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私はオーストリア、精神科医だ。 地方の小さな病院で患者を診て、 のどかな景色を眺め、 デスクの上に置いてある観葉植物に水を やる日々を過ごしていたが、 国連からの招集を受け、 とある病院に転任することとなった。
オーストリア
ダンボールに入っていた 書類を戸棚にしまったり、観葉植物を デスクの上に設置したりして なんとか片付かせ、 コーヒーを飲んで一息つく。 そして、少し雑にまとまった書類、 カルテに手を伸ばした。
オーストリア
そう愚痴をこぼしながら、 手始めに1番上辺に積み重なっていた 書類をペラっとめくって手に取る。
オーストリア
…どういうわけか、アメリカがここの 病院に入院している様だった。 体調を崩してしばらく入院してるとは 聞いていたが、まさかここの 病院だったとは…。 なんて思いつつ、カルテに じっくりと目を通す。
オーストリア
「環境汚染病」、それはどの様な カントリーヒューマンであっても なり得る病。 「環境破壊病」も存在し、 よく「環境汚染病」と 一括りにされるが、これら二つの病は 少々異なる点が多い。 しかし、説明するとかなり長くなる。 両方の病の根源を簡潔に 説明するのであれば、 人類の環境破壊・汚染によって 引き起こされる病だ。
オーストリア
オーストリア
そう怒りを込めた愚痴をこぼし、 思わずカルテを強く握りしめる。 ほんのわずかに紙がくしゃっと鳴り、 私はその音で理性が戻ったのか、 深呼吸をして落ち着きを取り戻した。
オーストリア
キーボードをカタカタと指先で弾く様に 文字を打つ。
オーストリア
【『環境破壊病』 どのような国でもなり得る奇病。 この奇病に罹ると、免疫機能が下がり、 砂が混じった咳をよくするようになり、 指先が黒く変色し、眼球が濁り、涙や 汗、血液などの体液はオイルのように ベタベタするようになる。 原因は人類による環境破壊。 治療法は環境を再生させること。 環境がある程度再生するまで 治らない。】
オーストリア
カタカタとキーボードを打つ音が響く。 一息つくように、コーヒーを少量 喉に流し込む。 口の中で広がる苦味を感じ取りながら、 作業を続ける。
オーストリア
【『環境汚染病』 どのような国でもなり得る奇病。 環境破壊病が更に重篤になり、 且つ撒き散らす側になった場合に 発症する。発症した場合、 環境破壊病での症状にプラスして 体液全てに酸性の毒が生じ、 物や生き物を溶かしてしまう。 更に咳をすれば砂を大量に撒き散らし、 植物などに触れれば植物を一瞬で 枯れさせる。環境破壊病と同じく、 環境を再生させることで完治する。】
オーストリア
一旦メモ書き作業を中断し、 患者のカルテに手を伸ばす。
オーストリア
…ソビエトは、 とうの昔に滅んだ筈じゃ…。 しかし、カルテによく目を通すと、 彼は自我が喪失した状態で発見され、 保護としてこの病院に 入院しているらしい。 …こんなことって、あるんだな…。
オーストリア
生きていることにまずびっくりだが、 カルテを見るに、どうやら彼は 「自我喪失病」と「黒涙病」を 併発して患っているらしい。 どちらも精神科医になる者として、 これぐらいは知っていたが…、 本当にかかってる患者は初めて見た。 …いや、もしかしたらそういう 患者こそ、こういう大きな病院に 入院するのだろう。
オーストリア
ソビエトのカルテをチラチラと 見ながら、キーボードで文字を打つ。
オーストリア
【『自我喪失病』 長い年数生きた国がなりやすい病気。 しかし、短い年数であっても 深く精神的に傷つくと起こり得る。 その名の通り自我が喪失してしまい、 喃語しか喋れなくなり、知能も ほぼ無になる。治療は困難だが、 愛情をかけて治療するとごく稀に 完治することがある。しかし、大抵は 精神的な傷が癒えるだけで 自我の喪失が治ることはない。】
オーストリア
そう独り言をこぼしながら、 カタカタとキーボードを打つ。 残りのコーヒーを喉に全て流し込み、 カンッという音を立ててデスクの上に コップを置いた。
オーストリア
【『黒涙病』 深く精神的に傷ついた国が 発症しやすい病気。自我喪失病と 併発して発症しやすい。 瞳が真っ黒になり、 常に黒い涙を流し続ける。表情が 変わっても涙は流れ続けるため、 基本的に止める方法がない。しかし、 精神的な傷が癒えてくると、瞳も涙も 黒が薄くなり始め、完全に精神的な傷が 癒えると完治する。】
オーストリア
椅子から腰を上げ、 部屋の扉を開ける__________
ナース
オーストリア
扉を開けると、すぐ目の前には ナースがいた。 …私にどの様な用事だろうか…。
ナース
オーストリア
ナース
オーストリア
ナース
オーストリア
そう愚痴を溢しつつ、 予定外の業務をこなすためにナースに 案内されながらソビエトの病室へ 向かった。
続く…