れい
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巨大軍事国家の総統である グルッペン・フューラーが刺された。
そんな大事件は瞬く間に広まった……
なんてことはなく。
ロボロと鬱先生が一般兵の 行動の流れを操作していたため誰も その事を知ることはなかった。
その上、元々一般兵と総統とでは あまり関わる機会が無い。
もちろん、戦争中の発作により前線に 飛び出し、書記長に 追いかけられている所を 見た事くらいはあるだろうが、 言うなればその程度である。
つまり事情を知る幹部達が反応を面に 出さなければ一般兵がその事に 気付くことは無い。
そしてそれに関しても、 幹部達はプロ。
空元気には見えない"いつも通り"を 見事に演じていた。
「一般兵の前」では。
カチャ………カチャ………
いつもの幹部達の騒がしさからは 想像がつかないほど、今日の食堂は 静まりかえっていた。
それこそ、食器のぶつかる音が響く くらいに。
誰も喋らず、誰も笑わず。
全員がただただ静かに食事を口に 運ぶ。
レイ
流石のレイも、若干顔を 歪ませるほどだった。
いつもの食害も今日はなく、 ゾムは無表情でもすもすと 昼食を食んでいる。
鬱が出した少し大盛りの ランチは、瞬で皿から消え去った。
ゾム
食べ終わったゾムはボソッと呟いて 手も合わせずにダクトに消えた。
それを合図に、一人、また一人と 食堂を出て行く。
最終的に残ったのはレイと、 皿洗い当番の鬱だけだった。
レイ
先程の空気もかなり気まずかったが、 この2人きりで無言という状況も 中々居ずらい。
失礼と分かっていながらも、 そそくさと部屋を出ようとしたレイを 鬱が呼び止めた。
鬱
レイ
鬱
鬱は苦笑しながら今日の昼食が 乗せられた盆をレイに差し出す。
レイ
鬱
鬱
レイ
レイはこくりと頷き、自身の体には 少し大きい茶色い盆を受け取った。
鬱
いつも通りへらりと笑った顔が 酷く悲しく見えて、ざわりと胸が 騒ぎ立った。
レイ
扉を閉じる時に隙間から チラリと見えた空席が、光に照らされ 儚げに映った。
レイ
コンコンコン
レイ
この軍の幹部が滅多にしない ノックをして声を掛ける。
トントン
レイ
トントン
トントン
扉を開けたと同時に聞こえてきた トントンの覇気の無い声。
何重にも重なった黒い隈。 眼鏡の奥の瞳にはハイライトの カケラも無い。
現状を理解し、これは"アウト"だと 判断する。
トントン
レイ
トントン
ドン!
散らばった書類を掻き分け、 大きな音を立ててレイが盆を置く。
普段ならするはずも無いレイの行動に トントンは少し驚いた様な顔をした。
レイ
そこまで言われてやっと、盆の上に 置かれた物が食事だということに 気付く。
トントン
ラップをされてまだ温かそうな それは、激しくトントンの食欲を 誘ったが、それすらもトントンは 拒否した。
……その様子に、ついにレイが、
レイ
レイ
この軍に来て初めての大声を出した。
トントン
レイ
レイ
トントン
ぐるるるるる……
トントン
完全に言い切る前に、体がそれを 否定した。
レイ
レイ
自分の痴態を見られた羞恥心と、 初めて見た部下の圧てんこ盛りの 笑顔で板挟みにされたトントンは、 大人しく箸を取るしかなかった。
完食まで見届けたレイはやっと元の 無表情に戻った。
それで密かに胸を撫で下ろしたのは トントンのプライドに関わるので 伏せておこう。
レイ
トントン
…あの一件以来、幹部達は 全員沈みがちだ。
もちろん面には出さないわけだが、 特にトントンはひどい。 部屋にこもりっきりになった。
元々のホーカワリックも相まって、 今この様な有り様であるわけだ。
レイ
トントン
レイの造語に思考を走らせた トントンは、立っている彼女を 見上げる。
するとレイはささっと前髪を一方に 垂らし、へらりとした笑顔を浮かべ、言った。
レイ
レイ
ご丁寧にも、少し声を低くし 彼のモノマネをして言ったのだ。
たいしたサービス精神だことで。
トントン
思わず、変な声で 吹き出してしまった。
少し赤みが差した頬を見て 安心したかのように、レイは後ろ手で 持っていた白い紙袋を出す。
トントン
レイ
レイ
レイ
若干の早口で捲し立てるレイに、 トントンはやっと理解する。
つまり、みんな心配しているから、 早く食って寝て休めと。
トントン
結果的にはレイにかなりの 負担を掛けることになる。
今トントンはグルッペンの分の書類も 捌いている。
また断ろうとした瞬間、またレイが 笑顔を貼り付けた。
トントン
そんなにぽんぽん笑顔ができるなら 普段からしてほしい。 もう少し悪寒のしない笑顔で。
レイ
トントン
ただ、そのくらいの会話が できる位には活気が戻ったようだ。
トントンは手渡された紙袋の中身を 何気なく見る。
トントン
レイ
トントン
レイ
トントン
レイ
レイ
トントン
レイ
トントン
レイのお小言を言い、机の上の 書類の山を抱え出す。
レイ
トントン
トントン
レイが完全に部屋から出て行く前、 トントンはついずっと脳内に 残っていたことを聞いた。
トントン
トントン
ずっと、気にかかっていた。
この軍の幹部達は身内に甘々で、 それに比例して忠誠が厚い。
そんな彼らが裏切るような 真似をするとは思えない。 思いたくない。
ただ、その問いにレイは。
レイ
さらりと、その答えを"YES"と した。
もう笑顔は張り付いていない、 無表情の仏頂面で。
あの事件当時。
同時に、用水路爆発事件が 起きていた。
そのせいで、近くにいた ゾム、シャオロン、その他の動ける 幹部は駆り出されていた。
明らかに、人為的。
それが向こうの所為だとすると、 わざわざそんな面倒くさい事を しておいて、本命の総統暗殺は 正面からの強行突破?
おかしい。
何かが、おかしい。
……内通者は、いる。
その日の食堂は、いつになく 忙しなかった。
本当は全員今すぐにでも 駆け出したかったが、"彼"に 「朝食くらいは摂ってこい」と 言われたから。
全員が過去最速で目の前の食事を 平らげていく。
一番最初に食べ終わったのは、 やはりゾム。
ゾム
言うが早いが、ダクトに消える。
それを見た他の者達も、 もう無理だという風に 食べ終わっていようがいまいが、 席を立った。
いつもならここでトントンの怒号が 飛んだが、今日ばかりは彼も 何も言わない。
むしろ一緒になって走っている。
まあ、今日くらいはいいだろう。
そう思えるくらい、"彼"が 目を覚ましたのは幹部達にとって 喜ばしい事だった。
一番最後にレイが医務室に着くと、 すでに幹部達は"彼"を囲っていた。
トントン
幹部一同
トントンの堅苦しい言葉と共に、 幹部達が一斉に"彼"…グルッペンに 声を掛ける。
チーノ
シャオロン
トントン
鬱
グルッペン
エーミール
一通りの茶番にエーミールが笑顔で 締めくくり、グルッペンが 小さく咳払いをする。
その動作一つで室内の空気が 変わった。
グルッペン
グルッペン
部屋全体に目線を落とした グルッペンに、ショッピとコネシマが 目配せをし、話し始める。
ショッピ
ショッピ
コネシマ
そこまで言って、沈黙が流れる。
グルッペン
グルッペン
いきなり、グルッペンがレイに話を、振った。
かなり不自然な、個人に対して。
何故? そう思う幹部も少なくは なかった筈だろう。
レイ
此方も何故か無言で目を閉じている。
グルッペンは軽く溜息をつき、 言った。
グルッペン
グルッペン
「内通者だと 断定したんだ?」
幹部一同
チーノ
ゾム
一斉に色とりどりの目がレイに向く。
困惑と、疑念を混じえて。
最強と謳われる幹部達の圧。 少女は、それを全面に受けながら 怯むことなく顔を上げた。
レイ
グルッペン
グルッペン
レイ
レイ
グルッペン
レイ
誰かが唾を飲む音がする。
誰もが、レイの言葉を待っていた。
その中で、レイは"1人"だけを 見ていて………
レイ
「貴方でした」
「ゾムさん」
幹部一同
ペリドットの瞳が、静かに揺れた。
れい
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れい
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れい
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れい
れい
れい
れい
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コメント
17件
ゾムさん関係、必要そうなの引き抜いてきました!
え?伏線入れるとか神じゃないですか! あ、いやもう神でした_ ´ཫ` _ )_