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季節は春から初夏へと移り、

青葉城西の体育館にも蒸した空気が漂い始めていた。

監督

及川、ちょっと来い。

監督の声に呼ばれた及川が部室に向かうと、

そこには見慣れないスーツ姿の男性がいた。

監督

あの子の知り合いだ。

監督が言う、あの子とは夜空のこと。

男は名刺を差し出した。

先生

夜空の元担任をしていた者です。

先生

彼女の身の回りで、"また "問題が起きないようにと、学校から頼まれて_

及川 徹

"また"?どういう意味ですか?

及川の声が鋭くなる。

先生

彼女はね、かつてチームを崩壊寸前に追い込んだ過去がある。

先生

それでも上手くやっているならいい。

先生

でも再び何かあった時のためな、周囲が気をつける必要があるんです。

及川 徹

あの子はそんな人じゃない。

先生

あなたがそう思うのは自由です。

先生

ですが、彼女の過去を知らずに守ることが果たして正しいのか_

その言葉が及川の胸に刺さる。

(俺は、本当にあの子の全部を知ってるのか?)

その日の夜。

夜空は図書室でノートをまとめていた。

先日のメッセージ以来、無言電話や無記名の手紙が続いていたが、

誰にも言えずにいた。

(及川くんに言ったら、また私のせいで…)

心の奥にヒビが入り始めていた。

そこに、及川からのメッセージが届く。

夜風が吹く屋上

及川は、夜空に向き合っていた。

及川 徹

天音ちゃん、聞いてもいい?

天音 夜空

何を?

及川 徹

東京で何があったの?

夜空の体が強ばる。

天音 夜空

どうして急に…

及川 徹

今日、君の前の担任だって言う人が学校に来てた。

及川 徹

"チーム壊した過去がある"って

及川 徹

でも、俺はその人の言葉を信じたくない。

及川 徹

だから、自分の口から聞かせて欲しい。

夜空の目が、多く見開かれる。

天音 夜空

…知ってどうするの?

及川 徹

知らなきゃ、本当には守れないから。

沈黙が落ちる。

そして、夜空は震える声で語り始めた。

天音 夜空

私ね、あの時、部内の人間関係で悩んでて。

天音 夜空

1人の選手が虐めの標的になってたの。

天音 夜空

でも私は怖くて、見て見ぬふりをした。

風の音が強くなる。

天音 夜空

それがある日バレた。

天音 夜空

『天音は味方かと思ったのに』って言われて…

天音 夜空

私だけが責められて、部全体が崩れた。

及川 徹

……

天音 夜空

"誰かを守れなかったこと"も"壊したこと"もどっちも私の責任なんだよ。

そこまで言って夜空は俯いた。

天音 夜空

それでも…そばにいてくれる?

及川は迷わず、夜空を抱きしめた。

及川 徹

当たり前じゃん、そんなの聞くまでもない。

夜空の頬に暖かいものがこぼれる。

及川 徹

でも、俺はもう迷わない。

及川 徹

天音ちゃんの全てを知って、今度こそ俺が守る。

けれど、その夜。

体育館裏で一枚の写真が

匿名のアカウントから拡散された。

そしてその投稿には_

夜空の名前なはっきりと刻まれていた。

さよならを知らない君へ

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