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恋のかたち

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恋のかたち

9 - P.8「恋と気づくまで」

♥

38

2021年05月10日

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~アメノチハレ~

10月14日

___________________

あたしの気持ちを代弁するみたいに

雨が降り注いだ。

平井花凜

かなり濡れちゃった……

さっきから携帯がなっている。

椿樹が心配してかけてきたのかな……

いや、違うでしょ。

平井花凜

もう終わったのよ……

優子

あ、花凜ちゃん!

平井花凜

お母さん!

優子

おかえりなさい

優子

早く中に入って

平井花凜

ごめんなさい

平井花凜

電話……

平井花凜

今気づいたわ

電話はお母さんからだったのね。

ごめんなさい、嘘ついて……

何もかも。

優子

風邪引く前にふかなきゃ……!

平井花凜

ありがとう

平井圭二

おかえり

平井花凜

ただいま

平井圭二

今迎えに出ようとしてたが遅かったか

平井花凜

大丈夫よ

平井花凜

ありがとう、パパ

陽太

お姉ちゃんおかえりー!

平井花凜

ただいま、ようた

あたしのこと待ってたのかな。

可愛い、けど……

平井花凜

あ、お姉ちゃん濡れてるから

平井花凜

こっちきちゃダメよ

陽太

ええ〜遊ぼうよ

優子

お姉ちゃん今日はお勉強するから

陽太

ふん!

部屋に行っちゃったわ。

ごめんね、後で行くから。

優子

もうすぐお風呂わくからね

平井花凜

うん

両親は……少し心配性。

平井圭二

何かあったのか?

だけどこんな日は

そんなパパとお母さんが

いつも以上にあったかく感じる。

平井花凜

あ……

優子

花凜ちゃん……!?

優子

どうしたの!?

溢れてくる涙に

お母さんは戸惑ってるし

パパは心配そうにあたしを見つめてる。

平井花凜

ごめんなさい、違うの

あたしは大きな嘘をついた。

"彼氏ができた"

そう……

あたしは普通の女の子だって

主張するかのように……

本当のこと

まず、誰に何を言う?

言ったら、嫌われる?

人が離れてく?

大好きな居場所がなくなる?

平井花凜

あのね……

それがこわかった。

逃げることをやめた今

あたしが出す選択って何だろう……

そうずっと今の今まで考えてた。

あたしは……

平井花凜

あたしね……!

平井圭二

言わなくていい!

平井花凜

え……?

優子

どうしたの……!?

優子

急に大きい声出して

パパが大きい出すなんて初めて……

平井圭二

花凜が……

平井圭二

今何を言い出そうとしてるのかわからないが

平井圭二

泣く程苦しいなら無理に言う必要はない

そうゆう風に言われたら言えない……

平井花凜

違うの

平井花凜

あたし、嘘ついたの

平井花凜

最低なの……!

言えない。

あなたの娘は普通じゃないなんて……

平井圭二

花凜は最低なんかじゃない!

優子

花凜ちゃんもパパも落ち着いて……!

孫の顔も見せられない

なんて……

平井花凜

あたし、ほんとは……!

平井花凜

女の子が好きなの!!

優子

え……?

でも、今日言うって決めた。

平井花凜

あたしね

平井花凜

好きになった人が

平井花凜

女の子だったの

平井花凜

何度も何度も違うって

平井花凜

否定したかった……!

平井花凜

でも、好きで……

平井花凜

大好きで……

失いたく居場所も

実ることのない初恋も

嘘をつき続けたら全部

なかったことになる。

自分で否定することになる。

そう思ってしまった。

平井花凜

彼氏ができた、なんて

平井花凜

嘘……

平井花凜

ごめんなさい……

そんなの嫌よ。

だから……

"告白"することを決めた。

優子

そうだったの……

平井花凜

ごめんなさい

平井圭二

謝る必要なんてない

平井圭二

なんとなく

平井圭二

花凜はそうなんだろうと

平井花凜

え、嘘……!?

気づいてたの……

平井圭二

大丈夫だ

平井圭二

無理に普通でいようとしなくていい

平井圭二

花凜にとってそれが

平井圭二

"普通"だっただけだ

嫌われるかもしれない

自分に自信が無さすぎて

そんなことばかりだった。

優子

私……考えもしなかった

優子

気づけなかった……!

優子

ごめんなさい

平井花凜

そんな、こと……

平井花凜

あ、服ぬれちゃ……

優子

大丈夫だよ

優子

引け目を感じなくていいの

優子

誰を好きでも

優子

花凜、あなたは……

優子

優しくて可愛い普通の女の子

優子

私の自慢の娘なんだから

欲しかった言葉が

お母さんのぬくもりが

あたしの心をあたためる。

陽太

お姉ちゃん……?

陽太

なんで泣いてるの?

平井花凜

ようた……

平井花凜

もしかしたらもうここには……

平井花凜

いられないかもなんて

陽太

どっか行っちゃうの?

陽太

やだ!行かないで

平井花凜

わ!

あたしの居場所はちゃんとここにある。

平井花凜

もう2人ともぬれるって……

平井圭二

お風呂、わいたぞ

平井圭二

3人でもう入りな

平井圭二

風邪ひく前に

平井花凜

うん……!

安心していいの。

だってここは

あたしの家なんだから。

平井花凜

入ろうおかあ……

平井花凜

……

平井花凜

入ろう、ママ、ようた!

大好きだよ

パパ、ママ、そして陽太。

___________________

あたしは必ずここに帰ってくる。

雨も必ずやむ。

晴れたら今度は

あなたに

答えを出しに行くから

待っててね。

好きと気づいたのはいつだっけ?

それが恋だと知ったのはいつだった?

何がきっかけだった?

___________________

約5年前の春

___________________

物心ついた時から憧れてた

綺麗なドレスを纏った

美しいプリンセス。

そして、迎えにきてくれる

白馬の王子様に。

あたしはプリンセスになりたかった。

aくん

ぼく、かりんちゃんが好きなんだ

彼はいわゆる

"クラスで1番人気の男の子"

おとぎ話で言えば

きっと王子様。

平井花凜

あたし……?

aくん

うん

だから、嬉しいはずだった。

おかしい、ドキドキしない。

"好き"何か

恋がなんなのかなんて

まだわからない。

でも心が叫んだ。

この人じゃない。

平井花凜

ごめんなさい

aくん

そっか

aくん

誰が好きなの?

平井花凜

え……?

平井花凜

いや

始まったばかりの思春期に

周りよりちょっとだけ

大人になる成長が早くて戸惑ってる

心が身体に置いてつけなくて

焦ってる。

平井花凜

好きな人はいないわ

aくん

そうなんだ

その焦りが更に強く感じる瞬間が

5年生にあがってから増えた告白。

断ると決まってみんな聞く

じゃあ誰が好きなのって……

平井花凜

ごめんなさい

aくん

じゃあどんな子好き?

平井花凜

どんな……

aくん

足が早いとか

aくん

面白いとか

平井花凜

強くて優しくて、可愛い人

咄嗟に言ったのはこれだった。

aくん

何それ、女の子が好きってこと?

aくん

変なの

平井花凜

え……!?

自分でも混乱してしまって

わけがわからない。

aくん

もういい

aくん

バイバイ

平井花凜

ちょっと待って……!

aくん

触んないで気持ち悪い!

平井花凜

あ……

ただ、わかったのは

平井花凜

あたし、変なんだ

どうして?

王子様に憧れてたはずよ?

プリンセスみたいに

口調を真似したり

可愛い服着てみたり

なんで……?

平井花凜

わからない

平井花凜

あたし

平井花凜

一体誰が好きなの?

平井花凜

何に憧れてるの?

はずだった。

プリンセスになりたかった……

あたしが憧れたプリンセスは……

パパのプリンセスはママじゃなかった。

でも、あたしを産んだ。

平井花凜

どうして?

わからない。

あたしを産んだママは

パパを捨てて別の王子のところへ

いってしまった。

平井花凜

いたい……

わかんない。

あたしも捨てた。

捨てるくらいなら、なんで産んだの。

でも、お母さんという

新しいパパのお姫様が

あたしを迎えにきた。

平井花凜

そう……

平井花凜

可愛い10歳離れた弟を連れてきた。

強くて優しくて、可愛い人は

お母さんだ。

平井花凜

あたし、お母さん

平井花凜

大好きだもん……

ただ、お母さんみたいな人がいいって

思っただけだもん。

それだけ……ただ、それだけ。

平井花凜

女の子、なんて……

じゃあ、なんで否定できなかったの?

平井花凜

わからない

平井花凜

わからない……

混乱してるからか

気持ち悪いって

手を振りほどかれたからか

いたくて

何かがいたくて

あたしは大事な何かにこの日気づいた。

___________________

あたしが憧れたのは間違いなく

美しいプリンセス。

でも迎えにきてほしいと思ったのは

白馬の王子様じゃなくて

強くて優しくて、可愛い

お姫様だったこと。

~体育館で見かけた蕾~

3年前の初夏

___________________

あの日からあたしは

答えが出ないまま時を過ごした。

次の日には……

皆の視線

全てが

あたしに敵意を向けて

未だに頭から離れない

トラウマになってしまった。

先生

平井さん!

考え事してたら思い切り失敗して

転んで足くじいちゃった。

平井花凜

っ……たぁ

先生

大丈夫!?

先生

今足くじいたよね

平井花凜

すみません

そのトラウマを人に……

親にさえ言えなかったのは

敵意を向けられる理由が

まだわからなかったから。

相川純恋

先生ー!

先生

相川さん、どうしたの!?

相川純恋

バレー部のやつに色々入ってますよ!

相川純恋

使ってあげてください!

でも苦しかったあの日常も

今日狭い世界だっと一瞬で知った

それが突然芽吹いた。

先生

ありがとう相川さん!

相川純恋

いえいえー

相川純恋

応急処置、やってあげる

平井花凜

え……?

あたしの理想が詰まったような女の子。

ふわっとした少し茶色ぽいの髪の毛に

愛らしい笑顔。

相川純恋

これくらいならいつもやってるんで

相川純恋

先生は早く保健室の先生呼んできて下さい

相川純恋

お願いします!

先生

わかりました、ありがとう

平井花凜

ありがとう……

平井花凜

相川さん

名前を呼んだ時

時間が早くなったと勘違いした。

本当は心臓の鼓動が早くなっただけ。

相川純恋

いいえ〜

相川純恋

陸上部の平井さんだっけ

平井花凜

ええ……

相川純恋

ハードルはかっこいいけど大変だね

相川純恋

雨の日も室内で練習なんて

平井花凜

そうね……

顔が熱く感じる。

体温が上がった気がする。

顔を真っ直ぐ見れない。

相川純恋

運悪かったね

相川純恋

こんな時に足挫いちゃうなんて

狭い体育館で転んだのは恥ずかしい。

皆に注目されてしまった。

相川純恋

平井さん?

相川純恋

顔赤いけど

相川純恋

もしかして具合悪かったの?

平井花凜

そうなのかも

相川純恋

ちょっと〜!

相川純恋

大会あるんだから尚更ダメだよ無理しちゃ〜

陸上部の平井さんという認識だけで

こんなに優しい人は珍しい。

あたしにとっては特に。

平井花凜

そうね……

相川純恋

確か……

相川純恋

委員長やってたよね

平井花凜

ええ、一応

相川純恋

頼りがあるし優しいって聞いたけど

相川純恋

ダメだよ

相川純恋

自分のことも大切にしてあげてね?

あたしの視線より下にいた彼女は

上目遣いで心配そうにあたしを見つめた。

さっきまで早く感じた時が短く感じた。

平井花凜

あり……がとう

ずっと

探し続けた答えが喉まで出かかった。

平井花凜

す……

相川純恋

す?

平井花凜

すみれちゃん

"好き"

という2文字が

恋の蕾が芽生えたことを

証明してしまった。

相川純恋

どういたまして

久しく感じる優しい眼差しが

眩しくて、眩しくて

やっぱりあたしは彼女の顔を

真っ直ぐ見ることができなかった。

___________________

それは予想だにしない程刹那

芽生えることは誰しも簡単で

咲かせられるかどうかはわからない。

あたしはこの恋に水を注ぐことが

不可能だろう。

~告白と覚悟~

10月31日

___________________

トラウマを抱えて

嘘を重ねて

一生を過ごすのか

あたしは……

相川純恋

かりんちゃぁぁん……!

平井花凜

すみれ

相川純恋

すみれじゃないよ!

平井花凜

じゃあ誰なの?

相川純恋

すみれだよ!

平井花凜

今日ハロウィンね

平井花凜

お菓子あげるわ

相川純恋

ありがとう〜

相川純恋

じゃない

あたしはもう何からも逃げない。

逃げたくない。

向き合いたい。

平井花凜

何よ

平井花凜

どうかしたの?

相川純恋

15日

相川純恋

目を真っ赤に腫らしてきた

平井花凜

そうだっけ?

もう充分わかった。

あの選択が教えてくれたこと。

相川純恋

あれから1度も吉田くんの送り迎えないよね

平井花凜

元々あたしはいいって言ったのよ

平井花凜

椿樹がかってに……

あの関係は楽しかったし

偽りでもちゃんと幸せだった。

それでもやっぱり偽りは偽りのまま

虚しさは変わらぬままだったこと。

相川純恋

お昼ももうずっとどこで食べてるの?

平井花凜

どこでもいいじゃない

相川純恋

よくない!

相川純恋

もうそろそろ答えてもらうよ!?

相川純恋

かりんちゃんは……

平井花凜

好きよ

あの日言えなかった言葉が

想いが溢れて仕方ないこと。

相川純恋

え……

もう隠さない。

もう嘘なんてつかない。

平井花凜

純恋が

平井花凜

好きなの

嫌われる覚悟も

縋り続けた居場所を失う覚悟も

全部してきた。

平井花凜

嘘をついてたの

平井花凜

本当は

平井花凜

付き合ってなんてないの

でも、捨てない。

大事にしてきた初恋。

唯一の恋。

伝えることで真実にする。

平井花凜

好きだから

平井花凜

嘘をついた

平井花凜

あなたの隣にいたくて

平井花凜

卑怯な手を使ってでも

平井花凜

親友でいたかった

あたしの想いはちゃんといた、と

あなたに伝えにきた。

平井花凜

でももうやめるね

平井花凜

嘘つくのも

相川純恋

やだ

相川純恋

やだよ!

平井花凜

すみれ……?

相川純恋

私だって好きだよ!

相川純恋

大好き……だよ……

なんでよ。

平井花凜

どうしてすみれが泣くの……?

相川純恋

ごめんね

相川純恋

ごめんなさい

平井花凜

謝らないで……

相川純恋

大好きなのに……

知ってるわよ。

そんなこと。

いつだって、あなたは

あたしをあたしとして見てくれたもの。

相川純恋

そんな気がしてた

平井花凜

そっか

相川純恋

それでも私

相川純恋

和雪が好き

平井花凜

ええ

だから、好きなのよ。

ぶっきらぼうでも

何に対してもしっかり向き合うその姿勢

そんなところが可愛いの。

そして、あなたの眼差しが

あったかくて好き。

相川純恋

それでも……

相川純恋

親友でいて?

平井花凜

いいの……?

平井花凜

こんなあたしで

平井花凜

気持ち悪くない?

嫌われる覚悟さえあったのに

あなたは意図も簡単に

あたしの心を救ってくれるのね。

相川純恋

そんなことない

相川純恋

そんなこと言うやつ

相川純恋

私がぶっ飛ばしてやる

相川純恋

お願い

相川純恋

親友のままで

相川純恋

いてください

平井花凜

こっちのセリフよ

平井花凜

ありがとう

好きだった。

遠回りした。

沢山嘘を重ねた。

傷つけて傷ついた。

相川純恋

これからもよろしくね

相川純恋

花凜

平井花凜

ええ……

平井花凜

よろしくね

平井花凜

純恋

あたしの大切な初恋に

別れを告げるわ。

さようなら。

___________________

後悔はしてない。

あの時間があったから

今のあたしがいる。

もう迷わない。

新たな選択へと

あたしは進む。

平井花凜

ねえ、お昼一緒に食べてもいい?

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