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沈黙の空間を乗せたSUVは程なくして緑豊かな山林にたどり着いていた 何か思うところがあったわけではなかったが、俺は気がつくとこの場所に車を停めた

カケル

……。
ついたぞ。

カヤ

うん…。
ありがと。

ひとしきり思いの丈を口にした二人は 重たい車内とは裏腹にどこか晴れやかにも見える表情で車から降りた

カヤ

……えっ

カケル

ははっ、ここまでとは

カヤ

す……
すっごい……。

肺に飛び込んできた新鮮な空気に思わず空を見上げると満天の星空が俺らを迎えてくれた

カヤ

こんな場所あったんだ……。

カケル

……今日、ちょうどペルセウス座流星群が見れるらしい

カヤ

すっ……ごいね……!

カケル

……あぁ。

息を飲むような星々に俺たちは多くを交わすことはなく抱かれるように空を見上げた。

先程の沈黙とは違った感動の静寂が山々を包み、いくらかの時が経った後、カヤがふと口を開いた。

カヤ

ありがとね
カケル。

カケル

……?

カヤ

あたしを信じて
話してくれて。

カケル

……。
そんなんじゃねぇよ。

カケル

カヤに散々言っといてわがままだったのは俺だった。

カヤ

そうだね。

カケル

カヤが苦しんでること
俺が悩んでること
勝手だけど、話せてよかった

カヤ

うん、ありがと

カケル

……。

カヤ

流星群、流れ星だよね

カケル

……?
あぁ。見れるかどうかわかんないけどな。

カヤ

……もし、カケルが見つけたら
なんてお願いするの?

カケル

……、なんだろうな。

カヤに振り向いて欲しい。 カヤと一緒になりたい。 この期に及んで心の中の俺はそんな事ばかり考えていた。

カヤ

あたしだったらね!

そういうとカヤはこちらに振り直って 高々と天を指差し言った

カヤ

意地悪な神様に仕返ししてやるの!

満面の笑みをこちらに浮かべながら、されど真剣にカヤは語る

カヤ

好きも嫌いも

カヤ

愛も恋も

カヤ

わけわかんないくらい難しくて

カヤ

わけわかんないくらい大切で

カヤ

前に進んだり

カヤ

同じ場所で迷ったり

カヤ

たまには後ろを振り返ったりして

カヤ

そんな遠回りの好きを他人事みたいに見下ろしてる神様に向かって

カヤは思い切り息を吸い込み、声を張って叫んだ

カヤ

あたしがいっっちばん!
幸せなんだ!!!

カヤ

って!
いつか絶対に一泡吹かせてやるんだ!

なんとカヤらしい、素敵な願い事だろう

しかし偶然にも振りかざした指先に一筋の光が綺麗な尾を引いた

カヤ

え!今の!

カケル

あぁ、しっかり届いたんじゃないか?

カヤ

うそっ!?
すっごーーい!!!

望むところだと言わんばかりの神様が カヤの前に光となって降り注ぎ 俺たちはただ呆気に取られていた

カケル

……。

もし俺が星に、神に願うのであれば とっておきのわがままを言うだろう。

この幸せな時間が永遠に永久に続きますように、と。

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