古びて高い音を鳴らす扉を開けるが、中には誰もいない様に見える。 窓が開けられ、花瓶に生けられた百合がサラサラと揺れた。
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俺の声に気付いたのか、救護室奥のカーテンで隠れたベッドから元気な声がした。 その声は子供らしい明るい声。 この声を俺は知っている。そう確信して、俺は奥まで歩きカーテンをめくった。
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コネシマ。彼はここの施設の古参と言える子だ。 俺達(全部オスマン)が拾ってくる子達はまだ幼い。だから比較的年長者である彼に世話をしてもらうこともある、そのおかげで大変助かっているので頭の上がらない存在とも言えよう。
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君は雪でも外を走り回るタイプやろ。 そう付け足した。 さっき言った通りでコネシマは毎年冬になると外を走り、雪遊びをしたりとよく遊ぶ。 『犬は喜び庭を駆け回り』とはよく言うがまさにそのお手本の様な奴だ。 そんな奴がここにいるとは思いもしなかった。
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たしかに彼の足には几帳面に包帯が巻かれていた。 彼の言葉でここに来た理由を思い出して急いで背中の少年を背中から下ろして手で抱えた。 少年はやっぱり、しもやけが酷くて熱がある様に見える。他にも栄養失調などもあるだろうか。
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彼の返事を聞いてから少年を隣のベッドへと寝かせた。 さっきよりも酷くなっているのかもしれない。 熱なのは見なくても分かるが一応、とヨレヨレの服を少しどかして体温計を脇へとはさんだ。
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彼に少年を任せて俺は調理室へ向かった。 いつも何があってもゆっくり歩いていたのに、今日だけなぜか早歩きになってしまうのは少年と関係があるのだろうか?
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桶の水に氷と一応持ってきたタオルを持ってコネシマのベッドのカーテンを開けた。 だが、ベッドに彼の姿は無い。 どこに行ったのかと隣を見れば、コネシマが少年のベッドへと腰をかけて話をしていた。
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目も開けない相手に何を話すのか素直に疑問を問いかけると彼はお馴染みの好きな本について話していたと言った。ちなみに楽しいらしい。 彼の好きな本というのはSF小説だ。 何作品かシリーズがある大人気作品に彼は見事に現在進行形でハマっている。 最近はずっとその話しかしていないのはここにいるみんなが把握しているだろう。
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水にタオルをさらしてから彼に持ってもらい俺は擦り傷や切り傷を治療していく。 浅い傷には絆創膏、深いものには包帯をクルクル巻いていく。 俺は治療をするタイプでは無いので絆創膏はシワがはいり、包帯はゆるゆるで下手くそだがまぁ大丈夫だろう。 しもやけには薬を塗ってやり、身体はタオルで拭いてやる。 ある程度綺麗になったことを確認してから少年の頭を撫でた。
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彼の頭を撫でてお礼を伝えてから仕事に戻った。 彼の治療はコネシマがやってくれるみたいなので、1時間に1回の頻度で来たらいいだろう。 「これから面倒事が増えそうだ」 廊下を歩きながらため息をつけば、お腹がキリキリ鳴いて答えた。 その鳴き声はきっと、肯定の意思を抱いている。
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