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本当は帰らなきゃ行けない。 足も、歩く度に ズキズキしだして、 正直歩くのが辛い程だった。 でも意識は全て桜君に 向いていて、 この感覚が正直俺にとったら 不思議な感覚だった。

2人とも『帰ろう。』 その言葉がいいだせず、 しばらく一緒に闇深い夜道を歩いた。 普段の俺なら 無言になっていえもどうでもいいと 思ってしまえるだろう。 けどこの人の前では、…… 桜君にだけは、 沈黙すらも惜しい時間だと そう思ってしまった。

俺は隣に居るであろう 白黒頭をして 色違いの美しい瞳をした 好きな人をちらりと見た。 ポツリと口走った言葉は、

蘇枋

桜君、
もう少しだけ歩こうか

喉に詰まった飴が 溶けだしたように出た 本心だった。

流れに身を任せ 着いた場所は、 海の塩っけある匂いが、 俺の鼻の奥をツンと刺激した。 冷えた潮風が俺達の 体を吹き抜けた。

海……

蘇枋

初めてきた?

蘇枋

俺もあんまり来た事ないな〜

この場所は全てが新しく 思えて、 俺の好奇心を擽った。 真っ暗い夜の海は 月当たりに照らされて、 キラキラ輝いて見えた。 その姿は宝石の様だった

蘇枋

笑、

蘇枋

かわいいね
桜君

はっ!!!

きゅ、急に何言ってんだっ!!

蘇枋

ここが気に入ったなら
来た甲斐があったな〜

顔に熱が上がるのがわかり、 俺の体はワナワナと震えた。 蘇枋から見たら、 海を見ていた俺はどんな顔を していたのだろうか。 今の俺はどんな顔を しているのだろうか。

て、てゆーかなっ!

お前本当に足はいいのかよっ!

こんな遠くまで歩いてきてっ!!

蘇枋

気にしないでいいって
言ったのに〜
本当に大丈夫だよ

でも後半ほぼ引き摺って歩いてた
じゃねぇかよ

帰りはどうすんだよ

蘇枋

え〜
また桜君に抱いて貰おうかな〜

夜でも分かるほど明るく輝き、 闇に負けないほど深い赤色の 瞳が、 ニッコリと笑って俺を見た。 巫山戯て言っているであろう その顔は ニコリと笑ったまま動かない。

わかった

おんぶでいいか?

蘇枋

えっ、…と、?

蘇枋

さ、桜君?
冗談だよ

そーなのか?
蘇枋は俺の良心を
台無しにするのか?

俺より少し身長が高い男と 目を合わせようとして、 俺は顔を上へと上げた。

焦りを見せないこの男が 俺の返した予想外の言葉に 慌てだしたのは見てわかった。 冗談だと分かりながらも こう返した俺はきっと この男よりも性格が 悪いのだろうか。

で、どーすんだ?
俺に大人しくおぶられて帰るか
一緒に歩いて帰るか

この質問を返した俺は さらに自分の性格の悪さを 自覚するのだった。

蘇枋

わかった、
大人しく桜君の
言うこと聞くよ、…

おう

そうしとけ

暫く海を眺めた俺達は 帰りはあの約束の通りに 帰った。

まんまと、 あの桜君にしてやられた。 俺は静かに自分の体を この大きな背中に預けた。

俺をおぶっている所為か、 桜君の心臓は早く鼓動していた。 この音すら心地よく思えてきて、 らしくない考えが頭をよぎった。

蘇枋

ねぇ桜君
俺の事おぶるのが
しんどいんなら、

蘇枋

ここで下ろしてくれていいんだよ

あ?、
何言ってんだ

全然しんどくねぇけど……

蘇枋

え、?じゃあ……

言いかけた言葉を飲み込んだ だって気づいてしまったから。 この桜君の心音が、そうだと 俺に伝えてきていた。

口ではそう言わないのに、 桜君の全身が、 そうだと俺へ答えを照らし合わせた。 それに応答するかの 様に俺の鼓動も 徐々に早くなるのを感じた。

気づいた時には 俺の鼓動も、 表情も 言葉も 何もかも制御が出来なくなっていた。

喉につっかえていた飴玉が 全て熔けて、 俺の言葉を自由にした。

蘇枋

好きだよ。

出てきた本心は 君にはどう聞こえたのだろうか。 俺は君の背中に顔を擦り付けた。

飲み込んだ飴玉。

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コメント

7

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一気に展開が進みましたね。 飴は固くて割れにくい、口の中に長く残るという特徴から「固い絆」や「長く続く関係」というイメージで「あなたが好き」という意味を持っているらしいですよ。 まるで誰かさん達の関係の様に___

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