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蘭
ドライヤーで二人分の髪を乾かして歯を磨き俺たちは並んでベッドに横になる。
蘭
ギュッと抱き締めた彼女の体はあったかい。 ちゃんと・・・・・あったかい。
蘭
生きてる。彼女の体はちゃんと脈打っている。
蘭
それでも彼女は動かない。笑わない。喋らない。
蘭
そっと彼女の細い首に手をかける。 片手で締め上げてしまいそうなほど、細い首。
蘭
いっそのこと一緒に終わらせてしまえば もう俺も、コイツも、苦しむことはないのかな。
蘭
唇にそっとキスを落とす。 ここもまだあったかい。柔らかい。
蘭
もう一度彼女をキツく抱き締めて目を閉じる。
蘭
蘭
___俺のせいでお前をこんなふうに ”お人形”にしちまったのだから俺は・・・・耐えることが、償いなんだよな。 勝手に終わらせるのは・・・・・ダメ、だよな。
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蘭
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蘭
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10月15日(土)
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蘭
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女なんて、どれも同じだと思っていた。 同棲を許したのだってほんの気まぐれで自分のパーソナルスペースに入り込んできても 不思議と嫌な気持ちにはなんない相手で。 俺のために全てを捨てる覚悟もあるというこの女はほんの気まぐれに、 居心地も悪くないからと長いこと俺の恋人として隣に置いていた奴だった。 外の世界とは関わりを断ち切ったこの女はただこの部屋で俺の帰りを待つだけの生活で。 全ては俺のために彼女が選んだことだったのに 彼女が、そう、選んでくれた道だったのに 俺はそんなことー 頭ん中から、すっぽりと抜け落ちていた。 反社の仕事は忙しい。 まぁ俺はわりと何でも自由にやるタイプの人間だと自負しているが、それでもストレスやらなんやらは溜まってくる。 それを発散するのに”女はちょうど良かった。 仕事が忙しければ忙しいほど、 イライラが溜まれば溜まるほど、 俺は名前も顔も何ひとつ覚えちゃいねぇ 適当な女を見つけては荒々しく抱いて発散してた。 彼女に飽きた、と思っていたのもあった。 何年も一緒にいりゃ当然だろ、ってな。 ひとつのモンに縛られて生きることなんか俺の性に合ってるとは思えねぇから。 だから罪悪感なんかも感じたことはなかった。 彼女が浮気に気付いてることも分かってはいたがそれでも俺を止めるベルにはなりゃしなかった。 彼女はずっと、この部屋で俺を待っていたのに。 彼女の世界には俺しかいなかったのに俺が彼女を、ここに閉じ込めたのに___
○○
蘭
この日も俺は仕事に疲れ切っていた。 そこら辺で捕まえた女の腰を抱き寄せながらまぁ近いしいいかと思ったそれだけの気持ちでこの部屋に久しぶりに足を踏み入れたんだ。 ようやく帰宅した俺に駆け寄ってきた彼女は女を連れた俺を見て、目をデカくして驚いていた。
☆
俺に体を押し付けてる隣の女がそう問いかける。
蘭
○○
☆
蘭
☆
彼女に見せ付けてる快感みたいなモンがあった。 だから俺は呆然としてる彼女の目の前で、この適当な女に舌を絡める深いキスをしてやった。
蘭
蘭
彼女にポンといくらかの金を投げた。立ち尽くす彼女の足元に、ヒラヒラと金が落ちていく。
蘭
○○
蘭
○○
この時の○○は、どんな表情をしてたかな。 俺はロクに顔も見なかったから分からねぇ。
○○
寝室に消える直前にそう名前を呼ばれたけれど俺は気にもとめずに、そのまま扉を閉めた。 これが__俺が最後に聞いた、彼女の声だった。 散々好き勝手に女を抱き潰した後。気を失った女はそのままに、俺は水を取りにキッチンに向かった。
蘭
リビングのソファに座る人影が視界に入った。 はぁ…・・・・なんだよコイツ、うぜえな。
蘭
ため息混じりに吐き捨てて俺は冷蔵庫を開ける。 中にはたくさんの料理の作り置き。 おそらく俺の帰宅を待ち続けていたであろう彼女が毎日作っていたものだろう。 それでも俺は特に何も感じることはなくミネラルウォーターを手に取って喉に流し込んだ。
蘭
蘭
蘭
出て行かなかった彼女にイラついて俺はかなり煽るように小さな背中にそう言った。 それでも彼女は、何も言わない。
蘭
ゆったり歩きながら近付いて肩を掴む。
蘭
___やっぱり彼女は、何も言わない。
蘭
そこで俺は、ようやく彼女の表情を見た。
蘭
目は開いているのに、瞳は真っ黒だった。 焦点が合っているようで合ってない。 瞬きひとつすることもなく、ただ固まったまま
蘭
呼びかけても体を揺らしても反応がない。 ただグラグラ揺れるだけで力も入っていない
蘭
この真っ黒な瞳は、どっかで見たことがある。 そうだ・・・・・うちの首領だ。マイキー・・・・・マイキーのあの暗い瞳と、よく、似てる。 だけどギリギリ保ってるマイキーとは違ってこの瞳は、そう・・・・・完全に
蘭
生きてるのにまるで死んでるようなその姿。 俺が壊した・・・・・俺の、恋人。
医者
蘭
手当り次第の闇医者を呼び寄せて彼女を診せた。 だがどの医者にも、解決策は見い出せなかった。 彼女を元に戻す方法が分からない。 生きてるのに生きるために動くことのない彼女はこのままでは死ぬのを待つばかり。 どうしたらいいのか誰にも分からない中 この中年の女医だけが、俺にそう言った。
医者
蘭
医者
医者
俺は今、頭を撃ち抜かれたような気がした。
医者
医者
医者
そんな話にはなんの根拠もねえ。医者のクセに医学で証明されてないことを言ってたが 俺は、きっとこれが答えだと思った。 ○○は今、夢の中で生きている。
医者
蘭
この女医には○○に専属でついてもらった。 俺が仕事で不在の時はこの医者が○○を診てる。 お人形になってしまった彼女はこうやって、細い管で何とか命を繋いでいる。
竜胆
蘭
竜胆
蘭
よく○○の様子を見に来てくれる竜胆はいつもお人形になった○○の頭を撫でてくれる。 どことなく気持ち良さそうに見えちまうのはきっと、俺の目がそう望んでいるだけだった。
竜胆
竜胆
蘭
竜胆
竜胆
昔から可愛がってた竜胆のそんな言葉を受けても ○○が目を覚ますことはなかった
竜胆
ごめんなぁ、竜胆。兄ちゃんのせいなんだ。
蘭
蘭
蘭
蘭
来る日も来る日も彼女を抱き締めて、優しく撫でてキスをして、それでも○○は………夢の中。
蘭
お人形になった彼女の肩に、顔を押し付ける。
蘭
蘭
蘭
蘭
蘭
ついに、俺は泣いちまった。情けねえよなぁ…・・・
○○
あぁ、そうだ。これが○○の声だった。 ついに俺も夢の中に入れたかな、 ○○を探さなきゃ、 ○○はどこに
○○
あれ、やけに近くで聞こえるな。 暗闇の中で何も見えねえや、どこだよ。
○○
___違う、これは、夢の中じゃねえ。
○○
俺は__眠ってねえ。これは…現実だ。
ゆっくりと目を開く。 そのまま時間をかけて顔を上げれば___
○○
久しぶりに見た、色の付いた大きな瞳が俺を優しく見つめていた__
蘭
○○
○○
蘭
○○
力いっぱい抱き締める。 すっかり折れそうなほど細くなってしまった体を壊さないようにしなきゃいけねぇとは思ったけど つい加減ができなくて、○○は苦しそうだった。
○○