…思えばあの夢を見始めた頃からだった気がする。
自分と同じ顔の女の子と話をしている夢を。
以来、自分が自分でなくなるような感覚…。
意識がふと離れていくような感覚に襲われる…。
晴人
月様、判決を。
月
…え?
晴人
罪状を聞いてましたか?
そこにいる被告は庭園の生け垣を
荒らした罪で裁判にかけられているのです。
月
生け垣を…?
何でそんな馬鹿げた事を
するのよ?
被告
俺は薔薇は
もう見飽きたんだ!
被告
毎日毎日
薔薇の世話ばかりで
頭がどうにかなりそうだ!
そうだ!ひまわりにしよう。
薔薇を全てひまわりにしてしまおう!
月
ひまわりですって!?
よりによってあんな能天気な
花を…。許せないわ!
月
死刑よ、死刑!
国民1
死刑…?
国民2
死刑だぞ…。
国民3
死刑だわ…。
まるで先々代の女王のようだわ…。
月
(…私はああならないって
決めたのに!)
なのに最近
やたらと罪人が多い…。
判決が面倒だわ。
月
(いっそ全員…。
死刑にできたら
楽なのに。)
晴人
被告人を
禁固刑に
処します。
兵士
…報告します
例の禁固刑に
処された罪人が
何者かに殺害されました!
青斗
俺は青斗。
お前を迎えにきた。
ああ、これだ。
彼は私が抱いていた
不安や違和感そのものだ…。
愛梨
…どうして。
愛梨
(怖い…!)
青斗
…。
走って寮に戻ろうとした時
チラッと後ろを見た。
すると青斗は片手を上げた。
そして何と水滴が消えた。
愛梨
(えっ…!
水滴が消えた!?
…これは夢だ。
悪い夢なんだ。)
得体の知れない恐怖。
街を騒がせている殺人鬼に狙われた
女の子はこんな気分だったかもしれない。
息を切らしながら部屋へと入る。
愛梨
(足音は聞こえない…。
逃げ切れたの?)
青斗
よくここが分かったな。
愛梨
!!
月
…犯人は?
晴人
まだ、捕まっておりません!
急ぎの調査中なのですが…
月
何事!?
晴人
城門の方からですね…
月
映しなさい!
晴人
…はい!
晴人
映ります…!
…!
これはっ!
月
クーデター!?
国民1
女王はどこだ!
国民2
女王を殺せ!
国民3
無慈悲な
判決をする
女王にこそ死を…!
月
(まさかここまでなんて!)
月
罪人1人の死で
ここまで…!?
とにかく私の無実を
証明しないと!
晴人
…無駄でしょう。
おそらく、今の国民に
月様のお声は届かない
でしょう。
晴人
それだけ世界に
影響が出ているということです。
月
っ…!
じゃ、どうすればいいの!?
晴人
…こちらへ。
私に付いてきて下さい!
青斗
…何故この部屋を
選んだ?
青斗
お前はやはり知っているのか?
愛梨
(どうして…?
鍵だって、ちゃんとかけたはずなのに…。
どうやって入ってきたの?)
青斗
濡れているな…。
と言いつつまた青斗は
不思議な力で濡れている愛梨を乾かした。
愛梨
…!!
青斗
これで良いだろう。
来い。
愛梨
…え?!
晴人
…お急ぎ下さい!
月
離しなさい!!
晴人
一時的に避難するだけです。
月様の力の暴走が抑えられるかもしれません。
月
でも、私がいなくなったら
この世界は…民はどうなるのよ!?
月
誰がこの世界を
治めるの?
晴人
この世界のためです。
…ご決断下さい。
あくまで一時的なものです。
私もお供しますから。
行きましょう!
月
(嫌!)
青斗
行くぞ
愛梨
(嫌!)
月
(私は…)
愛梨
(私はどこにも行きたくない!)
青斗
お前が白の世界にいたと
するならばここは黒の世界だ。
晴人
私達が黒の世界にいたのと
するならばここは白の世界です。
青斗
ここでお前は女王となり
国を治める。
晴人
ここでしばらく
普通の高校生として
暮して頂きます。