感情を無くした人形

父さんが死んで、 俺は1人になった

唯一の支えが

歌だった。

全部どうでも良かった。

死んでも良かった。 でもめんどくさくてやめた。

俺は行き場所がなくて 気づいたらここにいた。

俺はオッドアイだったから 大人にも同世代の奴にも 煙たがられた。

俺は生きる意味を 見いだせないでいたんだ。

ﾍﾞﾁｬｯ

俺の頭に投げられたのは 残飯…なのか？

ｶﾞｯ

ｶﾞｯ！！ゴスッ！！

ん？名前はないのかって？ ここでは人が人として 扱われない所だからな。

さっきみたいな暴力も 俺にとっては 日常茶飯事。

ま。施設は広いから 出れはしないんだけど

俺は今日も 意志を持たないぬいぐるみに 話しかける

まぁ奴らが俺に 靴なんてくれるわけないし、 年中裸足なんだけどな

ほら。言ってる側から 足切ったし。

誰も治療なんて してくれないけど

でも痛みには慣れてるから 散歩は続ける。 …血はドクドク出てるけど 気にしねぇ

そもそも。 俺汚ねぇ布地しか 着てねぇし。

盗むこともできるけど バレたらそれこそ 亡き者にされるわ

ここら辺は誰も近寄らない

さぁ。始めようか

起きねーんだけど。

歩いていると ある物でつまづいた

それは…

小さな少女だった

え馬鹿なの？は？え？ もしかして寒気とか感じない人？？ え？こわいわー

ゲシゲシッ

起き上がった少女の瞳は 恐怖という色で 染まっていた

え怖。何？ 俺何かした？

チラッと見えたのは さっきの職員

俺は思わず 褐色肌の男の子の後ろに 隠れてしまった

少し背の高い男の子が 後ろに隠してくれた

ぐいっ

ぎゅー

…懐かしい匂いがする。

褐色肌の男の子が指さしたのは 小さな薄ピンク色の花

その花の名前を 俺は知っていた

がしっ

強制的に呼び捨てに されてしまった…

こんな時間が続けばいいのに

そう思っていた矢先…

『お前は自由』

そんなイザナの言葉を 思い出した。

バキッ

骨逝ったわ。 やべ。ふざけてる場合じゃねぇ

ｶﾞｯ

ドカッ

気がついたら殴っていた

そして職員に 殴り返された

でも痛みは無かった。

目の前に葵がいた。 葵の頬は赤く腫れていた

うわカッケェ 惚れるわ

チラッと見た 葵の目線はシンイチローに よく似てた。

ぎゅっ

思いっきり ほっぺをつねってみる

それから ときある事に イザナと鶴くんは 俺の元へやってきた。

ある時は…

またある時は

がしっ

持ち上げられた

またまたある日は

2人が俺の心の中にあった 寂しさと孤独を埋めてくれた

2人は色んなことを教えてくれた 勉強、施設のこと、 2人が出会った時のこと

何も知らない俺に たくさんの知識を教えてくれた。

__あの時までは

気づいたら葵のことを 目で追っていた

いや。ねぇよ。

引くな殺すぞ

葵を見つける度に 駆け寄り名前を呼ぶ

すると優しい顔で振り向いてくれる

ポケットにあった飴をあげた

口を開けると 俺を真似して葵も口を開ける

は？可愛い

飴を知らなかった葵

万遍の笑みは最高。 生きてて良かった。

やべ。心の声漏れた

鶴蝶が変なこと言ってたから ひっぱだいといた

あー。幸せ。

____あの時までは

イザナと職員…

何してんだよ…！！

俺が…他の施設に…？ もう…2人と会えなくなる…？

ぎゅっ

ぱちん

イザナは着いていたピアスを 片方俺の耳にはめた

お前を/君を

『愛してる』

…叶に出会うまで あと2ヶ月…

思い出した。 忘れてた頃の記憶。

だから、

俺は幼い頃、葵に貰った ぬいぐるみを少し撫でた