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1 - 君のサフランが馨る空に

♥

735

2019年09月08日

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甘い香りに誘われて

分け行った森の奥で

僕は天使に出会った

ラリー

……っ

そこには紫の花が波打っていた。

咳き込んでしまうほどの甘い匂い。

その中心に、彼女がいた。

リイナ

あら

リイナ

見つかっちゃったのね

ラリー

こんな場所があるなんて

ラリー

君は?

ラリー

ここでなにをしてるの?

リイナ

おかしなことを聞くのね

リイナ

花を摘んでいるのよ

リイナ

ほかになにかあって?

リイナ

野生のサフラン、こんなに咲いているんだもの

リイナ

摘まなければもったいないわ

ラリー

もったいない?

リイナ

そうよ

リイナ

花の香りは気分を落ち着けてくれるし

リイナ

めしべはお料理に入れるととっても綺麗な色がつくの

リイナ

女の子の、月の不調も和らげてくれるわ

リイナ

たくさん飲むと危ないけれど

リイナ

適量を守ればなにより心強い薬よ

ラリー

へぇ

ラリー

花なんて、キレイかどうかしか考えたこともないや

リイナ

ほとんどの人はそうよ

リイナ

私、西の村に住んでるの

リイナ

いろんな人から、よく薬草を頼まれるのよ

ラリー

僕は東の村に住んでる

ラリー

ラリーってんだ

リイナ

私はリイナ

リイナ

ねぇラリー、サフラン摘みを手伝ってくれる?

ラリー

いいよ

ラリー

どれくらい?

リイナ

そこにある背負いカゴいっぱいに!

ラリー

そんなに!?

リイナ

そうよ、どんなにあっても足りないわ

リイナ

必要な人はいっぱいいるんだから

笑う彼女は

僕には確かに、天使に見えた。

それから僕は、リイナとよく 森で出会った。

リイナは森の薬草に詳しくて

僕はその刈り取りを 手伝っていた。

リイナ

葛は根を砕いて、水にさらすの

リイナ

しばらくしたら桶の底に白いものが溜まるから

リイナ

そっと取り上げて、天日に干すのよ

リイナ

体を暖めて、風邪を治してくれるわ

リイナ

バーネットは葉を揉んで使うと血止めになる

リイナ

サラダにしてもとってもおいしいのよ

リイナ

どうしたのラリー、今日はなんだか具合が悪そう

リイナ

え? 食べすぎ?

リイナ

あなたって本当に面白い人!

リイナ

じゃあこれを飲んで

リイナ

リンドウを煎じたものよ

リイナ

とっても苦いけど、スッと楽になるわ

僕の知らないことを たくさん教えてくれるリイナ。

いつも花と植物に 囲まれているリイナ。

花のように香るリイナ。

柔らかく笑うリイナ。

 

僕の天使、リイナ。

月の輝く空が赤く染まったのは

それからしばらく後のことだ。

僕の村でも、あまりの明るさに人が外へ歩き出ていた。

子どもまで声をあげている様子に、僕も思わず外へ出た。

ラリー

なに、どうしたの?

村人

西の村で、魔女を火あぶりにしてるそうだ

ラリー

魔女!? 火あぶり!?

村人

なんでも、怪しい薬を娘たちに飲ませてたらしい

村人

赤い薬なのに、水に入れると黄色い汁が出るらしくてな

村人

しかも飲んだ娘の一人は、悪魔を見るようになったそうだ

ラリー

赤い薬なのに、黄色い汁……

すぐに、サフランだと理解する。

ラリー

怪しい薬なんかじゃないよ、それはサフランだ!

ラリー

女の子のお腹の痛みを癒してくれる薬だよ!

ラリー

たくさん飲むと危ないから、量は必ず伝えて--

ラリー

まさか、まさかその魔女って……!

村人

どうしたラリー、なにをあせってる

村人

そういえば魔女は若い娘と聞いたが、まさかお前……

村人

おい、ラリー!!

気がつくと、僕は 森に駆け出していた。

道に迷うことなんてない。

森は向こう側から赤く、 明るく照らされていた。

ラリー

リイナ……!

頭の中に、彼女の姿が浮かぶ。

ラリー

どうか、どうか君じゃありませんように……!!

誰かの助けになることを 喜んでいたリイナ。

いつも優しかったリイナ。

植物を愛していたリイナ。

森に愛されたリイナ。

またねと笑って別れたリイナ。

僕の、リイナ!

僕を出迎えたのは、 燃え盛る業火だった。

村人たちは火を囲んで 雄叫びをあげている。

魔女め、よくも娘らをたぶらかして!

あんな危険な薬を飲ませていたなんて!

聖浄なる火で穢れを祓え!

魔女が消えれば、呪いも消えるはずだ!!

彼らが見つめるその先には

杭にくくりつけられ

すでに声を出すこともできず

美しかった髪を燃やされた

リイナがいた。

ラリー

リイナーーーーー!!

おい、なんだお前!

入ってはいかん、お前さんまで燃えてしまう!

そうよ、あの子は魔女で--

ラリー

なにが魔女だ!!

ラリー

今までさんざん、彼女の世話になったんだろ!?

ラリー

誰か一人でも、彼女の話を聞いたのか!

ラリー

彼女の知識を学んだか!!

ラリー

誰か一人でも、悪魔を見た子の過失を疑わなかったのか!!

ラリー

彼女が渡したのは、森に咲くサフランのめしべだ!

ラリー

決められた量以上を飲むと、幻覚を見るけど

ラリー

守りさえすれば痛みを癒してくれる良薬だ!

ラリー

彼女はいつも薬を集めてた、なぜと思う!?

ラリー

あんたらが彼女を頼ったからだ!

ラリー

あんたらの喜ぶ顔が、彼女の幸せだからだ!!

ラリー

そんな彼女に、そんなリイナに!

ラリー

なんでこんなことをできる!!

叫んで、頭から水をかぶり、火に飛び込む。

燃える杭ごと抱きしめて、炎の中からリイナを連れ出した。

彼女はもうその全身から

彼女の色をなくしていた。

 

ラリー

リイナ、僕がわかるかい

うっすらと目が開く。

だけど瞳すら焼けて濁ったそこからは、

涙が煮える音だけがした。

ラリー

リイナ、今年もたくさんの花が咲いたね

ラリー

なんて、君は毎日見ているか

リイナの灰は、僕らが出会ったサフランの花畑にまいた。

不思議なことにそこからは、

季節ごとに様々な薬草が花開いた。

彼女が種を持っていたのか、

それとも森が彼女を 癒しているつもりなのか

どちらでも僕にはかまわない。

ただ一つハッキリしているのは、

たくさん咲くサフランの中で たった一つだけ。

彼女がつけていたリボンと同じ、

ピンク色のサフランが 咲くということだけだ。

ラリー

……そこは絶景かい、リイナ

花びらに触れ、そっと呟く。

ピンクのサフランは風に揺れて、甘く静かに香っていた。

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コメント

10

ユーザー

めっちゃ2人の愛を感じる。。

ユーザー

1話1話すごい力を入れているんですね!😳 私も見習わないといけません✨

ユーザー

凄まじい誤解ですよ!?😱 カタヅケ屋の話一つでも、調べ物せずには書けないくらいの無知です😭 なんとか面白いもの書きたいなーと、ジタバタしてるだけですよー👍

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