TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

月を追いかけて

一覧ページ

「月を追いかけて」のメインビジュアル

月を追いかけて

2 - 神出鬼没

♥

12

2021年11月28日

シェアするシェアする
報告する

上城吏斗

ここが寮ね〜

寮は16人と少数しか入れない割に豪華に作られている。庭に池も橋もあるし、生垣で囲われている。食堂も大浴場もある。安めの旅館みたいだ

学校から徒歩17分、自転車で5分ってところだろうか 中学の頃は、徒歩40分で通っていた。自転車は意味のわからない校則で、使う事が禁止されていた。1時間以上かけて通ってくるやつもいたくらいだ

だから10分ちょっとなら辛くもなんともない

上城吏斗

203だから…2階か

だいたいの荷物は既に運ばれていて、手待ちの荷物はリュックに入れても余るくらい少ない

上城吏斗

はは、ちゃんと表札があるんだな〜………あれ、もしかして向かいの部屋って…

俺の部屋の向かいの表札に、戸惑いを隠せないでいた。 そこには

[橋本]

と書かれている。 もしかして、もしかすると なんて、期待を膨らませている こんなに気になっている彼女とお向さん とはなんと幸運なのだろうか

中学の頃は声をかけることすらできなかったはずなのに、自然と扉を叩いていた

???

はーい

ガチャ

現れたのは、橋本本人ではなかった

???

えっとー、何か用ですか?

上城吏斗

あ、いや!……あの、橋本さん…ですか?

齋藤飛鳥

いえ、齋藤です

上城吏斗

さ、齋藤さん?
ここは橋本さんの部屋じゃ…

齋藤飛鳥

そうですよ

上城吏斗

あ、で、ですよね?

彼女がおかしな事をいうもので、動揺が声に現れた

上城吏斗

じゃあ、どうして橋本さんの部屋から齋藤さんが?

齋藤飛鳥

ただ遊びに来てただけです
友達なので

上城吏斗

あ、そういうこと…
ところで、橋本さんは?

齋藤飛鳥

奈々未なら今コンビニに

かつんかつん と 靴の音がなっている

橋本奈々未

あれ?飛鳥どうしたの?

齋藤飛鳥

あ、ほら帰ってきましたよ

上城吏斗

で、ですね

齋藤飛鳥

なんかね、この人が橋本はいないのかって探してたっぽいから

橋本奈々未

え?私を?

上城吏斗

や、探してたというわけでは…ない(こともないんだけど)
ただ挨拶をしようと思っていただけなので

橋本奈々未

そう、なんですね?

上城吏斗

あ、はい!

まぁ、俺の事なんて覚えてないよな

齋藤飛鳥

そういえば、お名前聞いてなかったですね

上城吏斗

あ、俺、上城吏斗です…

橋本奈々未

橋本奈々未です!

齋藤飛鳥

齋藤飛鳥です

珍妙な空気に、橋本は吹き出す

橋本奈々未

ふふ、こんな同い歳なのに敬語で自己紹介って…おかしいよ

齋藤飛鳥

たしかに

上城吏斗

そう、だね…
それじゃあ俺は挨拶しに来ただけだから、また

橋本奈々未

うんまた

齋藤飛鳥

さいならー

彼女たちと離れて、寮周辺の探索に行くことにした

探索って言うとゲームの主人公になった気分になる 神社とかコンビニだとかショッピングモールだったりとか、まるでダンジョンだ

上城吏斗

河川敷か…夕陽も綺麗で、これが「エモい」ってやつかな

エモいって言葉が若者言葉とされているが、元々は音楽ジャンルの「エモ(Emo)」からきているらしい。起源は1980年代からでパンクロックの一種だと…

誰もいないのにそんなことを考えてる自分がすこし「キモイ」

上城吏斗

あれ、うちの制服…まだ学校始まってないはずなんだけどな

河の真ん中にある河原に、自分の通う予定の学校の制服を着た女の子が寝転んでいる

小さい頃はそこが小さな島だと思っていたけれど、今じゃ川面から盛り上がった石と土の集合体にしか思えない

そんでもってこんなとこで寝てるなんて不思議な奴だな

そんな不思議な奴に、興味と好奇心で近づくことにした

裸足になって ズボンの裾を捲りあげて ジャブジャブと緩流を脚で掻き分けて 不思議な奴の横に立つ

上城吏斗

ここでなにしてるんですか?

???

上城吏斗

え、あの…

???

……ん?なに?

上城吏斗

いや、こんな所で何してたんだろうって思って…

???

別に、何も。

上城吏斗

そ、そうなんですね

こんな所で何もしてない

本当に不思議な奴だ

上城吏斗

なんか、ごめんなさいお邪魔だったようで…それじゃあ俺は…

???

待って

上城吏斗

はい?

???

君は何しにここに来たの?

上城吏斗

あ、だからその、あなたがこんなところで寝てるから何してるんだろうって、思って…

???

そっか

上城吏斗

は、はい

???

上城吏斗

8秒程の沈黙 先に口を開いたのは 不思議な奴の方だった

???

本当はね、餌を探してたの

上城吏斗

餌?ですか

???

うん蚯蚓

上城吏斗

蚯蚓か…

???

カメレオンがね、食べるかと思ったんだ

上城吏斗

カメレオンが、蚯蚓を…
確かに蚯蚓は栄養価が高いと言われてますけどカメレオンは羽根の生えてる虫とかの方が…ってすみません。初対面なのに偉そうに

???

そっか、カメレオンは蚯蚓食べないんだね

上城吏斗

食べないって事もないんでしょうけど、主食にはならないんじゃないかなと思います

???

詳しいんだね

上城吏斗

まぁ、ちょっとだけ?

この不思議な奴は、お尻を払って立ち上がった

???

よし、帰ろうかな、そろそろ逢魔が時だし

上城吏斗

は、はぁ…

???

それじゃあまたね

不思議な奴の不思議な感覚に 惹かれてしまう

その手を掴んでいなければどこかへいなくなってしまいそうな

儚さの体現とでも言おうか

この人の事をもっと知りたいと思った

しかし橋本とはまた別の興味だ

上城吏斗

あ、サヨナラ

さっきまでいた不思議な奴が河を出て歩いていく 不思議な奴と俺の距離には既に遠近法が適用されている

上城吏斗

俺も帰らなきゃな

部屋に帰って、1度ベッドの上に座る

しかし、夕御飯ができたらしい 寮母さんの声がする

この寮のルール「夕食はみんなで食べる」という決まりがあるみたいで 正直、橋本奈々未とお近付きになる口実になるので助かる

____食堂

上城吏斗

いただきます

???

ここいい?

上城吏斗

あ、どう……ぞ

声をかけてきたのは齋藤飛鳥を連れた橋本

齋藤飛鳥

あ、飲み物忘れた…取ってくるね

橋本奈々未

うん

齋藤飛鳥

吏斗くんもお茶でいい?

上城吏斗

あ、ありがとう

齋藤飛鳥が離脱し、2人だけになる 数秒の沈黙を解いたのは橋本からだった

橋本奈々未

吏斗くんさ、部活決めた?

上城吏斗

いや、決まってない 橋本さんは?

橋本奈々未

橋本さんなんてやめてよ〜、奈々未でいいからさ

彼女は前も言ったでしょと、小さく笑う

上城吏斗

あ、じゃあ…その奈々未は決まってるの?

橋本奈々未

決まってるよ!

上城吏斗

そっか、ところでどの部活に?

橋本奈々未

アイドル部

アイドル部…?

上城吏斗

アイドル部?

橋本奈々未

そう、飛鳥も入るって言ってた

上城吏斗

アイドル部なんてあるんだね…

橋本奈々未

あるよ!それでここ倍率高いの知らなかったの?

知らなかった この高校に入ったのは、橋本がいるからであって他の知識は何も入れていない。

と、言うよりも

橋本がいるということ以外 俺には必要がなかった

上城吏斗

知らなかったよ…はは

橋本奈々未

吏斗くんもさ、入ろうよ

上城吏斗

いやいやアイドル部って俺が入ってもやることないでしょ?

橋本奈々未

あるある!マネージャーだって必要なんだから

上城吏斗

マネージャー…か

齋藤飛鳥

いいじゃんマネージャー

上城吏斗

うわっ!

齋藤飛鳥の突然の出現で、声を出して驚く

齋藤飛鳥

おばけ見たみたいに驚かないでよ

上城吏斗

いや、おばけみたいに出てこないでよ…

橋本奈々未

ふふ…それで、どう?

上城吏斗

まぁ、部活には入らなきゃいけない決まりだし…入ろうかな。っていうか入れるのかな

齋藤飛鳥

入れるんじゃない?

上城吏斗

まぁ、ダメだったら他の探すよ

橋本奈々未

大丈夫だよ!明日一緒に入部届け出しに行こ?

上城吏斗

2人がいるんなら、心強いよ

ここでもし、橋本がアイドルになり、俺がマネージャーになることができれば距離は縮まるはず…

橋本奈々未

頑張ろうね!

齋藤飛鳥

はいはい

この時はまだ知らなかった

マネージャーとしての務めを

彼女を思うことの意味を

この作品はいかがでしたか?

12

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚