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食後、食器が片付けられると、代わりに冷えたデザートが運ばれてきた
透明なガラス皿の上には、きらきらとした翡翠色の粒
東條 絢斗
高峰理人
東條 絢斗
東條の声にうながされて、朔弥は一粒を指先でつまんだ
そっと口に入れると――
柊 朔弥
果肉が弾けて芳醇な甘みが舌の上に広がる
それはこれまでに口にしたことのない、みずみずしさ
まるで果実の中に光が閉じ込められているみたいだった
柊 朔弥
噛み締める
喉に落ちるその瞬間、胸の奥がじん、と熱くなる
東條 絢斗
柊 朔弥
東條 絢斗
高峰理人
玖堂 徹
ポロリ、と――涙がひと粒、静かに頬を伝った
東條 絢斗
東條 絢斗
東條が困ったように眉を下げながらも、落ち着いた声で朔弥の反応をうかがう
そのすぐ隣で、高峰がバタつくように椅子を引いた
高峰理人
高峰理人
高峰理人
東條 絢斗
東條 絢斗
高峰理人
テーブルの奥で静かに箸を置いた玖堂徹は、無表情のまま朔弥をじっと見つめる
玖堂 徹
ほんのわずかに、視線に戸惑いの色が滲む
だが、朔弥は誰の声にも反応しなかった
ただ、何も言えず、泣きながらマスカットをもう一粒、口に運ぶ
玖堂 徹
東條 絢斗
高峰理人
高峰理人
東條 絢斗
高峰理人
柊 朔弥
あたたかい
あまい
そして
やさしい
こんなものが、世の中にあったなんて―― 信じられなかった
涙を拭うでもなく、止めるでもなく、朔弥は静かに食べ進めた
その夜から、朔弥の中で「マスカット」は、特別な味になった