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六月の午後。湿り気を帯びた風が、開け放たれた窓から教室へと忍び込んでくる。
放課後の喧騒の中、湊は机に突っ伏したまま、目の前に置かれた一枚のプリントを呪うように見つめていた。
湊
プリントの上部には、真っ赤なインクで「32点」という無慈悲な数字が躍っている。
平均点は65点。つまり、赤点。
そしてそれは、来週から始まる地獄の補習を意味していた。
悠真
冷ややかで、けれどどこか聞き慣れた落ち着く声が頭上から降ってくる。
顔を上げると、そこには眼鏡の奥の瞳を冷たく光らせた悠真が立っていた。
悠真は湊の幼馴染であり、学年トップを争う秀才だ。
そして、湊が密かに想いを寄せている相手でもあった。
湊
湊
悠真
悠真
悠真
湊
湊
悠真は呆れたように肩をすくめると、隣の席に腰を下ろした。
彼は湊の赤点プリントをひょいとつまみ上げ、細い指先でペンを回す。
悠真
悠真
湊
悠真
湊
悠真
湊
湊
湊
湊が頬を膨らませて抗議すると、悠真は一瞬だけ表情を和らげた。
だが、すぐに元の鉄仮面に戻り、低い声で告げる。
悠真
悠真
湊
悠真
その言葉の裏にある「執着」に、湊は気づかない。
ただ、幼馴染としての「責任感」だと思い込み、胸の奥をチリリと焼くような痛みを覚えるのだった。
そこへ、廊下からバタバタと騒がしい足音が近づいてきた。
大和
勢いよくドアが開き、バスケ部特有の熱気と共に、長身の男子――大和が飛び込んできた。
その後ろから、スマホの画面に視線を落としたまま、モデルのような美少年、理央がゆったりと入ってくる。
理央
理央
大和
大和
大和は湊の席まで一直線に駆け寄ると、その首にガシッと腕を回した。
大和
大和
湊
湊が苦笑いしながらも、どこか嬉しそうに大和の腕を叩く。
その光景を見ていた悠真の手元で、カチッという鋭い音が響いた。
シャーペンの芯が、筆圧で粉々に砕けている。
悠真
大和
大和
悠真
悠真の纏う空気が一気に零下まで下がる。
理央がようやくスマホから顔を上げ、面白そうにその様子を眺めた。
理央
理央
理央
理央の言葉に、教室の空気が凍りつく。理央は確信犯だ。
彼はこの4人の中で最も早く、悠真の「独占欲」と湊の「無自覚」に気づいていた。
悠真
悠真が睨みつけるが、理央は涼しい顔で受け流す。
理央
理央
大和
理央
理央は大和のユニフォームの裾を強引に引っ張り、嵐のように去っていった。
教室に残されたのは、微妙な空気の中に置かれた湊と、怒りを押し殺した悠真の二人だけだった。
その夜。湊は悠真から課された「復習ノート10ページ」という苦行に立ち向かっていた。
机の上のスマホが、短いバイブ音を立てる。
2ーBの愉快な俺ら(4)
やまと
やまと
やまと
りお
りお
やまと
やまと
みなと
みなと
りお
りお
悠真
悠真
悠真
みなと
悠真
やまと
悠真
湊はスマホを置き、くすっと笑った。
湊
けれど、その「見ている」という言葉の意味が、自分と彼では決定的に違うことに、湊はまだ気づきたくなかった。
気づいてしまえば、この心地よい幼馴染という関係が壊れてしまうような気がしたから。
グループトークが静まり返った深夜一時。
湊の元に、悠真から個別のメッセージが届く。
悠真
みなと
悠真
悠真
みなと
みなと
悠真
悠真
湊
湊は独り言をつぶやきながら、ベッドに潜り込んだ。
画面の向こうで悠真がどんな表情をしているのか、想像もつかない。
しばらくして、もう一通だけメッセージが届いた。
その短い言葉に、湊の鼓動が少しだけ速くなる。
「おやすみ」という、たった四文字。
それだけで、明日もまた彼に会えることが、どうしようもなく幸せだと感じてしまう。
湊はスマホを胸に抱きしめ、ゆっくりと目を閉じた。
窓の外では、梅雨の入り口を告げる静かな雨が降り始めていた。