先生
幸子
先生
幸子
先生
先生
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
麓
幸子
麓
麓
幸子
麓
麓
幸子
麓
麓
幸子
麓
巾着を開けて、中を見るとそこには盃が一つ入っていた。
幸子
真っ黒な盃に、稲妻のような金継ぎが施されていた。
麓
幸子
麓
麓
幸子
幸子
幸子
麓
幸子
幸子
麓
「おい」
幸子
「おい!」
幸子
「ワシをどこへ連れていく」
幸子
「黙ってないで、何とか言ったらどうだ!」
「……ちっ」
幸子
「どうせワシの声なんぞ聞こえんか」
幸子
「!?」
「ならばなぜすぐ返事をしなかった?」
幸子
幸子
「むっ…そうだな」
「して、ワシをどこへ連れていく?」
幸子
「……酒蔵!!」
「まさか、白樹(しらき)か!?」
幸子
幸子
「知っているも何も…」
「ワシはずっとそこに帰りたかったんだ!」
「急げ!お嬢ちゃん!!走れ!!」
幸子
幸子
「ぐぬぬ…そうだが…」
幸子
幸子
「…わかった」
幸子
白樹酒造と書かれた看板。
店先にずらりと並ぶ日本酒の数々。
「何をぼーっとしている」
幸子
「ほら!早く入れ!」
幸子
お店に入ると奥から老齢の女性が姿を現した。
篠原
幸子
幸子
篠原
幸子
篠原
篠原
幸子
言われるがまま篠原の後を付いて行くと
縁側に案内された。
縁側には三方にお団子が綺麗に盛り付けられており、
細い一輪挿しにススキが飾られていた。
幸子
篠原
幸子
幸子
まだ完全に日が暮れていないし、
空には分厚い雲が覆いかぶさっていた。
篠原
篠原
幸子
幸子は三方の側に腰を下ろし、
巾着の中から黒い盃を取り出した。
「何もかも、すっかり変わってしまったな」
幸子
「ああ…それだけ長いことここを離れていた、ということだろう」
幸子
幸子
「……」
幸子
篠原
篠原
幸子
篠原
篠原は心底嬉しそうに言って、
持って来た日本酒を縁側に置き
巾着の中から真っ白な盃を取り出して
黒い盃の隣に並べた。
幸子
「透月(とうげつ)!透月じゃないか!」
幸子
「!!!」
「玖月(くげつ)!」
幸子
篠原
篠原
幸子
篠原
篠原
篠原
幸子
篠原
篠原
「おぬし、見事に金継ぎされておるな」
「ふははっ!いい感じになっておるだろ」
「駄作だと床に叩きつけられたか」
「価値のわからん奴に割られただけよ」
幸子
篠原
幸子
篠原
篠原
篠原
幸子
篠原
篠原
幸子
幸子
「どうせおぬしは戸棚の中で寂しくしておったのだろ?」
「バカ言え。ちゃんと使って貰っとるわ」
「その割には綺麗じゃないか」
「おぬしもどこぞほっつき歩いた割には綺麗じゃないか」
幸子
幸子
篠原
幸子
篠原
篠原
幸子
首を傾げる幸子を横目に
篠原は日本酒の蓋を開けて中身を盃に注ぐ。
「おお!酒じゃ!!」
「酒じゃ!酒じゃ!!」
「これは良い酒じゃ!」
「良い酒じゃ!」
幸子
篠原
幸子
盃の中を覗き込むと
そこには綺麗な満月が浮かんでいた。
幸子が顔を上げて空を見ても
そこには曇天が広がっているだけ
月の光すら見えない。
篠原
篠原
篠原
幸子
幸子
幸子
「良い酒に、今宵は十五夜!」
「おう、十数年ぶりに友が隣にいる!」
「おうよ!長く隣を空けて申し訳ない」
「気にするな!今宵は飲もうぞ!」
「おう!飲もうぞ!」
「月見酒じゃ!」
「月見酒じゃ!空は曇っておるがな!!」
「わっはっは!全くじゃ!」
「まぁ酒が飲めれば関係ないがのぉ!わっはっはっ!」
幸子
篠原
幸子
幸子
篠原
篠原
幸子
きっと、その日はいつまでも楽しそうに喋ったことだろう。
見えない十五夜を
その水面に映したまま。
コメント
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う~ん😔