私の家はいわゆる“出る”家だ。
一口に“出る” と言っても、原因、数、直接被害の有無など色々あるが、 私の家はたくさんの幽霊がただただ通り過ぎて行くだけだ。
幽霊だから足も無いし、うるさくする事もない。たまに視界の隅を黒い影が横切る程度だ。
何故この家にいるのか? 一体何をしたいのか? そもそも意思があるのか?
……なんてことは考えるだけ無駄だった。
聞こうにも“彼ら”とはコミニュケーションが取れないのだ。
向こうの声は聞いた事がないし、そもそもこちらの声も聞こえないようだ。 口が見えないから何を言ってるかの予想もつけられない。 筆談も考えたが、ペンを持てないようですり抜けては床に落ちた。
そんな訳で、理由の追求は最早諦めた。
ある日の風呂上がり、私はドライヤーで髪を乾かしていた。
ブォォーン…ブォォーン…
小さい頃はこの音が嫌いだったが、さすがに高校生にもなるともう慣れた。
でも、黒い影が通ることにはまだ慣れない。
ブォォーン…ブォォォーン …
ギィィ……バタン!
背後の扉が開いて閉まる音。
私の家は古いのでドアを少し開けるだけで結構デカい音が出る。
「今日お母さんは夜勤だし、お父さんは遅くなるって言ってたっけー…一人っ子は寂しいな〜」
つい、いつもの癖で口に出してしまった。
ギィィ……
また音がした。
今日はうるさいなぁ…。
解説はコメント欄でします
コメント
3件
常に大量の幽霊が出入りしている、という情報が念頭にあったため、真実に気づきませんでした! お見事です
〜解説〜 結論から言うと、主人公はこの後とても酷い目にあいます。 家にでる幽霊はペンなどを持つことは出来ない →ドアを開けたのは人間 母は仕事中なのでかえってくるはずがない。 父なら1度ドアを閉める理由がない。 →ドアを開けたのは知らない人 さらに主人公はひとりごとで親も兄弟も家にいないことを言ってしまった…… 今彼女が叫ぼうが暴れようが気づく人はいないことを侵入者に知られてしまったのです…