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果歩

…私、圭くんと、ロスで会ってる?

うん。会ってるよ

思い出した…

アメリカから日本に帰る少し前。 何かの用事で、地区の小学校に来ていた。 母の用事を待ってる間、

やめてよ!ストップ!ってば!

と、日本語が聞こえたので、校舎の陰に行ってみた。

あ、やめて。ストップ、ストップ! えっと、ヘルプミー!

大柄な男の子たちが3人で、日本語を話す小さな男の子を囲んでた。 3人はガイジン。

ねえ、僕まだ英語わかんないんだよ? やめてってば!ヘルプミー⁈

これは…

助けなければ!

っと思った(らしい)私は、果敢に、男の子たちの中に飛び込んだ。

大きいのに、 小さい子をイジメちゃダメーっっ‼︎

みんな キョトン。

果歩はアメリカで1番つよいんだから! 大きくたって、こわくないんだからっ!

ファイティングポーズで睨みつけた (と思う。)

『あきれたチビだな、行こうぜ』

(って、たぶん言ってたと思うけど) ガイジン3人はいなくなった。

きみ、ダレ?

日本人の男の子が言った。 とってもキレイな男の子だった。

果歩だよ。 …そうだ、これあげる!

私は、 いつも身につけていたポシェットから、 戦隊ヒーローのお年玉袋を出した。

これ、なあに?

アメリカで、1番強いおまもりだよ!

おまもり?でも、きみのでしょ?

果歩は、もうだいじょうぶだから。 もうすぐ、ニッポンにかえったら、 瑞樹と慎吾がいるから。 これは、アメリカのおまもりだから、 アメリカでがんばる人にあげるの

アメリカで、がんばる…

あ、ちょっとかして

おまもりを開くと

おなまえ、おしえて

けいくん?

うん

おまもりの、 『かほわ』にバツをして 『けい』 と下に書いた。

これで、このおまもりは、 けいくんをまもるよ!

…ありがとう

『果歩ー!どこ行ったの?』

あ、お母さん呼んでる。バイバイ!

バイバイ

----------------

よかった。
果歩ちゃん、憶えててくれた

果歩

でも、そんな…

言ったでしょ?ずーっと前から君が好きって

果歩

…え?あのときから?

そうだよ!あのときから、ずっとだよ

あのあと、圭くんは、頑張って私の行方を探して、帰国後、この学校に編入した、 らしい。

いろんな謎が、解けたけど、 脳みそは、まだパニックです。

果歩

圭くん、ゴメン、
処理しきれないので帰っていい?

うん。
バイバイ果歩ちゃん、また明日!

翌日…

まだ処理はできてないアタマで登校。 また2本早い電車で来ちゃった。

今日は亜矢がまだ来てない。 机に突っ伏した。

圭くんの気持ちがわかったとして、 どうしたらいいんだろ

亜矢

おはよ、果歩?

果歩

亜矢ーっ!待ってたー!

亜矢

どうしたの?ヒドイ顔!

果歩

眠れなかったー!どうしたらいい?助けてー!

……昨日の話をひととおり。

亜矢

それは、さあ…

果歩

うん

亜矢

圭くんが『ずっと前から』って言ってたのは、その、10年前?からってわかったってことよね

果歩

そうだね

亜矢

それは、すごい情熱だとは、思うけどね

果歩

そんなことって、あるのかな?

亜矢

…果歩は、圭くんにドキドキするの?

果歩

ドキドキ?

亜矢

帰りに腕を掴まれたり、優しくされたりしたとき

果歩

……それは、しない…かな?

亜矢

じゃあ、まだ恋してないのよ。そのままでいいんじゃないの?

果歩

ドキドキしたら、恋?

亜矢

うーん、そうだと思うよ?
1つの目安としてね

亜矢

圭くんはきっと、10年前の果歩にドキドキして、そのまま今になったんじゃない?

果歩

ドキドキしたら、恋なの?

亜矢

??ドキドキしてるの?

果歩

いや違うそんなことは…

亜矢

果歩?

身に覚えがあるドキドキの正体。 まさか?

『ドキドキしたら、恋』

モブ

果歩、今日は調理みたいよ、部活

D組のアリサが教えてくれた。 家庭部の連絡網的な。

果歩

あ、じゃあ、行った方がいいね

チラッと慎吾を見ると、ペットショップの子犬のような目で

慎吾

あ、オレも、部活、出よう。 今日は

と言ってきた。

アンタのサッカー部は、家庭部のメニューと 連動してるのか?

果歩

アリサ、今日はメニュー何?

わざと大きめな声で聞いてやる。

モブ

アップルパイみたいよ。
季節がら、リンゴがたくさん用意できたって

またチラッと慎吾を見てみる。

なんだ、その、祈りのポーズは。 胸の前で指を組んで。

『よろしくお願いします』 だな、アレは。

果歩

了解。すぐ行くね

圭くんは来なかったので、 そのまま調理室に向かった。

久しぶりだな、お菓子作るの

ちょっと気分がアガる。

酸味の強いリンゴだといいな。砂糖を加減しなくっちゃ

慎吾仕様に作るのは、 ごく自然なことになっていた。

甘いの苦手なくせに、食べたがるんだから。 育ち盛りの食欲は大変ね

母親のような気分で調理に取り掛かる。

ドキドキとかやっぱり、何かの間違いだ

と、思うことにした。

---------------

慎吾

よォ、果歩。偶然だなぁ!

果歩

わーざとらしい!

焼き上がったアップルパイを 試食していると、 1Fの調理室の窓のあたりを『ちょうど』 通りかかる数人のサッカー部員たち。

何人かの女子が、 「ハイハイ、どうぞ」 と、窓の外に皿を差し出す。

わざと知らんぷりをしてみる。

慎吾

果歩!持ってきてよ!

果歩

えー。どーしよっかなー

するとアリサが

モブ

あ、よかったら、コレどうぞ

と、私のより数倍美しい形のアップルパイを、慎吾に差し出した。

慎吾

あー、ゴメン。オレ、果歩のしか、食えねーんだ

こら!ボキャ貧!誤解を招くだろ!

慌てて、

果歩

あ、アリサ、違うの。
慎吾、甘いの苦手で、
私、いつも甘さ抑えて作るからっ。
そーゆー意味だから、それ

アリサは

モブ

あ、そうなの?ゴメン、おじゃましちゃって

と、やっぱり誤解をして戻ってしまった。 余計な絡みをしなきゃよかった…不覚。

果歩

はいよ

窓際に焼きたてのパイを持っていく。

慎吾

あーざーす!
…うん!腹減ってると、なんでもウマイな

《バシッ》

窓の位置は外より高いので、 慎吾のアタマも叩きやすい。

慎吾

瑞樹の分、あるのか?

果歩

瑞樹は、今日は帰っちゃったよ

慎吾

やりィ!

慎吾は、2つ目のアップルパイも手にとってほおばった。

慎吾

ごっそーさまでした!下駄箱で待ってろよな、もう暗くなるから

《キュン!》

あ、また

果歩

うん、わかった

ほら、心臓

どうしたんだろう、私の心臓。 慎吾の一言ひとことが、 わし摑みにして行く。

いつもと同じはずなのにな。 小さいときからずっと。 何も変わってないはずなのにな。

ローファーを履いて息をハァーっと吐くと、少し白かった。

日が落ちると寒くなってきたなー。

昇降口にはもう誰もいない。

2人で帰るのなんか、よくあることじゃん!

と、自分に言い聞かせる。

慎吾

悪りぃ!部室の鍵閉めてきた

果歩

大丈夫。あ、そーだ、これ

朝に渡しそびれてた、マフラーを渡した。

慎吾

お、オレ先?ヤッター!

果歩

先っていうか、瑞樹のも、もうできてるよ。
慎吾のが…先には編んだけど

慎吾

お!それでも先にオレっ!

果歩

…まあいいけど。
ブレザー用って、そんな感じでいいの?

慎吾

いい、いい!あれ、アレだな、報酬?

果歩

…もらったからいいよ

慎吾

え?やったっけ?しかもオレが先?

果歩

……

電車で…背中に…手で…

慎吾

ああ、アレな…

うわ、なんか、どうしよう!

慎吾

あーゆーの?お金で買えないってヤツ 笑

果歩

もうっっ!あの時はホント、助かったから!
慎吾、腕、アザになってたし…

慎吾

……

あれ?黙っちゃった。何か言ってよ、慎吾

そう、ずっと心臓はドキドキしてる。

だから、早く何か話して、慎吾!

慎吾

なあ、果歩

果歩

なーに?

慎吾

ずっと守ってやるからさ、


オレだけ見ててくんねー?

果歩

…それ、どーゆー…

慎吾

好きだって言ってんの。

ずっとだよ。ガキの頃から

果歩

…なんで、今…

慎吾

…2年のアイツとか、

急に髪型かえたりとか、

すげー不安なんだよ、オレ

果歩

え…

慎吾

ずっとこのままでいいと思ってたんだよ、この間までは

果歩

このまま…

慎吾

でも、もうダメなんだよ。

オレの中で…

果歩がほかのヤツと付き合ったりしたら

果歩

付き合う…?

慎吾

もう、
瑞樹でもイヤなんだ。

果歩の気持ちが向いてるのが

果歩

瑞樹…

慎吾のコトバを繰り返すのが やっとだ。

果歩

…わかんない

慎吾

え?

果歩

わかんないんだ、私

慎吾

果歩?

果歩

慎吾も瑞樹も大好きで。

圭くんも優しいけど。




自分の気持ちが、まだ…

あーあ、また、涙でちゃった

慎吾

わかった!悪かった!だから泣くなっ!果歩!オレが焦ってた。悪かったよ。

気持ち押し付けたらダメだって。
わかってんのにな。ダメだな、オレ

果歩

違うの。私が…

慎吾

さっきの忘れろ!

果歩

無理だよ…

慎吾

あーもー!
果歩を笑わせるって決めてんのに、最近、オレ、泣かしてばっかり…

そう言うと、慎吾の両腕が、 私の背中にフワッとまわった。

慎吾

泣き終わるまで、こうしてていいか?

心臓のドキドキが、 早すぎて聞こえなくなり

ここが学校なのか 電車の中なのか

慎吾の腕の中なのか

わからなくなって、 めまいがして…

慎吾の胸に、おデコをつけて目を閉じた。

すごく安心した。

『ドキドキは、恋』

これが、そうなのかな

慎吾の左手は背中に 右手はアタマに

涙はもう止まってたけど もう少しこうしてたい、 と、心の底から思ってしまった。

《コツコツコツ》

誰か来る足音。

それは… ほんの数秒だった?

長い間?

わからないけど、自然に離れた。

黙って2人で校舎を出た。

帰り道は、うわの空の会話ばかりしてた。

でも、 慎吾が必死に笑わせようとするので、 電車を降りてからは、人目もはばからず、大爆笑してた。

そうして、いつものように、公園の手前で慎吾と別れた。

慎吾

…果歩、明日も笑ってて

約束はできないけど、努力してみよう。

果歩

…また明日ね、慎吾

今日あったこと、 全部、箱に入れて心の奥にしまっておきたい、

と思った。

それが恋だとわかるまで

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