テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
味噌巾着
59
#魔法
青色のヘッドホン🎧
111
姫宮いお
1,543
妃翠が生まれた日のことを、家族は今でもよく覚えている。
妃翠は生まれたとき、首に臍の緒が巻きついていた。
体も小さく、まだ十分に成長していなかったため、生まれてすぐにNICUへ入ることになった。
小さな体にたくさんの管。
ガラス越しに見守るしかない家族の胸は、不安でいっぱいだった。
おばあちゃんも、お父さんも、毎日のように様子を見に来てくれていた。
それでも、妃翠がいちばん安心するのは、お母さんの声だった。
妃翠は、お母さん子だった。
妃翠には、姉と弟がいる。
姉の名前は瑚柏(こはく)。
弟はまだ幼く、いつも元気いっぱいだった。
姉と弟はお父さんにそっくりで、
不思議なことに、妃翠だけがお母さんにそっくりだった。
目元も、笑い方も、どこか柔らかな雰囲気も。
家族はよく言っていた。
「妃翠は本当にお母さんに似てるね」
その言葉に、お母さんは少し照れたように笑っていた。
けれど――
その「そっくり」が、やがて悲しい出来事を引き起こすなんて、
このときは、まだ誰も想像していなかった。
体の小さな妃翠は、お母さんのミルクを飲んで、少しずつ大きくなっていった。
妃翠という名前は、姉の名前が瑚柏だから付けられた。
宝石のようにきれいな名前を並べたい、という家族の願いからだった。
小さな命。
小さな体。
それでも確かに、家族に囲まれて生きていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!