聖典には載せてくれないから、 死因は分からない。
ただ一つ、一つだけ、 それに関連した嬉しい掟がある。
三の掟。
未来を変えることを許す。
可能であれば、 その人間をもっと生かすことができる。
私に、できたことはないけれど。
きっとこれは、ルールというより神様の気遣いなのだろうと、勝手に思っている。
まあでも私は、未来を変えるためにがんばるのである。
十和
山田さん
山田さんの返答に、私は口を尖らせた。
そんな私を見て、山田さんはフッと笑みをこぼした。鼻で。
まったく、解せぬやつである。
閻魔様ならきっと、山田さんの舌を引っこ抜いているだろう。
山田さん
十和
山田さん
そう言ってケラケラと笑う山田さんは、けっこうモテているという。
看護師さんたち必要以上にが優しくしてくれることから、好意を抱かれていることには気が付いている、とのこと。
自意識過剰の可能性、大。
だけど、今まで生きてきた中で、〝こい〟という感情を持ったことはないらしい。
〝こい〟でないなら〝ゆうじょう〟かと思い、次の作戦に移ることにした。
十和
山田さん
十和
山田さん
正直に言うと、私に友達はいない。 欲しいとは思うものの、天使には単独行動を好む人が多いのだからしょうがない、とあきらめた。
十和
山田さん
十和
山田さん
ぱあっと向日葵が咲いたような、 澄んだ空みたいな山田さん。 純粋な笑顔を向ける、素直な山田さん。
だけど、 点滴の量からしても、
そう長くはないと思う。
まあでも、私の仕事は治すことではなく、最期の快楽を与えることだ。
それを伝える義理はないし、 そんなに器用でも、ない。
残された時間も少ないかもしれないから、私は作戦Bに移ることにした。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!