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シュウジ・ドストエフスキー

……

シュウジ・ドストエフスキー

……兄様

目の前には、とある少年を抱きしめる兄の姿と、

その弟子と、その息子の姿があった。

シュウジは黙って歩く。

兄の気持ちが痛いほどわかって、歩く。

そして、見下ろす。

アイラトと目が合う。

アイラト・B・ゴーゴリ

公爵様……

もう、公爵なんかじゃないよ、 と言いたかったのに、言葉が出なかった。

ドロフェイと目が合う。

ドロフェイ・ドストエフスキー

公爵さま……

もう、君の公爵さまなんかじゃないよ、 と言いたかったのに、言葉が出なかった。

ドロフェイ・ドストエフスキー

……あのね、ドローニャたちね、がんばったんだよ……

ドロフェイの目はかすかに潤んでいた。

ドロフェイ・ドストエフスキー

父さまに心から笑ってほしくて、

ドロフェイ・ドストエフスキー

公爵さまが幸せでいてほしくて、

ドロフェイ・ドストエフスキー

ラーティクが健やかに生きてほしくて、

ドロフェイ・ドストエフスキー

……がんばったんだよ。

ドロフェイ・ドストエフスキー

本当はね、ドローニャとアツシくんはね、

ドロフェイ・ドストエフスキー

双子として父さまのところに行く予定だったんだ

ドロフェイ・ドストエフスキー

でもね、アツシくんがまだやることがあるからーって

ドロフェイ・ドストエフスキー

ドローニャ、一人で行ったの。

ドロフェイ・ドストエフスキー

ドローニャ、天使だってこと忘れてたから、たくさん迷惑かけちゃったんだ……

ドロフェイ・ドストエフスキー

アツシくんは公爵さまにお告げしに行ったり、神様にお願いしに行ってたりしたのに……

ドロフェイ・ドストエフスキー

……これは、きっと罰だと思うの

ドロフェイ・ドストエフスキー

何もしなかったドローニャへの罰

ドロフェイはそう言い終わると、少年の頭を撫でた。

ドロフェイ・ドストエフスキー

だから、君は残っていて。

ドロフェイ・ドストエフスキー

罰なら、ドローニャだけで受ける。

ドロフェイ・ドストエフスキー

君はこれまでたくさん、努力してきたんだから。

ドロフェイ・ドストエフスキー

誰よりも人を愛していたのだから……

ドロフェイ・ドストエフスキー

アツシくん、ごめんね……

優しく、その少年の頭を撫でる。

ドロフェイの目から涙が滝のように溢れ出ていた。

アイラト・B・ゴーゴリ

……それなら、僕も行く。

アイラト・B・ゴーゴリ

こんなにも迷惑かけたんだ。

アイラト・B・ゴーゴリ

今でいえば、探偵社に。昔でいえば、もう数え切れないくらい

アイラト・B・ゴーゴリ

だから、僕も罰を受ける。

アイラトはドロフェイの肩を抱いて、静かに嗚咽を漏らした。

フョードル・ドストエフスキー

……それでは、いけません。

フョードル・ドストエフスキー

お二人は天国へ行きなさい。

フョードル・ドストエフスキー

僕は地獄へ行き、アバドンと同じ罰を受けます。

フョードル・ドストエフスキー

……すべては、僕のわがままでしたから

兄の声はひどく震えていた。

ああ……よかった。兄だ。ずっと、待ち望んでいた、兄だった……

シュウジ・ドストエフスキー

……それなら、私も一緒に行こう

シュウジ・ドストエフスキー

私も罪を犯した。だから、私も罪を償うべきだ。

フョードル・ドストエフスキー

だけど……

シュウジ・ドストエフスキー

……それに、ようやく、共にいられるんだ。ようやく、兄様と暮らせるんだ。

シュウジ・ドストエフスキー

私と兄様と一緒にいる時が一番楽しいのだから

幼い頃、二人で一緒に本を読んだ思い出が蘇る。

……その、驚いた顔。申し訳なさそうな顔。嬉しそうな顔。

どれもシュウジが愛していた兄の表情だ。

フョードル・ドストエフスキー

でも、僕はあなたたちを危険な目に合わせるわけには……

ドロフェイ・ドストエフスキー

何言ってるの、父さま

ドロフェイ・ドストエフスキー

今まで息子として愛してくれたから、今度はドローニャが父様に愛を返すよ

アイラト・B・ゴーゴリ

あなたがいなきゃ、僕はきっと絶望の中死んでいた。
だから、あなたについて行くんです

シュウジ・ドストエフスキー

私が孤独で仕方がなかった時、兄様だけが手を引っ張ってくれた

シュウジ・ドストエフスキー

だから、今度は私が兄様の手を引く番だ

アイラト・B・ゴーゴリ

それがどれだけ苦しいことでも、僕たちはきっと耐えられる。

アイラト・B・ゴーゴリ

だって、誰よりも人を愛してくれる先生がそばにいるから

フョードル・ドストエフスキー

……ドーラ、アイラト、……シュウジ……

フョードル・ドストエフスキー

で、でも、僕はこの子を……

ドロフェイ・ドストエフスキー

アツシくんなら、大丈夫。

ドロフェイ・ドストエフスキー

彼はまた幸福に満ちてよみがえるから。

ドロフェイ・ドストエフスキー

新約聖書の、イエス・キリストがよみがえったみたいに。

フョードル・ドストエフスキー

……

シュウジ・ドストエフスキー

さあ、行こう。

シュウジ・ドストエフスキー

四人なら何も怖くない

シュウジ・ドストエフスキー

竜巻が来ても嵐が来てもへっちゃらさ

シュウジ・ドストエフスキー

だって私たちは愛に包まれているのだから

それぞれ、家族のように手を繋ぎ、それぞれがフョードルに手を差し出す。

涙で霞んで見えない目を必死に凝らしてフョードルは、

フョードル・ドストエフスキー

……うん

と、手を握った。

アツシ・ドストエフスキー

……よかったあ

アツシ・ドストエフスキー

ようやく、幸せでいられる……

アツシ・ドストエフスキー

僕たちのお父さまはひどいお方ではないから、きっとあなたたちを赦してくれる。

アツシ・ドストエフスキー

……さあ、僕はまた天使、……おっと、奇跡の子として役目を果たしますか

……つし……し……き……お……

……やく……なさ……し……

し……! ……あつ……! ねえ……つし……!

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