第1話と同刻
政府 申請受理係
はじめまして
政府 申請受理係
林田 亮介様
亮介
(…来た)
政府 申請受理係
今回、貴方の願望の申請が受理されました
政府 申請受理係
条件の提示ですが、その前に
政府 申請受理係
いくつか質問してもよろしいでしょうか?
亮介
了解です
亮介
なんでしょうか
政府 申請受理係
貴方の願いである『ある人を救いたい』の
政府 申請受理係
『ある人』とはどなたでしょうか?
亮介
〇〇高校2年の
亮介
進藤 優樹
亮介
俺と同じクラスの男子です
政府 申請受理係
かしこまりました
政府 申請受理係
では、どのように『救いたい』のでしょう?
亮介
……その
亮介
優樹は、はっきり言って家庭環境があまり良くないんです
亮介
浮気性の父の4度目の再婚
亮介
しかも今回の再婚相手は重度のアルコール依存症でした
亮介
今までの再婚相手にも優しい人など居るはずもなく
亮介
終わることの無い暴言や暴力の数々
亮介
…それらに、彼は耐えてきました
亮介
俺は何度もそれを聞いてきた
亮介
優樹は苦しんで、でも我慢して…
亮介
俺は
亮介
助けられないのがもどかしかった
亮介
毎日悔やみました
亮介
だから、
亮介
彼には新しい人生を送って欲しい
亮介
亮介
例え俺の身がどうあろうと
政府 申請受理係
それで『救いたい』と
政府 申請受理係
そういう事ですね?
亮介
はい
亮介
覚悟は出来ています
政府 申請受理係
分かりました
政府 申請受理係
それでは、条件の達成をお願いいたします
政府 申請受理係
条件は
政府 申請受理係
『遺書を書くこと』
政府 申請受理係
そして
政府 申請受理係
・自殺であること
・貴方が望む進藤様の今後の人生設計
・貴方が望む進藤様の今後の人生設計
政府 申請受理係
こちらの記入が必須となっております
亮介
亮介
俺、死ぬんですね
政府 申請受理係
申し訳ございません
政府 申請受理係
人間を救うには、それ相応の条件が必要なので
亮介
まあ、それで優樹が救えるなら
亮介
兄ちゃんの所に逝くのも、悪くないと思えます
政府 申請受理係
書き終わりましたら、こちらに遺書の写真をお送りください
政府 申請受理係
条件達成の確認を行います故
政府 申請受理係
お待ちしております
現在 校舎の屋上にて
亮介
『新しい自分に生まれ変わって幸せになりたい』
亮介
それが、お前の願い
亮介
そうだよな?
優樹
優樹
そうだよ
優樹
そして、その条件が
優樹
君を殺すことだったんだ
優樹
あの苦しみから解放されるって思うと
優樹
正直、出来るって考えてた
優樹
でも、やっぱり
優樹
僕には無理だよ……
優樹
友人を殺せる訳ないんだ
亮介
おいおい
亮介
なーに弱気になってんだよ
亮介
この大馬鹿野郎がよ!!!
亮介
自分のことだけ考えろ!!!!
その時だった
亮介が、僕の手を軽く握って
亮介
……
亮介
優樹
亮介
今まで助けてやれなくてごめんな
亮介
お前なら絶対に
亮介
絶対に生まれ変われる
亮介
俺が保証するから
亮介
だから
亮介
…幸せに、なれよ
そう言い残して
彼はそっと手を離した
僕の手から温もりが消えて
そして
とても鈍い、音がした