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rt
彼の姿をこの目で捉えた時、目頭が熱くなった
来てくれた…ただそれだけのことが、俺にとっては救いだった
逸る鼓動に、少しだけ静寂が訪れて
今も怖い
まだ何も解決していない、だけど
───助かった
そう思えた
ky
彼は俺と男を交互に見ると、俯いて置物のように動かなくなった
たった数秒
それだけのはずなのに、長く感じる沈黙だった
男性客
立ち尽くす彼の姿がおかしかったのか、自分が酔っ払いであることを棚に上げ鼻で笑う男
男性客
ky
だが、その威圧的な言葉にも彼は反応しなかった
男性客
男の苛立ちが滲み、掴まれた手首に力が加わる
rt
あまりの痛さに顔をしかめる
彼の眉がピクリと動いた
ゆっくりと顔を上げる
重い前髪から覗く視線だけがこちらに──
掴まれている手首に落ちる
酔いでぼんやりとした目が更に細められる
ky
深く息を吐く
この一瞬
全てを把握したみたいに
ky
男性客
ky
驚くほど静かな声
男性客
底のない静けさだけが張り付いたような表情
ky
一歩、近づく
ky
気のせいか、彼は淡々としているはずなのに
ky
完全には抑えきれていない何かが滲み出ている
男性客
男は鼻で笑う
ky
そう言うと、彼はゆっくりとこちらに近づき、目の前でピタリと止まる
と、次の瞬間
ky
彼は、男の腕を思い切りガシッと掴んでいた
ky
彼の纏う雰囲気が、ガラリと変わる
男性客
男の身体が一瞬強張るのを感じた
ky
男にずいっと顔を近づけ
ky
地を這うようなドスの利いた声を漏らした
目の奥に光など無く、ただ冷たい
男性客
彼より背の高いその男に睨まれても
ky
彼は逃げなかったし、顔を逸らさなかった
むしろ、更に男と距離を詰め
ky
男性客
ky
彼は聞く耳を持たず、男へ質問を迫った
男性客
男の声に更なる苛立ちが募っていくのが伝わる
一室の空気がどんどん重く、張り詰めていく
男性客
普段の調子が戻ってきたのか、男は彼を煽り始めた
男性客
そして、怒り任せに叫ぶ
男性客
男性客
ky
彼の息が一瞬止まった
細めた目を見開き、胸ぐらを掴む手をだらんと垂らす
ky
喉の奥で押し潰された声は、もう理性を抑える気すら感じられない程低く地に落ち、もはや無音に近かった
男性客
ダンッ!!!!
男性客
あまりに突然過ぎる出来事に、男は戸惑いの声を上げるしかなかった
彼の右手は男の顔面すぐ横を通過し、個室の扉を拳で殴っていたのだ
ky
彼の声に、姿に、陰が落ちる
ky
ky
更に見開かれた瞳と広がった瞳孔が、不気味さをより加速させた
男性客
僅かに怖気づいた男の腕を掴む力が、より一層強くなる
男性客
ky
指が男の肉に食い込む
ky
男性客
ky
限りなく落ちた低い声とともに、更に力が増していく
ky
男性客
男はもはや抵抗の余地なし、掴んでいた俺の手首をあっけなく解放した
その隙に男から離れる
rt
掴まれていた手首に、嫌な温かさが残っている
ky
だが、彼は止めなかった
俺が解放されたことに気づいていないのか、男をこれでもかという力で抑え続けている
彼の目にはもう、痛みに顔を歪める男しか映っていなかったのだ
男性客
骨が軋むような勢いで、逃げ場も隙も与えないまま、じわじわと締め上げる
ky
彼の声は、もはや情をも感じさせない
怒りも、苛立ちも、とうに超えていた
彼の表情は、ゾッとするほど「無」に等しかった
rt
ky
気づけば、彼を止めようとしていた
もし仮に、彼の拳が男の顔面に当たっていたら…
rt
数歩先の彼に近づこうとする
が、突然足の力が抜け、カクンと膝から崩れ落ちる
rt
ky
彼は男から手を離し、咄嗟に受け止める
そして、俺の手を握ってくれた
その手は熱く、力強かった
その姿は、もう男に向けていた冷たいものではなかった
男性客
やっと解放された男は壁によりかかり、舌打ちをした
男は2人がよそ見している隙にその場を去ろうとする、が
ガンッ!
手洗い場にまたも響く打撃音
彼は壁を蹴り、逃すまいと男の行く手を阻む
ky
彼の顔は、先程の恐ろしいほどの無表情に戻っていた
男性客
男は逃げ場を失い、その場にへたり込む
ky
彼は黙って俺を後ろへ匿うと、男を見下ろす
ky
ky
ky
rt
ky
握る手に、より一層力が入る
だが先程の強い力とは程遠く、とても優しかった
ky
ky
rt
rt
ky
ky
rt
ky
ky
ky
男性客
ky
ky
男性客
男はよろよろと立ち上がり、腕を押さえながら去っていった
……To be continued