は起きた。
知内です。
これもまた機関助士の注意散漫によるものだった。
知内です。
やがて新たに線路が付け加えられた。これまでの事故は全て、上り勾配にさしかかった地点で起きていた。
知内です。
妙なことは全て同じ条件下で起こっていたため、機関車にも改良は行われたし、機関士・機関助士への教育も徹底された。
知内です。
なにより、付け加えられた線路が効果的だった。
知内です。
今まで上り坂や、山を避けた経路の線路は人や物を運ぶには非効率的だった。
知内です。
新たな線路は山にトンネルを設けて突き抜けた。
知内です。
それ以降、そこでは事故は起きなくなった。
知内です。
それからヨーロッパ各国で産業革命は起こったし、日本にも明治時代に入って蒸気機関車は開業された。
知内です。
多くの線路は平らになるよう線路がもうけられたが、地形的に難しいところではやむなく、勾配の上に設けられる線路もあった。
知内です。
現在に至るまでに、蒸気機関車の事故が、そういう上り坂で起きているらしい。
知内です。
全てではもちろんない。
知内です。
しかし、“坂道機関車”の事故は、例によって、機関助士の注意散漫によるものらしい。
知内です。
噂では、トレバーは悔いているらしい。ウィリアムズと意志疎通をとっていなかったこと。自分が注意散漫になったせいで大きな事故を招いてしまったこと。
知内です。
同じ条件がそろうと彼の魂が呼び寄せられる。蒸気機関車、勾配、幸せな機関助士、無口な機関士。
知内です。
世界中どこであっても絶対に避けられない事故
知内です。
それが
トレバー・コイル
の坂道機関車
トレバー・コイル
の坂道機関車
知内です。
事故に遭う前には聞こえるらしい
知内です。
ザックザック、ゴー、シュー
徳尾忠
やめろよ、嫌がらせか
徳尾忠
まさに今、蒸気機関車乗ってるとこだよ
知内です。
トレバーに気を付けろよ笑
徳尾忠
ザックザック、ゴー、シュー
って聞こえてるよ。
って聞こえてるよ。
知内です。
マジか⁉️
徳尾忠
蒸気機関車なら当たり前なんじゃないの?
知内です。
たしかに
徳尾忠
あれ、でもおれ車両は後ろの方か
徳尾忠
知内です。
ニュース
ちゃうよね?
ちゃうよね?
徳尾忠
ちゃう